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中国EVの独自仕様、実車で分析 日系サプライヤーに好機

日経XTECH / 3/13/2026

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Key Points

  • 中国のプレミアムEV市場でHIMA主導の車両は高単価・高付加価値と分析され、日系サプライヤーの中国市場参入機会を示唆している。
  • HMI/エンターテインメント領域では、ダッシュボード中央の大型ディスプレーと計器部の小型ディスプレーを組み合わせる三面構成が特徴的と紹介されている。
  • プレミアム車両ではダッシュボード全体をディスプレー化するモデルが増え、音声認識の高度化と学習機能により操作の体感が大きく変わる可能性が述べられている。
  • 中国EVのグローバル展開背景と、日本系サプライヤーにとっての機会・戦略が分析されている。

 前回、中国・華為技術(ファーウェイ)が主導するスマートカーブランド連合「鴻蒙智行(Harmony Intelligent Mobility Alliance、HIMA)」において、ファーウェイが複数の自動車メーカーを従える姿から、その位置づけを自動車メーカーの上位に位置する「ティアマイナス1」と命名した。また、HIMAが展開する車両は単価が高く、プレミアムブランドであると分析した。

 これまでの調査において、中国の電気自動車(EV)ではマッサージ機能やアロマ機能など、独自仕様の採用が進んでいる点に注目してきた。今回の実車調査でも、HIMAのEVを中心に、中国のプレミアムEVならではのオリジナル仕様を数多く確認した。

 本稿では、これらのオリジナル仕様を紹介するとともに、HIMAを中心に展開されている背景を考察し、あわせてグローバル展開の可能性を検証する。さらに、日系サプライヤーの中国EV市場への参入機会についても検討する。

HMI/エンターテインメント領域

 まずは、HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)及びエンターテインメント関連の仕様について解説する。

ダッシュボード全面がスクリーン

 中国EVの大きな特徴は、ダッシュボード中央に配置された大型ディスプレーだ。米Tesla(テスラ)のEVも同様の構成を採用しているが、中国EVでは、これに加えて従来のメーター部にも小型ディスプレーを搭載する点が特徴的だ。

 HIMAの尚界(Shangjie)「H5」は、エントリークラスに位置づけられ、価格帯は20万元前後(1元=23円換算で約460万円)である。中央の大型ディスプレーと、メーター部のサブディスプレーを組み合わせた構成は、中級クラスEVの典型的な仕様といえる。

HIMAの尚界「H5」。フロント中央に大型ディスプレー、メーター部にサブディスプレーを搭載する(写真:筆者)
HIMAの尚界「H5」。フロント中央に大型ディスプレー、メーター部にサブディスプレーを搭載する(写真:筆者)
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 一方、プレミアムカーでは、ダッシュボード全域をディスプレーとする大型ディスプレーの採用が進んでいる。HIMA旗艦店での実車確認では、尊界(MAEXTRO)「S800」及び問界(AITO)「M9」が、まさにダッシュボード全面ディスプレー仕様であった。

HIMAの尊界「S800」。運転席から中央部、助手席までダッシュボード全面をカバーする超大型ディスプレーを備える(写真:筆者)
HIMAの尊界「S800」。運転席から中央部、助手席までダッシュボード全面をカバーする超大型ディスプレーを備える(写真:筆者)
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HIMAの問界「M9」。こちらも超大型ディスプレー仕様だ(写真:筆者)
HIMAの問界「M9」。こちらも超大型ディスプレー仕様だ(写真:筆者)
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 運転席正面には走行関連情報、中央部にはナビゲーション表示に加え、空調や照明操作、各種車両設定を行うパネル、さらに助手席前にはエンターテインメント用ディスプレーを配置した3面構成となっている。

 中国EVでは音声認識機能が高度に進化しており、複雑な内容でも音声指示が可能である。さらに、どの乗員からの指示かを的確に判断し、それぞれに最適な制御を行う。学習機能により短期間で認識精度が向上するとの説明は、すでに3年前の調査時に受けている。

 このため、ディスプレー操作の必要性は相対的に低く、センターコンソールにはスイッチ類をほとんど配置しない、すっきりとしたデザインとなっている。ここで紹介した3車種も同様である。なお、いずれの車両もセンターコンソール前部に、スマートフォン用の非接触充電機構を2台分備えている。

車内が映画館に変わるシアター機能

 前述の尊界S800及び問界M9には、天井格納式のロールスクリーンが搭載されていた。電動で展開すると、前席の背面全体がスクリーンとなる。

尊界S800は後部座席前に大型スクリーンを備える(写真:筆者)
尊界S800は後部座席前に大型スクリーンを備える(写真:筆者)
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問界M9の大型スクリーン。後部座席天井部に搭載されたプロジェクター(写真の矢印先)から映像を投映することで、車内をシアター空間として活用できる(写真:筆者)
問界M9の大型スクリーン。後部座席天井部に搭載されたプロジェクター(写真の矢印先)から映像を投映することで、車内をシアター空間として活用できる(写真:筆者)
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完成された車載インフォテインメント

 IT(情報技術)企業主導による開発であること、またHIMAの展開が2023年末以降と比較的最近であることから、車載インフォテインメント(IVI)機能の完成度は高い。

「話しかけるだけ」で車を制御

 各乗員に対して、映像(ディスプレー)と音響を個別に提供できる。同時に複数の映像・音響制御が可能であり、音声指示の発言者を特定して最適化される。例えば、助手席で「暑い」と発言すると、助手席側の空間のみ温度が調整される。ナビやエンターテインメント操作も同様に音声で制御される。

月に一度進化するEV

 ソフトウエア定義車両(SDV)や無線によるソフト更新(Over The Air:OTA)の取り組みには目を見張るものがある。IT企業であるファーウェイが最も得意とする分野である。ショールーム調査や関係者からの情報によれば、SDVとしては駐車支援機能の追加や自動追従制御の改善などがOTAで提供されている。HIMA全体では3日に1回程度のOTA頻度とされ、1車種単位では月1回程度のバージョンアップと推察される。収益化は、購入時の買い取り型と月額課金のサブスクリプション型に大別されるが、道半ばの段階といえる。

乗り換えても迷わない統一されたUI

 あいにくと筆者自身は確認する機会はなかったが、以下は現地での専門家の解説である。

 HIMAの車両ではユーザーインターフェース(UI)が統一されており、車種間の乗り換えでも違和感が少ない。これは買い替え時だけでなく、通勤用の車両と社有車を使い分けるような日常利用においても利便性が高い。

 スマートフォンや、今後拡大が見込まれるファーウェイのウエアラブルデバイスともシームレスに連係しており、スマホで検索した情報がナビに反映されたり、スマホで視聴中の音楽がカーオーディオに引き継がれたりする。

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機能面でのプレミアム仕様

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