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26年春全館開業の道の建築「原宿クエスト」、表参道と奥原宿を縦横移動

日経XTECH / 3/19/2026

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Key Points

  • 原宿クエストは2026年春に全館開業を予定し、高層棟と低層棟の2棟で回遊可能なパサージュを設け周辺の表参道と奥原宿をつなぐ。
  • 地下には旧ホールを継承した大規模な多目的スペースを配置し、ファッションショー・イベント・会見など多様な用途に対応。
  • パサージュ途中に新店舗「EW.Pharmacy #106」がオープンし、来街者の導線確保と認知向上を狙う。
  • 開業初日には表参道側で花1万本を来街者に配布するなど、来街動線の活性化を狙うマーケティング施策を実施している。

 東京都渋谷区の新名所「原宿クエスト」が本領発揮する時が来た。NTT都市開発(東京・千代田)とH-QUEST(東京センチュリーとNTT都市開発が出資する特定目的会社)が東京都渋谷区神宮前1丁目で建て替えた商業施設の原宿クエストが、2026年春に全館開業を迎える。直前の同年3月13~14日には原宿クエストを特徴付ける2つの機能の提供を開始した。

東京・原宿の新しい商業施設「原宿クエスト」。表参道側の上空から見た外観は複雑にねじれた形状をしている(写真:NTT都市開発)
東京・原宿の新しい商業施設「原宿クエスト」。表参道側の上空から見た外観は複雑にねじれた形状をしている(写真:NTT都市開発)
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 JR原宿駅に近い原宿クエストが周辺のテナントビルと異なる点は大きく2つある。1つは、地下2階・地上6階建ての高層棟と地上1階建ての低層棟の2棟で構成する施設内を回遊でき、表参道と奥原宿という雰囲気が異なる街をつなげて交流を促すパサージュ(敷地内の屋外通路)を通したこと。もう1つは、NTT都市開発が旧原宿クエストで初めて手掛けた文化発信の多目的ホールを継承し、建て替えた原宿クエストの地下にも施設の象徴として大きなポップアップスペースを設けたことだ。旧原宿クエスト時代のホールと同様に、ファッションショーや音楽イベント、記者会見、展示会などの場として地下空間を提供する。

敷地の表参道側から奥原宿に通じるパサージュ(敷地内通路)の入り口。誰でも通り抜けられる(写真:日経クロステック)
敷地の表参道側から奥原宿に通じるパサージュ(敷地内通路)の入り口。誰でも通り抜けられる(写真:日経クロステック)
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地下に設けた多目的ホールの入り口付近(写真:日経クロステック)
地下に設けた多目的ホールの入り口付近(写真:日経クロステック)
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 パサージュの途中には、ドライフラワーや香水、飲み物などを扱う新店舗「EW.Pharmacy #106」が26年3月13日にオープンした。同店はパサージュの存在や利便性を来街者に知らせ、通行人をパサージュの奥まで誘導する役割も担う。開業から2日間、原宿クエストの表参道側では1万本の生花を歩道の通行人にプレゼントして、パサージュに人を呼び込んだ。

パサージュの途中の1階にオープンした新店舗「EW.Pharmacy #106」(写真:HARAJUKU QUEST×edenworks はな と あるくひ)
パサージュの途中の1階にオープンした新店舗「EW.Pharmacy #106」(写真:HARAJUKU QUEST×edenworks はな と あるくひ)
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パサージュ沿いにできたEW.Pharmacyの前の「路上」には、開業日に人だかりができた(写真:日経クロステック)
パサージュ沿いにできたEW.Pharmacyの前の「路上」には、開業日に人だかりができた(写真:日経クロステック)
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 同時に、地下1階に設けた約320m2のポップアップスペース「THE HALL(ザ・ホール)」では、26年3月14日に最初のイベントが始まった。原宿クエストのロゴデザインや館内サイン、地上2階にある階段踊り場のオブジェなどを制作したアーティストのYOSHIROTTEN(ヨシロットン)が、オープニング展示をスタート。ホール運営者のen one tokyo(東京・渋谷)と共に、同年3月29日までエキシビションを開催する。YOSHIROTTENは「新しい感覚や出会いを生み出す原宿の地下室」をテーマに作品を構成したという。

地下1階の「THE HALL」で始まったアーティストのYOSHIROTTEN(ヨシロットン)によるオープニング展示「Quiet Underground:Energy, Sound and Time」(写真:日経クロステック)
地下1階の「THE HALL」で始まったアーティストのYOSHIROTTEN(ヨシロットン)によるオープニング展示「Quiet Underground:Energy, Sound and Time」(写真:日経クロステック)
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 THE HALLとつながるレストラン「THE TUNNEL(ザ・トンネル)」は広さ約150m2で、エキシビション会期中は原宿の音楽や食事、カルチャーをテーマにしたイベントを連日開催する。防音システムを備え、音楽イベントに対応した気軽に立ち寄れる「地下の食堂」を標榜する。

THE HALLと空間が連続する地下の食堂「THE TUNNEL」。天井はトンネルのようなアーチ形をしている。複数の建築家が内装や什器(じゅうき)のデザインに参画している(写真:日経クロステック)
THE HALLと空間が連続する地下の食堂「THE TUNNEL」。天井はトンネルのようなアーチ形をしている。複数の建築家が内装や什器(じゅうき)のデザインに参画している(写真:日経クロステック)
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 原宿クエストの「デザインアーキテクト」を務めた建築設計事務所OMAの重松象平氏は、建築コンセプトに「デュアリティー(二面性)」を掲げた。計画地は、高級ブランドの旗艦店が立ち並ぶ表参道と、狭い通りや建物が密集する奥原宿及びその先の竹下通りの両方に近接する結節点に位置する。異なる街の顔を持つ表参道と奥原宿の対比を二面性で表現しながら、両者を結ぶ新しい人の流れを生み出すことに力点を置いた。

 さらに1988年に開業した旧原宿クエストが担ってきた原宿カルチャーの発信拠点という役割の歴史と精神を受け継ぎ、進化させることを狙った。建物の設計はNTTファシリティーズ、施工は熊谷組がそれぞれ手掛けた。

表参道と奥原宿をつなぐコンセプトダイアグラム(出所:NTT都市開発)
表参道と奥原宿をつなぐコンセプトダイアグラム(出所:NTT都市開発)
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 原宿クエストの表参道側と奥原宿側は外装デザインを大きく変え、ファサードの対比で二面性を表現している。ブランドショップに負けない表参道側の垂直で透明なガラスファサードに対し、住宅街でもある奥原宿側は建物の上層部を徐々にセットバックして圧迫感を減らした階段状のファサードにしている。建物は眺める位置や角度によって全く違って見える。

 対照的な2つの顔を持つ原宿クエストで、人の往来が激しい表参道側と落ち着いた雰囲気の奥原宿側を結ぶのがパサージュだ。パサージュが通行可能になったことで、原宿クエストの建築コンセプトが明確に伝わるようになる。

パサージュの上には一部、雨よけのガラス屋根を設けた(写真:日経クロステック)
パサージュの上には一部、雨よけのガラス屋根を設けた(写真:日経クロステック)
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 パサージュや地下階の壁にも二面性のデザインを取り入れている。表参道側の地上部がガラスで覆われているのに対し、その脇を抜けるパサージュや地下階の壁は地層をイメージした版築壁とした。壁面には、すぐ近くにある明治神宮の地層や植生を反映した素材を使っている。ガラスと土という異なる素材を壁面に使うことで、ここでも施設内の対比を表現している。

パサージュの壁は明治神宮周辺の地層をイメージした版築壁(写真:日経クロステック)
パサージュの壁は明治神宮周辺の地層をイメージした版築壁(写真:日経クロステック)
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地下階も版築壁で地層のように見せている(写真:日経クロステック)
地下階も版築壁で地層のように見せている(写真:日経クロステック)
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 動線計画はメインのガラス棟に入ってからパサージュや地下階に抜けるのではなく、表参道から直接パサージュや地下階にアクセスできるようにしている。しかも地上階と地下階やパサージュはエレベーターや階段で縦方向に接続し、施設内をぐるっと1周できるようにして内部の回遊性を高めている。

表参道からそのまま階段(中央部)を下りて地下階のホールや食堂に行けるようにした。右手のガラス張りの店舗は「NIKE HARAJUKU」(写真:日経クロステック)
表参道からそのまま階段(中央部)を下りて地下階のホールや食堂に行けるようにした。右手のガラス張りの店舗は「NIKE HARAJUKU」(写真:日経クロステック)
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 オープニング展示をしているYOSHIROTTENも二面性を意識し、「メインストリームとサブカルチャー、メジャーとアンダーグラウンド、フィジカルとデジタルといった領域の横断をテーマにロゴデザインや作品に反映した」と語る。展示物で最大級のディスプレー作品は、ホール中央部の太い柱を囲むように設置し、建物の屋上から取り込んだ外の光のデータを地下で映像に変換してリアルタイム表示するという地上と地下の二面性から着想したものだ。

地下空間に地上の光を取り込むインスタレーションなどを展開(写真:en one tokyo、YOSHIROTTEN)
地下空間に地上の光を取り込むインスタレーションなどを展開(写真:en one tokyo、YOSHIROTTEN)
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迷路のようなパサージュや階段を縦横に移動

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