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「旧香川県立体育館」解体費差し止め請求訴訟、県は解体着工か

日経XTECH / 3/16/2026

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Key Points

  • 第1回口頭弁論が高松地裁で開かれ、旧体育館の解体費用の公金支出差し止めを求める訴訟が進展。
  • 原告は耐震性と支出の妥当性を争点に、建物の保存・再生を県に提案していた経緯を指摘する。
  • 被告の県は建物の倒壊リスクを挙げ、解体工事着工を3月末にも開始したいと説明し、全面対立姿勢を表明。
  • 解体費用は約8億5000万円、県はすでに工事請負契約を締結し解体準備を進行中。
  • 将来的には文化財指定・観光資源としての活用可能性もあるが、現状は解体と保存の選択が対立している。

 建築家の丹下健三が設計した「旧香川県立体育館」(1964年竣工)の解体にかかる公金支出の差し止めを求める住民訴訟の第1回口頭弁論が2026年3月10日、高松地方裁判所で開かれた。

 原告の旧香川県立体育館再生委員会側が目指すのは、文化的な価値が高い歴史的建造物の保存・再生だ。これに対して被告の香川県側は今回の口頭弁論で、大地震などによる建物の倒壊の恐れがあることを理由に、26年3月末にも解体工事に着工したい意向を明らかにした。全面的に争う姿勢が鮮明になった。

 原告は「十分な協議や検討を行わないまま、県が多額の公金を支出して解体を進めることは違法だ」と主張している。訴状では「県の重要な観光・文化的資源を公金を用いて毀損し、将来にわたり香川県に対し回復困難な損害を与える」「最小経費最大効果の原則(地方自治法第2条第14項)、必要最小限度支出の原則(地方財政法第4条第1項)に反し違法である」としている。

 閉廷後の記者会見で、再生委員会の長田慶太委員長は、「耐震性と支出金額の妥当性を問うのが訴訟の2本柱だ。我々が開示を求めていることに県がどう向き合うかが、解体工事の着工時期に表れる」とし、建物を現状維持したまま裁判を続ける姿勢を県に求めた。

閉廷後に開かれた原告の記者会見。右が旧香川県立体育館再生委員会の長田慶太委員長。その隣が代理人を務める渥美坂井法律事務所・外国法共同事業の西山喬祐弁護士(写真:有岡 三恵)
閉廷後に開かれた原告の記者会見。右が旧香川県立体育館再生委員会の長田慶太委員長。その隣が代理人を務める渥美坂井法律事務所・外国法共同事業の西山喬祐弁護士(写真:有岡 三恵)
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 原告側の西山喬祐弁護士は、「解体を止めるのが難しいことは理解している。それでも裁判の中で、すぐに倒壊する危険性がないことを明らかにできれば、解体の必要性はなくなる。1つずつ事実を明らかにしていきたい」と話した。

 この裁判は、地元の建築家らでつくる再生委員会の長田委員長が、県を相手取って訴えを起こしたものだ。25年11月27日付で高松地裁に、池田豊人県知事を被告とする旧体育館の解体費用等の支出の差し止めを求める住民訴訟を提起した。

 再生委員会は25年7月、旧体育館の建物を民間資金で買い取ってホテルなどに再生し、利活用するプランを県に提案した。当時、約10億円の解体費用を予算計上していた県にとっては、多額の公金支出をせずに建物を売却でき、文化財に指定される可能性もある旧体育館を保存できる道が開けた格好だ。観光資源にもなり、経済効果を得られる可能性もあった。しかし県は解体の方針を崩すことなく、解体工事の準備を進めてきた。

 県が25年9月に実施した一般入札では、地元の合田工務店(高松市)が解体工事を落札した。解体費用は約8億5000万円。25年12月11日に開かれた香川県議会で可決され、県は既に合田工務店と工事請負契約を締結済みだ。

 旧体育館の保存・再生について、再生委員会は県に再三、協議を求めてきたが、要望はかなわなかった。25年9月5日付の住民監査請求も棄却され、やむなく公金支出の差し止めを求める訴訟へと議論の場を移すことにした。

 口頭弁論で被告は、原告との協議に応じてこなかったのは、「認識や主張が大きく異なり、公開議論をしても効果があるとは考えられないため」と説明した。

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耐震性能の再検証なく解体を進めるか

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