今のところ、3Dプリンター住宅は富裕層向けの高価格帯と、機能や規模をコンパクトに抑えて低価格を前面に押し出したローコストタイプに2極化している。買うなら6000万円の自然素材住宅か、それとも550万円のシンプル住宅か。顧客のニーズと反応を探った。
延べ面積100m2の平面プランを自由に設計できるプレミアムエディションが約6000万円──。熊本県の住宅会社であるLib Work(リブワーク)は、土を主材料として建設3Dプリンターで建てる高さ約3.4mの平屋の住宅に強気の高価格を設定。業界を驚かせた。一部のみカスタマイズできる普及型のスタンダードエディションも用意している。それでも価格は約2000万円と安くない。
「3Dプリンター住宅は開発段階から、社会実装可能なフェーズに入った」。リブワークの瀬口力社長は力説する。同社はセメントを使わず、3Dプリンターで土壁を印刷し、その後に木材の柱やブレースを取り付ける3Dプリンター住宅「Lib Earth House model B」(以下、モデルB)を開発。冒頭のプレミアムエディションは2025年7月に発表し、26年1月に受注を開始した。
あえて高価格帯に打って出たのは、3Dプリンター住宅の品質を高め、他社に先んじて足場を固めるためだ。瀬口社長によれば、受注開始から約1カ月で予約申し込みは10件、進行中の商談は数十件あるという。「好調な出足だ。住宅やヴィラだけでなく、納骨堂といったオーダーもいただいた。お客様の柔軟な発想に我々が驚いている」(瀬口社長)
モデルBは早ければ26年4月にも着工する予定だ。設計・施工はリブワークが自ら手掛ける。材料の検討や開発ではアラップと協力しており、技術面でも抜かりはない。
技術開発への投資も惜しまない。25年12月には土の3Dプリンター住宅にまつわる特許を取得した。肝は材料と製造方法だ。具体的には、兵庫県・淡路島産の土を用いた3Dプリンター用建築材料の配合とその製造方法、それらを用いた建築物の製造方法である。
特許を取得した発明以外にも、材料の土で様々な実験を継続中だ。例えば、土壁に1000度の熱を当てる防耐火予備試験や、数十年分に相当する量の紫外線や水を用いた耐久試験、断熱性能が高いとされるもみ殻やセルロースファイバーの土への混合評価などに取り組んだ。
実験結果の詳細は明かせないとしつつも、瀬口社長は「良い結果が出ており、材料に自信を持っている」と話す。26年中には長期優良住宅の認定を取得する目標を掲げる。
3Dプリンターを使う上で問題視される寒冷地での施工や材料の温度管理は、北海道で試験を繰り返している。仮設テントとヒーターを併用し、温度や湿度を徹底管理する。「豪雪地帯ではテントの積雪荷重が課題だ。寒冷地からの引き合いも多く、早急に対処したい」(瀬口社長)
3Dプリンター住宅を根付かせるのに自助努力では限界がある。多様なニーズに応えるため、瀬口社長は業界団体をつくる構想を練る。「規制緩和に向けて国に働きかけるにも業界内の協力体制が不可欠だ」と瀬口社長は語る。
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