AI(人工知能)データセンターの電力を削減する技術として、電気回路の一部を光回路に置き換える「光電融合」技術への投資が集中している。来たる巨大市場のサプライチェーン(供給網)に食い込まんと野心を燃やす日本企業がいる。新光電気工業(長野市)だ。
同社は「光電融合OSAT(後工程受託企業)」になる目標を掲げ、部素材や実装技術の開発に注力する。これまで連携してきたNTT以外の企業からも光電融合製品の製造を請け負いたい考えだ。事業開発の指揮を執る執行役員開発統括部長の荒木康氏に戦略を聞いた。(聞き手は石橋拓馬、久保田龍之介)
光電融合の後工程事業では台湾積体電路製造(TSMC)が先陣を切った。巨大な競合に対してどう挑むか。
TSMCに真っ向勝負して勝とうとは考えていない(図1)。TSMCが受託しない案件を狙う。例えば、スタートアップ企業の製品や開発試作品などの生産数が少ない案件だ。今後、光電融合の最新技術であるCo-Packaged Optics(CPO)の製造需要はTSMCの生産能力を上回るだろう。TSMCへ委託できなかった顧客の受け皿になりたい。
既にTSMCに委託している米NVIDIA(エヌビディア)や米Broadcom(ブロードコム)にとっても、製造を1社に依存することは健全ではない。複数の調達先を確保したいと考えているはずだ。彼らからは、第2、第3の製造委託先として当社を選んでもらえればよい。
CPOはまだまだ萌芽(ほうが)したばかりの技術なのに、TSMCが製造を独占してプレーヤーが限られてしまう状況は、楽しくないし盛り上がらない。当社は、基板設計の自由さや手厚いサポート体制などTSMCにはない魅力を前面に押し出していく。共感してくれるパートナーを増やして、サプライチェーンを構築していきたい。
光電融合事業への参入に向けた土壌はあるのか。
当社は、半導体パッケージを主力製品とする部材メーカーでありながら、IC(集積回路)チップをパッケージ基板に実装する組み立てや、検査を手掛けるOSATとしての顔も持つ。
光を取り扱うノウハウもある。ゲームや携帯電話機向けのカメラモジュールや光通信用の光学部品を製造してきた。レンズの位置合わせなどに使うアクティブアライメント装置など、光実装に必要な生産設備を内製できる。
今がまさに、社内技術を結集させるときだ。電気と光の実装技術を組み合わせれば、CPOの設計から組み立て、検査まで一気通貫のサービスを提供できる。大きな市場の中で、サプライチェーンにしっかりと食い込んでいきたい。
CPOでは、電気と光を相互変換するためのPIC(光集積回路)チップと半導体チップを1つのパッケージ基板に実装する(図2)。CPO製造において特に難しい工程は、PICへの光ファイバーの接続である。これまでの光学製品より1桁以上高い位置合わせ精度が要求される。ただ、半導体チップの実装に使う位置合わせ技術と、アクティブアライメント装置の調心技術を組み合わせることで実現できる自信がある。目下開発中だ。
次のページ
具体的にはどのような事業戦略を立てているか。主に...この記事は有料会員限定です


