清水建設と北海道大学が共同開発した「DAC(ダック)コート」は、既存のコンクリートに塗るだけで二酸化炭素(CO2)を多く吸収・固定できる含浸剤だ。大気中のCO2を吸収する量が塗布前のコンクリートに比べて、最大2.5倍に増える。含浸剤による保護膜で、鉄筋の耐食性も向上する。
清水建設と北大は2026年3月5日、東京・品川の「品川区第3庁舎」の耐震壁で実施した試験施工を報道陣に公開した。同庁舎の建て替え工事が始まるまでの約3年間で経過を観察し、CO2の固定量を調べる。清水建設技術研究所建設基盤技術センター革新材料グループの齊藤亮介研究員は、「建物や構造物をはじめとしたコンクリートストックを有効活用するための技術という位置付け」と説明する。
DACコートはCO2を吸収する性質を持つアミン化合物を主成分とする無色透明な塗料だ。コンクリートは常に大気中のCO2を少しずつ吸収しているが、DACコートを塗ることでアミン化合物を浸透させて吸収スピードを速められる。吸収したCO2は炭酸カルシウムとして固定する。
鉄筋コンクリート(RC)にCO2が侵入すると中性化が進み、鉄筋が腐食するリスクが高まる。それをアミン化合物の防食作用で遅らせる。鉄筋に保護膜をつくり、腐食の進行を抑える。
清水建設と北大は22年5月にDACコートの基礎的なメカニズムを発表した。その後、コンクリート構造物のモックアップを用いて30種類の異なる条件下で検証を続けた結果、塗布しない場合に比べて最大2.5倍のCO2を固定できる含浸剤を開発した。防食性能は鉄筋が腐食する速度を5分の1以下に抑えられた。
実験と並行して製品開発を進め、30年ごろには事業者に外販を予定している。既存の含浸剤の販売価格を参考にして、塗布面積1m2当たり5000円以下の設定を見込む。普及のため、DACコートを塗った後のCO2固定量を建物や街区単位で算出して見える化するシミュレーターも開発している。CO2排出量計算ツールの開発・運営を手掛けるスタートアップのゴーレム(東京・千代田)の協力を得た。
清水建設技術研究所の齊藤研究員は、「まずは自社案件で活用していくことになるが、いずれは一般家庭でも使えるようにホームセンターなどで購入できる製品にしたい」と語る。
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大気中の低濃度CO2を吸収する技術はまれこの記事は有料会員限定です







