AI Navigate

SaaSへ挑む三菱電機のFA、「リアルタイム制御は必ず残る」

日経XTECH / 3/18/2026

📰 NewsSignals & Early TrendsTools & Practical UsageIndustry & Market Moves

Key Points

  • 三菱電機はFAの販売中心モデルから、現場データを活用するSaaS型継続課金へと事業構造を転換。2026年にFAデジタルソリューションの順次提供を開始予定。
  • 世界累計2900万台のFA機器から得られる高品質データを共通データモデルでクラウドに蓄積し、部門横断の情報共有と工場全体の最適化を実現する基盤を構築。
  • 第1弾の工程管理ソリューションは現場のPLCにエッジ機器を接続し、良品数・不良品数・不良品コード・設備異常信号・設備異常コード・品種名の6情報を収集してKPIを監視画面に表示。現場が低コストで導入可能な設計。
  • 収集データはSerendie基盤に統合され、熱・電力の需要最適化や設計支援・設備保全などの追加ソリューションへ展開。データ活用を工場全体へ波及させ、部品開発へのフィードバックも目指す。

 現在のFA(ファクトリーオートメーション)市場では、欧米の製造業を中心にソフトウエアによる制御のオープン化が進展している。三菱電機は、機器の販売モデルから、製造現場の機器が収集したデータをソリューション提供につなげる事業へと構造転換を急ぐ。

 同社の足元の業績は堅調だ。2025年度第3四半期の連結売上高は、同期間として過去最高を記録した。「収益性の改善につながっているのは、中国のAI(人工知能)関連需要だ。高性能な製品が要求されるため、収益性も高い」〔同社常務執行役CFO(最高財務責任者)の藤本健一郎氏〕。FAシステム事業も、中国における生成AI関連の半導体・データセンター投資やスマートフォン関連の需要増加で業績が拡大している。

FAシステム事業の構造改革。2025年5月、三菱電機は経営戦略説明会において、低迷していたFAシステム事業を再成長軌道に乗せるため「リーンな経営体質の構築」「事業ポートフォリオ変革」「販売・開発体制刷新」の3つの柱を掲げた。以来、構造改革の各施策が実行に移された(出所:三菱電機)
FAシステム事業の構造改革。2025年5月、三菱電機は経営戦略説明会において、低迷していたFAシステム事業を再成長軌道に乗せるため「リーンな経営体質の構築」「事業ポートフォリオ変革」「販売・開発体制刷新」の3つの柱を掲げた。以来、構造改革の各施策が実行に移された(出所:三菱電機)
[画像のクリックで拡大表示]

「2900万台」の生データの独占と活用

 この事業転換において戦略の中心となるのが、データとSaaS(Software as a Service)を活用した「継続課金(サブスクリプション)モデル」への移行である。同社は、世界中で稼働する累計2900万台の同社製FA機器(シーケンサー、サーボモーター、CNCなど)というインストールベースを保有している。そこから得られる質の高い現場の生データを生かす仕組みが武器となる。

 それが、同社が2026年に順次提供を始めるSaaS型の「FAデジタルソリューション」だ。従来、システムの導入企画や運用管理は部門別で行われることが多く、データの所在、使用ソフトウエア、活用ノウハウが部門ごとにサイロ化し、工場全体での情報共有が難しかった。新サービスは、様々なシナリオで活用・共有しやすい標準データモデルという共通の構造でクラウド上にデータを蓄積する。

 第1弾となる工程管理ソリューションは、現場のPLC(Programmable Logic Controller)に専用のエッジ機器を接続し「良品数、不良品数、不良品コード、設備異常信号、設備異常コード、品種名」という6つの情報を収集することで、監視画面に重要なKPI(重要業績評価指標)を表示する。ITの専門家がいない現場でもスモールスタートできるという。

 同ソリューションでは、アプリケーション群を継続課金型で順次展開する予定。今後、設計コラボレーション(設計支援ソリューション)や設備保全・予備品管理ソリューションの提供を計画している。

データ展開はFAだけではない

 収集した現場のデータを同社が提供するデジタル基盤「Serendie(セレンディ)」に集約し、部門横断での最適化を図れるようにもする。

 例えば生産計画に対する最適な電力・熱の需要をシミュレーションする「熱関連トータルソリューション」にFAデジタルソリューションで収集した工場の生産計画や稼働データを掛け合わせる。同社の電力システム部門やビルシステム部門が持つ電力・空調の需給データを掛け合わせ、工場建屋全体のエネルギー最適化などを一括で提案する。

 サービスで収益を得るだけではなく、得られたデータをモーターなどのコンポーネントにフィードバックし、コンポーネントの差異化や付加価値向上につなげる考えだ。

次のページ

オープン化に舵を切る

この記事は有料会員限定です