製造業で利用が進むAI(人工知能)やデジタルツイン。今後、こうした技術を現場で活用するための必須の基盤になるとみられるのが、「SDA(Software Defined Automation)」だ。
ソフトウエアがハードウエアを定義するという波が、製造業の工場設備や自動化システムにも本格的に押し寄せつつある。SDAとは工場の機械を動かす「頭脳(制御システム)」を、専用ハードの縛りから解放し、ソフトを中心として構築・運用する新しいアプローチ。今、工場にもソフトウエアベースの柔軟な制御環境が必要となっている。スマートフォンのOS(基本ソフト)やアプリをアップデートするように、製造現場の制御システムを容易に更新・拡張し、より高性能な機能を付加できるような仕組みの構築が進む。
この潮流を主導するのが欧米のFA(ファクトリーオートメーション)大手各社である。
AIが主導する製造現場で優位に立つため、ハードとソフトを密接に連携させ、工場全体を知能化するデジタル技術に経営資源を集中させている。
2024年、ドイツSiemens(シーメンス)は、大型モーター・ドライブ事業を手掛ける子会社の同Innomotics(イノモティクス)を売却。一方で2025年には、ソフトウエア大手の米Altair Engineering(アルテア・エンジニアリング)を約100億米ドル(約1兆5000億円)で、同Dotmatics(ドットマティクス)を約51億米ドル(約7600億円)で相次いで買収した。
シーメンスはこれまでも成長分野と位置付けた事業では積極的にM&A(合併・買収)戦略を展開してきたが、今回の動きは事業ポートフォリオの整理にとどまらない。重電メーカーとしての象徴であるモーターを切り離し、シミュレーションやAIといったデジタル技術を取り込んで強化する構造転換といえるだろう。
構造転換はシーメンスに限らない。フランスSchneider Electric(シュナイダー・エレクトリック、以下シュナイダー)は、国際標準規格を用いたオープン化をけん引する。特定のハードに縛られず、どのメーカーの機器でも共通の制御ソフトを動かせるエコシステムを構築し、業界全体のSDAを促す構えだ。米Rockwell Automation(ロックウェル・オートメーション、以下ロックウェル)は、今後5年で20億ドルを投じ、AIを駆使した工場の自律化を急ぐ。同社にとってSDAは、AIが現場の状況を正しく認識しロボットに指示を出すための不可欠な土台という位置付けである。
FA業界のゲームチェンジ到来か
「蒸気機関が社会を変えるのに60年かかった。電気は30年。だがAIは、あと7年もしないうちに、私たちが依存するあらゆるシステムに知能として組み込まれるだろう」。シーメンス社長兼CEO(最高経営責任者)のRoland Busch(ローランド・ブッシュ)氏は、世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」(2026年1月6~9日、米国ラスベガス)の基調講演で、そう語った。同氏は続けて「かつて私たちは、電気の光で世界を照らした。今、知能(Intelligence)の時代に、再び同じことを成し遂げる」と自信を見せる。
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