第三者委員会による調査により、グループ全体が会計不正の病にむしばまれていることが発覚したニデック。絶対的存在である永守重信氏による厳しい業績プレッシャーの下、多くの経営幹部や従業員が実力を超えた業績目標の達成を強いられてきた。同委員会が作成した調査報告書には、過大なプレッシャーを受けて苦しむ経営幹部や従業員の悲痛な叫びが記されている。
心と体が出社を拒否したCFO
「今まで自分の心と葛藤しながら体に鞭(むち)を打って何とか出社していましたが、もう会社に行くことが心も体も許さなくなってしまいました……。本当に申し訳ございません。X社のA部長やB部長も葛藤はあるものと思いますが、私のお願いに忠実に対応してくれています。そんな彼らに理不尽な指示をするのも非常に辛(つら)いですし、彼らの将来を考えるとこんなことをさせて良いのか? という思いも強く、自分が嫌でしょうがありません」
「尊敬する永守代表の前で、自分の行動に偽った発表をしようとする自分も嫌でたまりません。CFO(最高財務責任者)週報で代表に偽りの報告をするのも、もう嫌で週報も書けません。現状のX社の処理は会計的に何とか説明できる範ちゅう(グレー)であるものと心に言い聞かせて対応をしてきましたが、自分の本当の心は将来回収ができずに翌期以降に影響が出るものは黒(ブラック)で、構造改革を遅らせ、事業(会社)を駄目にするものというのが本当の気持ちです」
「このままでは心がどんどん壊れていき、家庭でも笑えることができなくなりそうです。申し訳ございませんが、日本電産(現ニデック)を辞めます。もう会社に行こうとしても、心と体が拒否をしてどうにもなりません」
これは、ある国内グループ会社のCFOが退社を決めた際に、グループ会社担当の執行役員に送ったメールの文面である。ニデックグループには、望まぬ会計処理を強いられ、心を痛めながら職務に当たっている人が少なくないようだ。
ニデックでは、永守氏がいわゆる「EV(電気自動車)シフト」を信じて、想定需要をはるかに上回る設備投資の号令をかけた。ところが現実は、販売台数が伸びずに構造改革を余儀なくされた。こうしたリストラのさなかでも黒字の計上を求められたグループ会社のCFOは、ニデック本社のCFOに次のような文面のメールを送っている。
「(2024年度)第1四半期がスタートいたしましたが、計画利益に対するプレッシャーがさらに強まっております。事業報告会の中で嫌みを言われ、連休も業績会議をやれとグループ業績管理部からは言われ、A本部長からは4月の利益の数字を社内計画に(合わせて)無理やりやれ(作れ)と言われて、心底この会社で働くのが嫌になっております。ストレスで最近は夜眠れない日が続いており、心療内科にも通い始めているのですが、そろそろ本当に限界かもしれません」
なぜなのか理解に苦しむところだが、ニデックグループではCFOや経理部門が業績目標を達成する責任を負わされていた。ニデックで働くCFOの現実について、同社の元執行役員は第三者委員会のヒアリングに対して次のように証言している。
「業績目標を達成できない会社のCFOは、目標未達の責任をとらされてクビになるか、プレッシャーに耐えきれずに自ら辞めるか、不正に手を染めてそれがバレてクビになるかであり、いずれにせよニデックを去ることになる」
実際、国内グループ会社のCFOや経理部門は頻繁に交代を繰り返している。着任してから1週間で退社するケースもあった。この件について、国内グループ会社の事業管理部に所属する従業員は、同社の幹部に次のような文面のメールを送っている。
「この前、新規採用した経理部長が1週間で辞めましたが、彼の気持ちは理解できます。前向きな仕事をしたいのに自分が関係していない過去の不正な取引の尻拭いをしなければならないというのは、彼だけではなく関係幹部の方々の全てにとってやはり苦痛だと思いますし、負の遺産を増やした人間が早く処理しろと責めるのは、モラルハザードを起こしかねないという危惧を持っています」
次のページ
「アグレッシブ」な会計処理の意味この記事は有料会員限定です




