この記事の3つのポイント
- Beffはトヨタや日産で電池開発に従事した長野氏らが創業したスタートアップ
- 電池業界で中国勢が強いのは、人員の多さ以外にも理由がある
- 日本企業の開発現場では属人的なプロセスが重荷に
「業界の負の側面や課題に直面し、別の角度から解決しないといけない。そう実感してトヨタ自動車を辞め、今の会社を創業した」。こう振り返るのは、電池エンジニアリング会社のBeff(ベフ、東京・千代田)で共同最高経営責任者(Co CEO)を務める長野幸大氏だ。トヨタで全固体電池の技術開発を担当する前は、日産自動車で電気自動車(EV)向け電池の開発に従事していた。
日本企業が抱える課題の1つに、開発スピードの遅さがある。リチウムイオン電池だけでなく、全固体電池を筆頭とする次世代電池の開発も並行して進める必要がある現状を考えると、世界市場での存在感を保つのは容易ではない。自動車メーカーや電池メーカーの開発を支えるエンジニアリング会社という立場から見える開発現場の状況や解決すべきポイントを聞いた。
EV向け電池の世界シェアは、中国勢が7割を超えた。次世代電池の開発でも先頭を走っている。その理由は、単純に開発する人員が多いだけなのか。
人が多いのは確かだが、それだけではない。日本企業との大きな違いは、開発プロジェクトを並行して動かすか否かである。日本メーカーは1つのプロジェクトのPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルをしっかり回して、その結果を受けて次のプロジェクトに移行する。
一方の中国勢は、結果が出る前に別のプロジェクトを走らせる。電池の性能を評価する試験では、例えば充放電サイクルを数百回繰り返すと2~3カ月かかることが珍しくない。結果を待つか、並行して別のプロジェクトを仕込むか。この違いが大きい。
日本メーカーの事情としては、開発プロジェクトをいくつも走らせる余裕がない側面もある。
人手不足は大きな課題だ。人手とは単純な労働力という意味ではなく、電池の専門エンジニアの数を指す。電池は開発だけで3年ほどかかり、プロジェクト当たり50~70人ぐらい必要になる。いろいろな種類の材料系のリチウムイオン電池を改良しつつ全固体電池なども手掛けていると、70人単位のプロジェクトがいくつもできてしまう。
現実的に、電池の専門エンジニアを増やすのは容易ではない。少ない人員でも開発業務を回せるように、根本から仕組みを見直していく必要がある。
開発業務の効率化で難しいのはどこか。
まず、電池は開発や生産など、各プロセスで高い専門性を必要とする。加えて、開発が属人的でデジタル化されていない点も難易度を高めている。
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