60代の大きな強みとは ─ 老子と葉隠に学ぶ「忍ぶ恋」の理念
17年前、東京・銀座で9カ月間にわたり、毎月1回のセミナーを開催しました。
タイトルは――
「忍ぶ恋 ~兵法マーケティングを楽しむ会~」
「孫子の兵法」をマーケティングに応用する内容でしたが、
この「忍ぶ恋」という言葉は、葉隠から取ったものです。
「忍ぶ恋」とは何か
『葉隠』を口述したのは、佐賀藩(鍋島藩)の藩士、
山本常朝。
彼は主君・鍋島光茂の死に際し、殉死を願いましたが、
当時は幕府によってそれが禁じられていました。
死ぬこともできず、彼は出家し、
佐賀・金立の地で隠遁生活に入ります。
しかし――
彼は主君への思いを、生涯一度も言葉にすることはありませんでした。
ただ、抱き続けた。
これが「忍ぶ恋」です。
言葉にしない。
しかし、消えることもない。
この“見えない強さ”こそが、
本来、マーケティングの中心にあるべきものだと私は考えています。
言葉にできるものは、本物ではない
老子はこう言います。
「道の道とすべきは、常の道にあらず」
言葉で説明できるような「道」は、
本当の「道」ではない、という意味です。
山本常朝の忠誠心も同じです。
言葉にできるようなものではなかった。
にもかかわらず――
企業は「理念」を言語化しようとします。
本来、言葉にできないものを、あえて言葉にする。
だからこそ、
その裏に“本物の思い”がなければなりません。
形だけの「理念」や「社是」は無意味です。
60代の再起動に必要なもの
人生経験を重ねた60代。
喜びも苦しみも知っているからこそ、
思いの“深さ”は若い頃とは比べものになりません。
ただ、その思いは――
簡単には言葉にできない。
一方で、今の時代、行動は軽やかさが求められます。
思いは深く、フットワークは軽く。
このバランスが大事です。
自分の中に何が残っているか
60代の経験の多くは、
今の時代から見ると古く見えるかもしれません。
たとえば、飛び込み営業や電話営業。
かつては当たり前でしたが、今は難しい。
しかし――
本質は変わっていません。
困難に直面したとき、
支えてくれるのは誰か。
それはAIではなく、やはり「人」です。
私自身もそうでしたし、この感覚、60代は知っているはず。
これは大きな強みです。
理念の核、つまり、「人」とつながることの大切さは、
すでに自分の中にはっきりとある。
そういう意味では、
事業の8割は、もうできている
とも言えるのです。
事業とは、
人とのつながりを作ること
だからです。
誰に、何を提供するのか
「ターゲットを絞れ」とよく言われます。
しかし、これは誰にでもあてはまる“正解”ではありません。
たとえば――
世界レベルの技術を持つ脳外科医が、
地域だけを対象にしていたらどうでしょうか。
明らかに機会損失です。
一方で、
幅広い知識を持つ町医者であれば、
地域密着の方が価値を発揮できます。
大切なのは、
自分の本質に合った届け方を選ぶこと。
そしてその中心に、
山本常朝のような「忍ぶ恋」の思いがあれば――
顧客は、追いかけなくてもやってきます。
“見えない思い”を軸に
言葉にしない。
しかし、確かに存在する。
この“見えない思い”を軸にして、
事業を組み立ててみてください。
それは、テクニックではなく、
生き方そのものが伝わるマーケティング
になります。
「忍ぶ恋」――
その静かな強さが、すでにあなたの中心にあるはずです。
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