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設計の外注にメス、取適法「プラスの影響」ゼロ 土木・建築28社に独自調査

日経XTECH / 3/17/2026

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Key Points

  • 2026年1月施行の中小受託取引適正化法(取適法)が設計・調査の外注にも適用され、価格決定と支払いルールの厳格化が進む。
  • 図面作成などの外注も対象となり、受託事業者と委託事業者の関係が「下請け/親」という言葉の使用廃止とともに再定義される。
  • 日経クロステックの独自調査で主要28社の外注比率はおおむね2〜3割、外注費の増大が企業経営に重い負担となる可能性が指摘される。
  • 価格交渉を拒否した場合の違法性や取引条件の透明化が強化され、受託事業者の賃金向上につながる一方、設計・建設業界のコスト構造に影響を与える見通し。

この記事の3つのポイント

  1. 下請法改め中小受託取引適正化法(取適法)が施行。価格決定プロセスにメス
  2. 建築設計事務所や建設コンサルタント会社による設計・調査の外注は取適法の対象
  3. 土木・建築各社への影響は? 主要28社を対象に日経クロステックが独自調査を実施

 建設工事の取引を規制する改正建設業法に続き、下請法を改正した中小受託取引適正化法(取適法)が2026年1月に施行し、設計・調査業務の支払いにもメスが入った。受託事業者からの価格交渉を拒めば違法となる。改正に対する土木・建築各社の反応を独自調査した。

(イラスト:勝田 登司夫)
(イラスト:勝田 登司夫)
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 「受託事業者に我々(委託事業者)が選んでもらう時代に入っている」

 建築設計事務所大手・日建設計コーポレート部門の阿部恵三経理部長はそうこぼす。同社は設計図面の作成や模型の制作などデザインに関わる業務を外注しているが、「この2、3年で受託事業者の人手不足が深刻になった」(阿部経理部長)。受託事業者を同業他社と取り合う状況が生まれているという。

 下請代金支払遅延等防止法(下請法)を大幅に改正した中小受託取引適正化法(取適法)は、受託事業者優位の売り手市場に拍車をかける可能性がある。同法は26年1月1日に施行。価格決定プロセスの適正化を図る新たなルールを幾つも導入した。

 取適法では、これまでの「下請け」という用語を廃止。「下請け事業者」は「中小受託事業者」に、「親事業者」は「委託事業者」になった。下請けや親といった言葉が上下関係を連想させるとして一掃した。建設工事には建設業法が適用されるが、建築設計事務所や建設コンサルタント会社、測量・調査会社に加え、建設会社も図面作成などの業務委託は取適法の対象となる。

(出所:日経クロステック)
(出所:日経クロステック)
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 従来の資本金に加え、新たに従業員数の基準を設けた。例えば従業員数300人超の委託事業者が、個人を含む300人以下の受託事業者にCAD(コンピューターによる設計)などの電子データの形式で図面の作成を発注する場合、取適法の対象となる。

 禁止行為には、協議に応じない一方的な代金決定を追加した。従来の不当な減額や買いたたきに加え、受託事業者から価格交渉の求めがあったにもかかわらず、交渉に応じなかったり必要な説明をしなかったりして、一方的に価格を決定することを禁じた。この他、手形による支払いや振込手数料を受託事業者に負担させることを禁じるなど、代金支払いのルールも厳格化した。

受託事業者の価格交渉しやすく

 「受託事業者の賃金を上げる。そのために価格交渉をしやすくする。そういう趣旨の改正だ」。公正取引委員会事務総局企業取引課の柴山豊樹課長はこう説明する。取適法により受託事業者からの価格交渉・転嫁圧力が強まれば、図面作成などを外注する建設コンサルタント会社や建築設計事務所の利益を押し下げる要因となり得る。

 日経クロステックが25年に実施した調査で、建築設計事務所の外注費を尋ねたところ、回答した会社の多くは外注比率(外注費を総売上高で除した値)がおよそ2~3割だった。建設コンサルタント会社でも、大手では同程度の会社が多い。例えば、オリエンタルコンサルタンツは「2~3割くらい」(同社の江藤和昭取締役事業管理本部長)という。

 外注比率が3割の場合、総売上高300億円だと外注費は90億円となる。外注費の増大は土木・建築各社の企業経営にとって、重い負担となることが分かる。

 では、土木・建築の主要企業は取適法をどう捉えているのか──。日経クロステックは売り上げ規模が大きい建設会社10社、建設コンサルタント会社10社、建築設計事務所10社を対象にアンケートを実施。26年2月25日までに計28社から回答を得た。内訳は建設会社9社、建設コンサルタント会社9社、建築設計事務所10社だ。

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価格交渉の頻度は?85%が同じ回答

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