スマートフォン向けアプリ市場の競争促進を目指した「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律(スマホソフトウェア競争促進法、スマホ新法)」が2025年12月18日に全面施行されてから、間もなく3カ月となる。新法に対応した米Apple(アップル)と米Google(グーグル)の報告とともに、関係者が改善を求める意見が2026年3月までに出そろい、今後の争点が明確になってきた。
公正取引委員会は2026年2月17日、スマホOSを提供するアップルと日本の子会社のiTunes、グーグルがそれぞれ提出した「遵守(じゅんしゅ)報告書」を公表した。2社グループはそれぞれ、Webブラウザーや検索エンジンの選択画面導入のほか、外部の決済手段やアプリストアを認めるなど対応状況を説明し、新法の規制にすべて対応した点を強調した。
公取委は、「報告書の公表が2社の順守状況を公取委が是認したり評価したりしたものではない」として、今後も順守状況を注視するとする。ただし現時点では公取委が2社に対して公に違法状態の指摘や是正を要求したことはない。実態としては現状の対応をまず是認したうえで、関係者からの意見を待っている状況といえる。
公取委はアプリ事業者など第三者から取引実態や意見を受け付ける情報提供フォームと、法令違反の疑いに関する申告フォームを設置した。すでに一部から意見が寄せられているという。
アプリストアやアプリからの外部決済は低調
現実に、アプリ開発など外部の事業者によるサービスの変化は小幅にとどまっている。3カ月を経過しながら、新法で可能になった形態の外部決済サービスや外部アプリストアはほとんど登場していない。
例えば米Epic Games(エピックゲームズ)は日本で2026年1月にもiOS向けのアプリストア事業を始めると表明していたが、現状は見送っている。アプリから割安でアイテムなどを購入できる外部決済もほとんど普及していない。新法とともに設けられた新たな手数料や規約改定がハードルになっている。
参入を阻んでいる難所はどこにあるのか。業界団体などが2026年3月までに表明した意見から、それが明らかになった。
アプリ開発企業らが、新法に伴ってアップルとグーグルの2社が実施した規約改定で最も評価した点は、アプリ内でのプロモーション活動に対する制約を緩和したことだ。2社はそれぞれの規約変更で、アプリ開発者がアプリ内に外部Webサイトで販売しているアイテム商品や価格の情報、キャンペーン情報などをテキストで掲載することを新たに認め、対価も求めなかった。
日本IT団体連盟やコンピュータエンターテインメント協会(CESA)など7団体が2026年2月に公表した意見では、「(OSベンダーによる)一方的なルールに拘束されない多様なビジネスモデルの実現に向けた重要な一歩だ」と評価した。
一方で7団体が是正を求めた点もある。アプリから遷移できる外部決済サービスを使う場合に高額の手数料が設定されていることだ。
外部決済機能への外部リンク(アウトリンク)をアプリ内に組み込む場合の手数料はアップルが21%、グーグルが26%。外部決済サービス事業者のコスト(クレジットカード手数料込みで約5%)を加えるとアップルで約26%、グーグルで約31%に達する。アプリストア標準の決済手段と同等か、むしろ高くなる場合もあるため、現状は「どの企業も参入できていない」(関係者)。
米国ではアップルとエピックゲームズが争った連邦地裁の判決により、アップルが27%を課していた手数料は禁じられ、2025年4月からアウトリンクに対する手数料は廃止されている。その後、同年12月の控訴審ではアップルの主張を一部認めて手数料を禁止する措置を差し戻したものの、手数料の水準は実費などに基づく必要があるとした。
日本IT団体連盟など7団体はこうした事実を基に、日本でも手数料の構造にメスを入れて「(米国と同等の)国際的なイコールフッティングを確保すべきだ」と主張した。
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