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【永久保存版】未来の MV はどうなる?映像クリエイターが Gemini で MV 制作に挑戦。「Music Video with Gemini」の全貌

note / 3/13/2026

💬 OpinionSignals & Early TrendsIdeas & Deep AnalysisTools & Practical Usage

Key Points

  • Geminiを用いたMV制作の実践例と全貌を紹介するケーススタディ。
  • 未来のMV制作におけるAI活用のワークフローと役割分担を示唆。
  • AIと人間クリエイターの協働による表現創出のメリットと課題を検討。
  • Geminiの導入がMV業界にもたらす影響と今後の市場トレンドを展望。
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【永久保存版】未来の MV はどうなる?映像クリエイターが Gemini で MV 制作に挑戦。「Music Video with Gemini」の全貌

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Gemini - Google の AI

こんにちは、 Google の AI「Gemini(ジェミニ)」の公式 note 編集部です。

突然ですが、 AI で「動画生成」したことはありますか?

プロンプトを打つだけで、数分で思いのままの映像や音を生成できる「動画生成」機能
ここ数年、生成のクオリティは目まぐるしく進化し、まるで実際に撮影したかのような映像も生成できるようになりました。

そんななか、最前線で活躍する映像クリエイターが Gemini に搭載された動画生成モデル「Veo 3」などを活用し、ミュージックビデオ制作をする取り組み「Music Video with Gemini」がスタート。

TOWA TEI 、藤井隆、 STUTS on the WAVE 、パソコン音楽クラブ、 muque 、 LAUSBUB ・・・など数多くのアーティストとともに制作した合計 15 本のミュージックビデオがすでに公開されています。

思い描いた世界が、AI によって今まで以上に簡単に実現できるようになった今。
クリエイターは AI とどのように向き合い、作品に取り入れることができるのか?

今こそ、AI と人間とがどのように共に創作に向き合うべきか、あらゆるクリエイターが Gemini と向き合ったこのプロジェクトについて詳しく紹介します!


MV は「未来の映像の実験場」

このプロジェクトのクリエイティブディレクターを務め、自身も数々の MV を監督する鈴木健太さん(Firstthing)は、MV という文化についてこう話します。

「MV はいつの時代も『まだ誰もやっていない映像表現』を試せる場所でした。1981 年、 MTV が開局したとき、最初に流れたのは The Buggles の「Video Killed the Radio Star」でした。音楽を"聴く"だけでなく"観る"ものへ。MV は単なる楽曲のプロモーションではなく、映像表現そのものの実験場になっていきます。」

「90 年代に入ると、 MV はさらに大胆な進化を遂げます。スパイク・ジョーンズが Björk や Beastie Boys のために撮った作品群は、映画とも CM とも違う、MV だからこそ許される自由な表現の可能性を切り拓きました。ミシェル・ゴンドリーは手作りの特殊効果とアイデア一発の演出で鮮烈な映像体験に変えてみせた。」

予算やフォーマットの制約がある一方で、3〜5 分という尺の中で何をやってもいい。ストーリーがなくてもいい。抽象的でもいい。むしろ、音楽という強力な"感情の軸"があるからこそ、映像は自由に飛躍できる。そんな『未来の映像の実験場』こそが、ミュージックビデオという文化なのかもしれません。

2025 年 5 月、Google I/O という発表会で、最新の Gemini に搭載された動画生成モデル「Veo 3」とさらに細かな動画編集ができるツール「Flow」が公開されました。

それまでの動画生成 AI は、生成できる尺がわずか数秒。「すごいけど、これで何かをつくるのは難しい」というのが正直なところでした。Veo 3 はその壁を大きく押し広げ、より長尺かつ高精細な映像生成を可能にしました。さらに、高度な映像編集ツール「Flow」や、2025 年 8 月には画像生成 AI「Nano Banana」もリリース。映像制作に必要な道具が、一気に揃っていきました。

この進化を受けて、Google の Gemini チームの中で問いが生まれました。

「本来は映像をつくりたいけれど、様々な制約で作ることのできなかった作品があるはず。その"つくりたかった映像"を、この技術なら実現できるんじゃないか?」
「第一線で活躍するプロフェッショナルが、AI という"新しい画材"を手にしたとき、どんな表現が生まれるだろう?」

効率化のためでも、コスト削減のためでもない。まだ誰も見たことのない AI 表現のポジティブな可能性を、クリエイターたちと本気で一緒に見つけたい。こうして始まったのが「Music Video with Gemini」です。

この記事では、クリエイターと音楽アーティストの挑戦アプローチの舞台裏に迫っていきます!

「自分では絶対にできないことを」–––– 山口祐果 監督

最初に紹介するのは、札幌を拠点に活動する二人組テクノポップバンド・ LAUSBUB の新曲『golden lighter』の MV。監督を務めたのは、普段は実写作品を中心に手がける山口祐果さんです。

山口さんがこのプロジェクトに臨むにあたって決めていたことがあります。
「AI とやるなら、今まで自分が絶対にやらなかったことをやろうと思った」

実写の現場には、撮影日数、予算、アングル、ライティングーー事前に決めなければいけないことが山ほどあります。でも今回は、その計画性をまるごと捨ててみました。絵コンテもなし。撮影監督もいない。山口さんと少人数のコアスタッフを中心に、音楽から受けるインスピレーションを頼りに、ひたすら素材を生成し続ける。「行き当たりばったり」の制作です。

ただ、そこで壁にぶつかりました。AI が生成する映像が、「綺麗すぎる」のです。

「AI って放っておくと、非の打ち所がない"正解"みたいな映像を出してくるんです。でも、LAUSBUB の世界観には、もっとザラついた、エッジのある質感が必要だった」

そこでチームは逆の方向に舵を切りました。
「ゴミを散乱させて」「落書きを書いて」とプロンプトで指示し、あえて画質を落としたり、映像を 400%に拡大して荒れさせたり。AI 特有の"完璧さ"を、人間の手で壊していく作業です。

最終的に生成された素材は 400 カット以上。それを音色やテンポに合わせて編集し、完成した MV は通常の尺を大きく超える 8 分間の作品になりました。

統一感がない。カオスに見える。でも、そのカオスが不思議と心地よいリズムを生んでいる。LAUSBUB の二人も「自分たちでも気づけなかった曲の要素を見つけられた」と話しています。

「一番面白かったのは、事前に立てた企画が何も守られなかったこと(笑)。でも、それこそが AI と作る意味だったし、最もクリエイティブな瞬間でした」

「毎日、Gemini と向き合った」–––– 中村剛 監督

続いて紹介するのは、TOWA TEI が 2013 年にリリースした楽曲『APPLE』の新 MV。制作を手がけたのは、TOWA TEI と長年の盟友であり、数々の名作MV を世に送り出してきた日本を代表する映像ディレクター・中村剛さん(CAVIAR)です。

TOWA TEI さんがずっと温めていたのは、「この曲の MV を作るなら、新しいテクノロジーが誕生した時に」という想い。その時が、2025 年に来たのです。

「2013 年当時は、アダムとイブが食べた"知恵の実(APPLE)"をテーマにしていた。もし 2025 年に"禁断の果実"があるとしたら、それは間違いなく AI ですよね。僕らが呪文(プロンプト)を唱えて、中身の構造もわからずに結果だけを得ている。まさに魔法そのものです」(中村監督)

二人が着想の軸にしたのは、SF 作家アーサー・C・クラークの言葉 ーー「高度に発達した科学技術は、魔法と区別がつかない」。映像に繰り返し登場するゴリラや類人猿は、『2001 年宇宙の旅』のモノリスへのオマージュです。AI という現代のモノリスに触れた人類はどうなっていくのか。そんな壮大な問いが、1960 年代風のレトロフューチャーな世界観で描かれています。

中村監督は Gemini、Veo 3、Nano Banana など複数の AI ツールをフル活用しながら、数カ月にわたりほぼ一人で PC に向き合い続けました。詳細なコンテは作らず、AI との対話を繰り返しながらコラージュのように映像を紡いでいく。「コンテを切ってつくるのではなく、出たものから次を考える」という即興的なスタイルです。

「指示通りにいかないことがほとんどなんですが、たまに AI が勝手にやったことが"ホームラン"になる瞬間がある。例えば、ゴリラの表情。指定していないのに、すごく人間臭くて気まずそうな顔をしてきたり(笑)。そういう"AI の暴走"を面白がって採用していきました」(中村監督)

「1960 年の教育用の本」とプロンプトに入れてレトロな質感を統一したり、波形の画像を Gemini に読み込ませて抽象的なイメージを生成したり。試行錯誤の末に生まれた 400 以上のカットが、パズルのように組み合わされています。

一方で、この制作スタイルには"孤独"もつきまといます。実写なら「砂漠に行こう」となればチーム全体で大移動するけれど、AI なら一瞬で砂漠が出てくる。その分、すべてが自分の頭の中にあるものを言語化する作業になる。逃げ場がない。でも中村監督は、その状況をむしろ楽しんでいたようです。

「AI は 1 から 99 までの作業を爆速でやってくれる。でも、何もないところからアイデアを生む"0 から 1"と、最後の画竜点睛である"99 から 100"は、やっぱり人間がやらないといけない。そこに作り手の美学やユーモアが出るから。ドラムマシンができてもドラマーはいなくならなかった。最終的には"誰がどう遊ぶか"というセンスの問題になると思います」(TOWA TEI)

「とにかく”ダンス”させてみたい」–––– 田向潤 監督

続いては、福岡を拠点に活動し、ユースカルチャーを中心に支持を集めるバンド・muque の新曲『Level up』。監督を務めたのは、きゃりーぱみゅぱみゅや SEKAI NO OWARI などの MV で知られる田向潤さんです。

田向さんはこの曲を聴いた瞬間、「絶対にダンスだ!」と確信したそうです。
ただし、muque は楽器を持ってクールに演奏するバンド。結成 3 年間、ダンスの素振りすら見せたことがない。メンバーも「想像がつかなかった(笑)」と振り返ります。

でも、だからこそ面白い。田向さんが目をつけたのは、AI の「フレーム補間」——動画と動画の間を生成してつなぐ技術でした。

やり方はこうです。メンバーは音楽の 1 拍分だけポーズを決めて動く。次の 1 拍は飛ばして、また別の動きをする。その「間」を Veo 3に生成させてつなぐ。つまり、1 割の真実(撮影した素材)と、9 割の嘘(AI が生成した動き) を混ぜ合わせる。

「そうすると、本人が踊っているようなリアルさと、人間には不可能な動きが同居する不思議な映像が生まれるんです」(田向監督)

撮影現場では、メンバーが「一瞬だけ」動いては止まるシュールな撮影の光景が広がっていたそうですが、完成した映像では、AI が生成した関節の動きや残像が彼らを"超人"に変貌させていました。

制作の中で、面白い発見もありました。ダンスのプロンプトに、あえて関係のない「テニスボールが弾ける」「宇宙服」といった言葉を混ぜると、なぜかダンスの動き自体もイキイキとしてくるのです。

「理由のない言葉を加えることで、AI の想像力が刺激されるのか、予想外の面白い絵が出てくる。思い通りにコントロールすることを諦めて、その誤差を楽しむようにしました」(田向監督)

完成した MV では、muque のメンバーが宇宙服や不思議なオブジェクトとともに、重力を無視して舞い踊っています。メンバーも「AI によって"ダンスができる人たち"になっちゃいました(笑)。まさに"Level up"できた感覚です」と大盛り上がり。

「映像がついたことで、音楽の聴こえ方が変わったり、新しい一面が見えたりするのが理想の MV。今回は AI という"他者"の解釈が入ることで、僕一人では作れない、見たことのない映像になりました」(田向監督)

「”しりとり”のように生成する」–––– 平牧和彦 監督

パソコン音楽クラブが 2019 年にリリースし、ファンから根強い人気を誇る名曲『hikari』(feat. 長谷川白紙)。監督を務めたのは、緻密な構成と映像美で知られる平牧和彦さんです。

この MV、実はたった 1 枚の写真から始まっています。

会議室で撮ったコップ 2 つの写真。素材は本当にこれだけ。平牧さんが採用したのは、この画像の「最後のフレーム」を次の生成の「最初のフレーム」として Veo 3 に読み込ませ、数珠つなぎに映像をつないでいく手法でした。いわば「AI しりとり」です。

水が溢れ、海になり、炎に包まれ、またコップに戻る。1 枚の静止画から始まった映像は、AI の想像力によって突飛な展開を見せながらも、どこか連続性のある「2 つのコップの冒険」のような物語になっていきました。

「前のカットの最後が次のカットの始まりになるので、途中で"やっぱりここを変えたい"と思っても、そこから後ろ全部を作り直さないといけない(笑)。まるで一筆書きのような不自由さがありましたが、その制約があったからこそ、予期せぬ展開を受け入れる面白さが生まれました」(平牧監督)

プロンプトで「海中」や「爆発」と入力しても、AI はコップという形状を維持しようとしたり、逆に勝手に人間を登場させようとしたりする。平牧さんはそれを「コップの意思」のように感じながら、あえてその偶然性をストーリーに取り込んでいったそうです。

完成した MV を見たパソコン音楽クラブの二人が最も驚いたのは、音と映像の完璧なシンクロでした。「AI ってこんなに気持ちよく音に合わせられるんだ!」と感動したそうですが——実はこれ、AI の力ではありません。

「AI は指定した尺で動画を生成しますが、音楽のタイミングに合わせて爆発させたりするのは苦手なんです。だから、生成された映像を編集ソフト上でタイムストレッチして、手作業でビートに合わせています」(平牧監督)

膨大な生成素材を 1 フレーム単位で調整し、380 以上のレイヤーを重ねて作り上げた、超・人力作品。AI で生成しているのに、最も手間がかかっているのは人間の作業だった、というのがこの MV の面白いところです。

パソコン音楽クラブの二人は、今回の体験をこう振り返ります。

「昔、サンプラーや DTM が登場した時も"楽器が弾けなくなる"と言われたけど、結果的に新しい音楽が生まれた。AI によって、最初から映像の知識がなくても、とんでもない映像作品を作ってしまう人も出てくるかも。それがすごく楽しみです」

「あの日、作りたかったMVをカタチに」–––– 藤井隆

ここからは少し毛色の違うプロジェクトを。
藤井隆さんが 2017 年にリリースしたアルバム『light showers』——その全 10 曲を、AI でフル尺 MV 化するという試みです。

1990 年代の音楽をテーマに制作された『light showers』。藤井さんはリリースにあたって、全曲に「架空の CM タイアップがついている」という設定をつくりました。腕時計、目薬、映画の予告編——それぞれの楽曲に架空のスポンサーを割り振り CF を撮影。

「子供の頃の夢が CM 監督だったんです。だからこのアルバムを作った時、勝手に全曲分の CM を撮って、CD のパッケージにタイアップシールを貼りたくて。普通の歌手なら"伝えたいこと"から始まるんでしょうけど、僕の初動はそのステッカーを貼りたいってところからでした(笑)」(藤井隆)

この CF まとめ映像は YouTube で 100 万回再生以上を突破。「見たことないのに、なぜか見たことある!」と話題になりました。8 年後のある日、「AI で一緒に MV を作りませんか?」という話が舞い込みます。

「止まっていた時間が動き出したような気がしました」(藤井隆)

監督を担ったのは、畑野亮さん、関口きららさん、角谷アキラさんという 3 名の若手監督。15 秒の CF を種にして、Veo 3 や Nano Banana、Flow を駆使しながら、フル尺 MV へと拡張していきました。

たとえば『mode in the end』では、荒廃した世界をさまようロボットが主人公。Nano Banana でロボットをデザインし、Veo 3 のランダム性を活かして同じプロンプトから複数のダンスカットを生成しています。

『カサノバとエンジェル』では、CF に登場した目薬が軽快に踊り出すアニメーションが見どころ。プロンプトに BPM を指定することで、映像と楽曲のテンポを合わせるという手法も試みられました。

そして『プラスティック・スター』では、CF の藤井隆に憧れる「チューブマン(空気で動く人形)」を主人公に設定。Flow の素材生成機能を使って、チューブマンが世界中を飛び回り、最終的に CF の藤井隆と時空を超えて共演を果たします。

ただ、10 本もの MV を AI で制作する過程は、決して楽な道ではありませんでした。

「Gemini には性格がある気がして(笑)。得意不得意もあるし、機嫌もある。だから途中から"クセのあるプロデューサー"だと見立てて、顔色を伺いながら対話していました。そしたらなぜかうまくいった」(畑野監督)

角谷監督は、AI を「自分の能力や引き出しを如実に映し出す鏡」だと表現します。指示が曖昧だと曖昧なものしか出てこない。だからこそ、頭の中のイメージを徹底的に言語化しなければならない。「文章を書くのが苦手だから映像ディレクターになったのに、文章を書かなきゃいけなくなった」という笑い話も飛び出すほど、AI との制作は"超地道"な作業の連続でした。

関口きらら監督が手がけた『Going back to myself 〜再生のリズム〜』は、もともと CF が「架空の映画『まばたき』の予告編」という設定だった作品。

そこから構想を広げ、夫と冷め切った関係にある主婦と、カメラマンの秘めた恋愛物語を MV として描きました。Veo 3によって断片的なシーンを次々と生成し、従来の撮影ではとても実現できない規模のドラマに仕上がっています。

「AI での映像生成は初めてで、ほぼ手探り状態でした。でも"1 → 100"の具現化・拡張に関しては、恐ろしいほどの爆発力を持っています」(関口監督)

「AI って少し冷たいものだと思っていたけれど、全然そんなことなかった。打ち合わせから完成まで、心が動く瞬間が何度もありました。8 年前の自分がやりたかったことが、今の技術でこんなふうに報われるなんて」(藤井隆)

8 年前に 2 日で撮った 10 本の架空の CM。それが 2025 年、3 人の若手監督とAIの手を借りて、10 本のフル尺 MV として蘇りました。

「アーティストの記憶の中へ」–––– 堀田英仁 監督

最後に紹介するのは、STUTS と ZOT on the WAVE によるユニット「STUTS on the WAVE」の楽曲『Final Destination feat. Campanella, Candee, 鎮座 DOPENESS』。監督は、数多くのミュージックビデオやファッション映像で独自の世界観で描く堀田英仁さんです。

堀田さんのアプローチは、他の監督たちとは異なるものでした。

「人間が起きている時間のうち、鮮明に覚えていることなんてほんの一瞬。残りの 99.9%は忘れてしまっている。その"忘却の歴史"を AI が埋めてくれたら面白いんじゃないかと考えました」

素材として使ったのは、STUTS や ZOT on the WAVE、客演のラッパーたちのスマホに残っていた思い出の写真や動画。旅先のスナップ、何気ない日常の一枚。それらをもとに、写真の外側に広がっていたはずの景色や、忘れてしまった前後の時間を Veo 3 や Nano Banana で生成し、つなぎ合わせていきました。

堀田さんが大事にしたのは「AI を使いました!というだけの映像にはしたくない」ということ。
アーティスト本人のパフォーマンスはしっかり実写で撮影し、AI の役割はあくまで背景や世界観の拡張に徹させる。人物は本物、でもその周りに広がる風景はどこか見覚えがあるようで、実在しない。実写と AI の境界線が溶けた、夢の中のような浮遊感を実験しました。

「実写の現場でも、天候や被写体のテンションで予定が変わることがある。AI も同じで、指示通りにいかないのが面白い。"お店の写真"から生成したら、僕が想像もしなかった街並みが周りに広がっていたり。AI が勝手に補完した記憶が、妙にリアルで説得力がある瞬間があるんです」(堀田監督)

STUTS さんも「自分たちの思い出の場所が、AI によってどんどんつながっていく感じが面白かった。見覚えがあるような、ないような。その曖昧さが、まさに記憶そのものだなと思いました」と振り返ります。

「撮影の時点では、正直どんな作品になるか想像もつかなかった。でも出来上がってみたら、見たことのない映像になっていた」(ZOT on the WAVE)

自分たちのスマホの写真がどう化けるかわからないまま委ねた結果、想像を超えたものが返ってきた。その体験自体が、この MV のテーマである「記憶の曖昧さ」と重なっているようにも感じます。

スマホの中の何気ない一枚が、AI の力で壮大なロードムービーへと変わる。「記憶の補完」という、このプロジェクトの中でも非常に新鮮なアプローチでした。

だれもが挑戦できる世の中になった

ここまで、6 組のクリエイターたちの挑戦を紹介してきました。

アプローチはバラバラ。でも、全員に共通していたことがあります。
「これまでの仕事を代替するのではなく、新たな表現を貪欲に模索しつづけた」こと。

Google 日本法人で Product Marketing Manager としてプロジェクトを推進した内野は、こう振り返ります。

「皆さん口を揃えて"時間が溶ける"とおっしゃっていました(笑)。私たちはこれを"ガチャを回す"と呼んでいたんですが、AI は必ずしも意図通りのものを出力するわけではない。でも、その予測不能な動きや、自分の発想の外側にある"異物"が出てきた瞬間に、クリエイターの方々は面白さを感じていたようです。効率性を求めるのではなく、自分の想像を超えたアイデアを AI がふと運んでくる。そのセレンディピティこそが、つくり手の関心をひいたのだと思います」

また、クリエイティブディレクターの鈴木健太さん(Firstthing)もこう話します。

「このプロジェクトで証明したかったのは、AI が人間のクリエイティビティを"代替"するのではなく、そのひとのアイデアや潜在能力を引き出し"拡張"するということ。何を作るか決めるのは人間、最後に選ぶのも人間。でも、その間にある膨大な可能性を、AI は一緒に走りながら見せてくれる。Gemini は"孤独な創作活動に寄り添うパートナー"になれるんじゃないかと思っています」

プロの現場で実証されたこの体験は、実はプロだけのものではありません。 Gemini の機能は日々アップデートされ、映像生成のハードルはどんどん下がっています。

「何かをつくりたい」という衝動。
それさえあれば、もう十分です。

かつて MTV が音楽を"観るもの"に変えたように、スパイク・ジョーンズやミシェル・ゴンドリーが MV を実験場に変えたように。Gemini は、「つくりたい」と思ったすべての人にとっての新しい画材になれるはずです。

今日からできる、Gemini とクリエイティブ

この記事を読んで、「自分もちょっと試してみたい」と思った方へ。

Gemini に搭載された動画生成モデル「Veo 3」は、特別な機材も専門知識も必要ありません。スマホや PC から Gemini にアクセスして、思いついたイメージをプロンプトとして打ち込むだけ。それだけで、数分後には映像が手元に届きます。

今回のプロジェクトでクリエイターたちが発見したことは、そのまま皆さんのヒントにもなるはずです。

言葉ひとつで、映像が変わる。田向監督は「テニスボール」とまったく関係のない言葉をプロンプトに混ぜたら、ダンスの動きがイキイキと変化した。言葉の組み合わせ次第で、自分でも想像しなかった映像が目の前に現れます。

最初から完璧を目指さなくていい。山口監督が AI の綺麗すぎる映像をあえて壊したように、「ちょうどいい不完全さ」を探す過程自体がクリエイティブです。

素材は身の回りにある。堀田監督はアーティストの写真から MV を作りました。あなたのスマホにも、まだ見ぬ映像の種が眠っているかもしれません。

まだ見たことのない景色へ。中村監督は「自分の頭の外にあるもの」と出会った。Gemini は、あなた一人では辿り着けなかった表現への近道かもしれません。

結局のところ、クリエイティブの本質は変わりません。

"人が何を選ぶか"。その意志と選択肢と可能性を、Gemini は広げてくれます。

さあ、なにからはじめましょう?

Gemini を使ってみる

▶「Music Video with Gemini」全 15 本の MV を観る

▶ ドキュメンタリー映像を観る

✦ Music Video with Gemini

Google の AI を活用して制作されるミュージックビデオ・プログラム。Google の AI「Gemini」をはじめ、最先端の映像生成 AI「Veo 3」「Flow」、画像生成・編集機能の「Nano Banana」「Whisk」など、Google AI のさまざまなツールを活用し、クリエイター自身がこれまでにない映像表現を追求するプロジェクトです。

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