この記事の3つのポイント
- 改正建設業法では、適正な労務費の支払いについて発注者にも責任が課された
- 民間請負契約約款も改正。建設業団体と国土交通省が民間発注者に活用を働きかけている
- 発注者のための「コミットメント制度」が新設。労務費支払いの透明化を目指す
改正建設業法の新しいルールは工事の発注者にも課される。必要な労務費を著しく下回る金額での契約締結は禁止された。一方で労務費に関する情報開示を請求できる「コミットメント制度」も導入された。改正建設業法が発注者に及ぼす影響を解説する。
「(民間の建築工事で)発注者は10年前に比べて2倍、3倍の建設費を払っている場合もあるが、建設技能者に今までと同じ金額しか行き渡らないとすれば誰が受け取っているのか、という話になる」
改正建設業法が目指す適正な労務費についてこう言及するのは、発注者側に立ってコンストラクションマネジメント(CM)を手掛ける山下PMCの丸山優子社長だ。国土交通省が中央建設業審議会(中建審)に設けた労務費の基準に関するワーキンググループに委員として参加した。
2025年12月12日に全面施行した改正建設業法では、請負契約の段階で適正な労務費を明示し、それが途中で減らされることなく、下請け会社に支払われ、最終的に技能者へ賃金として行き渡らせることを目指している。違反行為の勧告・公表対象には、実は発注者も含まれる。
民間工事の契約約款を改正
国交省は業界の商習慣転換に向けて、自身も発注者として関わる公共工事にとどまらず、民間工事の契約にも踏み込む。建設業法の改正を踏まえて、中建審は民間建設工事標準請負契約約款を改正。これに対応するよう民間7団体で作成する民間(七会)連合協定工事請負契約約款も改正された。どちらも建設業界で一般的な民間工事の請負契約約款(民間請負契約約款)だ。
「20年の民法改正以来、およそ5年ぶりの大きな改正となった」。民間(七会)連合協定工事請負契約約款委員会が開いた約款の説明会で、後藤伸一副委員長(ゴウ総合計画代表取締役)はこう説明した。
民間請負契約約款はどのくらい活用されているのか。2024年度に国交省が実施した調査によると、民間請負契約約款を準用または一部修正して使用する割合は、受注者で約62%、発注者で約39%にとどまる。十分とはいえない状況だ。
建設業界を挙げて民間の発注者へ新たな約款の活用を促す。日本建設業連合会や全国建設業協会、全国中小建設業協会と国交省が連携して、民間請負契約約款の普及に向けたリーフレットを作成した。受発注者双方に協議の円滑化や法令順守といった点でのメリットがあることを説明し、受発注者間の契約関係を見直すよう働きかける。
2つの約款は表現で多少異なる点はあるものの、建設業法の改正内容を反映している。主に3点改正した。
1つは請負代金内訳書に労務費や材料費、法定福利費、安全衛生経費、建設業退職金共済(建退共)を明示すること。2つは受注者と下請け会社間の労務費の支払いに関する書類の写しなどを発注者が請求できるコミットメント制度に関する項目を新設したこと。3つは工期延長や代金変更などの契約変更を請求できる理由に、資材の供給不足や高騰を追加したこと。
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