オムロンは、FA(ファクトリーオートメーション)向けの制御機器事業の復活に向けて、収益の基盤であるハードウエア(デバイス)事業を強化する。同社は、ソフトウエアやAI(人工知能)が進化しても、物理的な現場から価値あるデータを抽出するためには、センサーやコントローラーといった「強いデバイス」が不可欠だと見ているからだ。中国経済の減速や新型コロナウイルス禍でのサプライチェーン(供給網)の混乱で毀損した事業基盤を強化し、データサービス事業でFA市場での優位性の回復を狙う。
オムロンの制御機器事業は、過去10年以上にわたって主に中国市場の設備投資需要に依存する収益構造となっていた。しかし、中国経済の減速や新型コロナウイルス禍におけるサプライチェーンの混乱により需要が減退した際、他エリアでの成長基盤が弱かったために売り上げが落ち込み、全社の業績に大きなダメージを与える結果となった。
こうした状況を転換するため、同社は人員や間接業務の見直しなどの構造改革を実行。事業の選択と集中を進めた。2026年度から始まる中期ロードマップ「SF 2nd Stage」では、事業再投資の約半分を制御機器事業に配分する方針を打ち出した。研究開発では、利益の源泉であるデバイス開発へリソースを振り向けるとした。
FA市場での再興、データ活用が鍵
オムロンがFA市場で強みを取り戻すための中核となるのが、生産現場から取得するデータの品質だ。生産ラインの異常対応や生産計画の最適化にAIを活用する動きが広がる中、データをクラウドに集約するだけでは、データ取得時刻のずれにより正確な分析が難しい。現場で同時に起きている事象であるにもかかわらず、データの種類や取得元の機器によって、システム上に記録される時間にばらつきが生じてしまうことがある。
「ハードウエアであるIoT(Internet of Things)デバイスのデータと、日報や品質データ、保守データなどの現場ノウハウを『時刻同期』した形で融合できる点が(オムロンの)非常にユニークなポイントだ」〔オムロン代表取締役社長CEO(最高経営責任者)の辻永順太氏〕。同社は物理世界に直接接するデバイスを強化し、下位の単位まで時刻が正確に一致した質の高いデータを生成する。これによりソフトの処理だけでは解決できないデータ品質の問題を担保する考えだ。
顧客へのアプローチにおいても、従来の自社製品による囲い込みから、既存設備を生かすオープン化に舵(かじ)を切る。オムロンが主戦場と位置付けるのは、既存の工場だが、現場ではさまざまなメーカーの制御機器やセンサーが混在し、データ形式もメーカーごとに異なる。こうした課題に対応するため、オープン標準規格である「OPC UA」などを採用し、機器の違いによるデータのばらつきを吸収・標準化する技術を実装した。
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