2025年7月、第一生命保険は東京・京橋の交差点に鉄骨造と木造のハイブリッド構造を持つ賃貸オフィスビルを完成させた。ハイブリッド構造は、宇都宮市内で東邦銀行とともに2022年9月に完成させた共同ビルに続く第二弾だ。生命保険会社であり機関投資家でもある同社はなぜ、木造ビルの開発に挑戦するのか。原点とここまでの取り組みを取材した。
東京・京橋の一等地の交差点に立つビルは目立つ。地上12階建ての「第一生命京橋キノテラス」はまさに、その立地特性をふんだんに生かしたビルだ。道路上から見上げると、カーテンウオールのガラス越しに、鉄筋コンクリート製のスラブに型枠兼化粧材として用いるCLT(直交集成板)がよく見える。
延べ床面積約1万6151m2に対して、木材使用量は約1100m3。第一生命保険では、木材使用量の多さにこだわりを持つ。同社不動産部不動産開発課長の松永崇氏は「二酸化炭素(CO2)の排出削減効果の観点から、木材使用量にこだわった」と説く。
スラブのほか、柱・梁(はり)や耐震壁といった主要構造部にも、集成材やCLTといった木材と、鋼材や耐火被覆用の石こうボードを組み合わせた部材を用いる。第一生命の試算によれば、同規模の鉄骨造オフィスビルと比べて、炭素貯蔵効果を加味したCO2削減効果は約37.5%に達するという。
使用木材は全て国産材となる。8都県の産地から調達した。「計画当初は産地を特定して調達したいと考えたものの、コストに響くことがネックになった。結果として産地を特定したのは、地元東京産の多摩産材にとどめた」(松永氏)
不動産投資での木材活用に対するこだわりは、どこから生まれたのか。源流には、事業の根幹に置くサステナビリティー重視の姿勢がある。
第一生命のコア事業は個人・団体向けの保険サービスの提供だ。契約者からの保険料を原資として運用する。保険サービスの提供者、資産を運用する機関投資家、2つの顔を併せ持つ。「保険サービスの提供はもとより、機関投資家としてもサステナビリティーを根幹に置いている」。同社不動産部長の堀雅木氏は第一生命の基本姿勢をこう語る。
資産運用におけるサステナビリティーとは、運用収益の確保という経済的な側面と、社会価値の向上という社会的な側面を同時に達成することを指す。「企業として安定的な事業運営を続けていくには、短期的な収益の確保を追い求めるだけでなく、長期的に安定した社会を構築していく必要もある」(堀氏)





