「上層部の頭が昭和時代で止まっている」――。日経クロステックが実施したアンケートの自由記述欄には、自動化の理想と現実のギャップに苦しむ現場の悲痛な叫びが並んだ。
「経営層からは展示会や各種メディアで得た最新技術を前提に『自社でも適用できないか検討してほしい』と求められるが、実際には人員・時間ともに余裕がなく、十分な予算措置が伴わないケースが多い。具体的な検証や導入に踏み込めないのが実情」(機械部品・電子部品メーカー、生産技術・生産管理)。ある工場のエンジニアも思いを吐露した。
「ロボットやAI(人工知能)を現場に導入する際、日本と欧米中では評価する指標(KPI)が異なる」。そう指摘するのは人型や四足歩行ロボットの開発を手掛けるアールティ(東京・千代田)の中川友紀子氏だ。同氏によると日本の現場では、新しいシステムを導入する目的の99%以上が人を減らすことや生産性を上げることに集中しており、導入直後から確実な成果を求める。一方、欧米や中国の現場では、ロボットをどれだけ長く使い続けたかを重視。最初から完璧な性能を求めず、とにかく現場に導入して稼働させるプロセスを評価するという。
昨今、製造業を席巻するバズワード「フィジカルAI」でも、日本の現場の受け止めは冷静だ。日経クロステックが実施したアンケートの自由記述欄には「経営層の無理解や投資効果ばかり追い続けていても大きな改革は進まない」(産業用機器メーカー、ITシステムの企画・構築)、「上層部の頭が柔軟な発想に戸惑いを感じているように思う」(自動車等輸送用機器メーカー、品質保証・品質管理)といった辛辣な声が並ぶ。
日本の省人化・生産性の向上を過度に重視するKPIは、フィジカルAIの導入において大きな足かせとなっているようだ。現在のフィジカルAIやそれを搭載したロボットは、まだ発展途上にある。導入初期は人間の作業よりも遅かったり、結局人間のサポートが必要だったりする。すると、日本の現場からは「これでは生産性が落ちる」「結局人が減っていないじゃないか」という不満が噴出し、導入が頓挫してしまう。
加えて、現場の多くは多品種少量生産のジレンマも抱える。「変種変量生産をしている私の工場では、自動化システムの投資を回収できるほど繰り返し作業がない場合が多く、金額が導入のハードルになっている」(総合電機・家電メーカー、ITシステムの企画・構築)。アンケートの自由記述欄にはそういった声もみられた。
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