この記事の3つのポイント
- 経営トップ、情報システム部門、事業部門などがそれぞれ意識改革を迫られている
- 「2025年の崖」を越えても、立ち止まればすぐに「第2の崖」に直面し落ちる
- 新たな試練に備え、企業が今すぐ取るべき対策を「DXの心得五カ条」として整理
「2025年の崖」は過去のものになったのか。本特集でここまで検証してきたとおり、答えは否だ。企業の約6割がいまだレガシーシステムを抱え、江崎グリコや中日本高速道路(NEXCO中日本)のように崖から転落した企業も現れた。2025年は過ぎたものの、崖は終わらない。
むしろ、企業はこれから「第2の崖」とも呼ぶべき新たな試練に直面する。生成AI(人工知能)の急速な普及は、デジタルへの対応遅れを致命傷に変えかねない。本記事では、これまでの検証を踏まえ、企業が今すぐ取るべき対策を「DXの心得五カ条」として整理する。
その一 経営トップ自ら、ITを「コスト」から「武器」へ再定義せよ
「DX(デジタル変革)というワードに飛びついている経営者が多いが、既存システムに目が行っていない。そこがひも付いていない」。経済産業省の木村紘太郎商務情報政策局情報産業課AI産業戦略室室長補佐はこう指摘する。
日本企業にはサラリーマン社長が多く、在任中にレガシー脱却という重い決断を避けようとする動機も働く。「ツケを後世に残すと、どこかで大きなトラブルに発展する」(木村氏)という問題の先送りが、まさに崖を生み続けてきた構造的な原因だ。
海外企業がITをビジネスとともに育てる投資対象として位置づけるのに対し、日本企業の多くは現場の業務をサポートするコストとして捉えてきた。この根本的な認識のずれを正さない限り、ITガバナンスは機能しない。
経営トップがITをコストセンターから競争力の源泉へと再定義し、CIO(最高情報責任者)やCDO(最高デジタル責任者)を設置して権限と責任を明確にすることが最初の一手となる。外部からCIOやCDOを招聘(しょうへい)し、しがらみなく既存システムの膿(うみ)を出し切るという荒療治も有効な選択肢だ。
次のページ
「技術的負債」を人間ドックのように可視化せよこの記事は有料会員限定です

