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「このままでは14年かかる」、計画を止めた苦渋の決断 社長説得し再出発へ

日経XTECH / 3/12/2026

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Key Points

  • 西日本製鉄所(福山地区)を軸に、全製鉄所の基幹系刷新という大規模プロジェクトの技術的課題(前身メーカーごとのメインフレーム差など)と人材の奮闘が描かれている。

 ビッグプロジェクトの裏には必ず、数々の困難を突破してきた関係者たちの情熱が存在します。彼ら彼女らはいかに困難を乗り越えたのか。知られざる物語にスポットを当てる新コラム「不撓不屈」。毎週木曜日公開です。

製鉄所業務プロセス改革班の西圭一郎(中央)と柏孝幸(右)。プロジェクトの成功へ2人は奮闘した
製鉄所業務プロセス改革班の西圭一郎(中央)と柏孝幸(右)。プロジェクトの成功へ2人は奮闘した
(写真:人物はプロテック、背景はJFEスチール提供)
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 2020年から5年を超える月日をかけて進めてきたこのプロジェクト。しかし、本当のスタートはそこから遡ること4年、2016年だった。全製鉄所の基幹システムを共通化することを目指し走り始めた旧・製鉄所システムリフレッシュプロジェクト。西日本製鉄所(福山地区)を先頭に時間とコストをかけて進めていた。うまくいっていない――。製鉄所業務プロセス改革班の任に就いた西圭一郎は、ある決断を下す。(敬称略)

プロジェクトは2019年に大きなターニングポイントを迎えた
プロジェクトは2019年に大きなターニングポイントを迎えた
(出所:日経クロステック)
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全国の製鉄所・製造所は前身の会社によってメインフレームのメーカーが異なる
全国の製鉄所・製造所は前身の会社によってメインフレームのメーカーが異なる
(出所:日経クロステック)
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 「西さん、福山に来てください。理由は…来たらわかります」。

 業務が一段落ついたタイミングで少しのんびりしようと、帰省先の高知で迎えた土曜の朝。西が取った電話の向こうから聞こえた声には焦りがにじんでいた。

 ただ事ではない口調には、心当たりがある。西日本製鉄所(福山地区)で進めている全製鉄所基幹システム共通化のプロジェクトがうまくいっていないのではないか。西自身もシステムの設計書に目を通し、行く末を案じていた事案だ。

 点と点がつながったようだった。週が明けた月曜の朝、西の姿は福山にあった。

JFE、全製鉄所システム刷新 第1回 「システムごときに縛られたくない」、JFEスチールが全製鉄所の基幹系刷新 第2回 「このままでは14年かかる」、計画を止めた苦渋の決断 社長説得し再出発へ 第3回 仙台に響いた一本締め、物置小屋から始まった再出発(2026.03.19公開予定) 第4回 JFEスチール 福山地区のリベンジ、「破れた夢を取り返す」(2026.03.26公開予定)

 福山地区を皮切りに取り組んでいた旧・製鉄所システムリフレッシュプロジェクトは、2016年3月から約3年をかける計画で進行していた。もともと旧川崎製鉄と旧日本鋼管で稼働していた全国各地の製鉄所・製造所のシステムを共通化する。JFEスチールとしても当然過去に経験がない初めての挑戦だった。

 新たなシステムを一からつくるスクラッチ開発を前提とし、要件定義や設計を進めた。西が製鉄所業務プロセス改革班に加わり、プロジェクトの状況を知った2018年初めは、システムの全体像や機能を決める基本設計が終わった頃だ。

 急ぎ福山の地に赴いた西は、同じく製鉄所業務プロセス改革班で電話の声の主だった岸本航一郎(現製鉄所業務プロセス改革班(福山駐在)グループリーダー)と合流。以降、足しげく福山へ通い、システムの開発状況や設計書の中身の詳細を理解することに努めた。

 次第にプロジェクトが抱える課題と各製鉄所が持つ基幹システムの規模や機能がつまびらかになっていく。全貌を現した全製鉄所の基幹システムは、約2億ステップという途方もない規模だった。

 全国で稼働中の基幹システムは、これだけ膨大だということに気づいているのか――。全製鉄所のシステム共通化とは、この規模を刷新するということだ。とてもじゃないけど…。

 そんな思いが頭を巡る。国内最大の製鉄所とは言え、福山地区1カ所、さらにそのうちの1%程度にすぎない規模の機能開発に数年を要している現実。双方を突き合わせるとやらなければならないことが見えてきた。

 「夢を語るだけではだめだ」。プロジェクトを止める。それしかない。

 とはいっても、社として投資計画を立て、既に少なくない金額と月日をかけてきたプロジェクトだ。安易に中断を宣言できるわけがない。「まずは現状をきちんと把握しよう」。プロジェクトを止めて別の方法を探るにしても、そこからがスタートだと考え、調査に踏み出した。

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「プロジェクトの中断を決心」

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