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博士人材の真価、8大学の工学系連合会に聞く 「ビジネスでの信頼度違う」

日経XTECH / 3/21/2026

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Key Points

  • 日本の博士人材活用を政府の対策班設置やガイドブック作成など政策動向が後押ししており、産学連携が本格化している。
  • 産業界での博士号保有者の活用は役員の信頼度向上などビジネス上の価値に直結すると企業の事例から指摘されている。
  • 博士課程の訓練は課題発見や仮説検証能力を育て、研究以外の現場でも難題解決の力になると企業は評価している。
  • 北海道大学と富士通の取り組みのように、博士人材のキャリア教育を大学院の共通科目として導入する動きが進む。
  • 八大学工学系連合会は第8回公開シンポジウムなどを通じ、博士人材の活用促進と処遇改善を政策提言していく方針を示している。
全国8大学の工学部が博士人材活用の課題を議論する(出所:八大学工学系連合会)
全国8大学の工学部が博士人材活用の課題を議論する(出所:八大学工学系連合会)
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 日本で博士人材の活用に向けた動きが活発化している。文部科学省は2024年に博士人材の活躍を推進する対策班を設置し、経済産業省は2025年に指針となるガイドブックをまとめた。民間企業での博士人材の採用や活用を促進する。

 経産省の調査によると、日本の研究者に占める博士号取得者の割合は米国の半分以下で、産業界で活躍する博士人材は少ないという。人口100万人当たりの博士号取得者の数も2010年からほぼ横ばいで推移している。

英国は人口当たりの博士号取得者が最も多く、日本の約3倍だ(文科省の資料を基に日経クロステックが作成)
英国は人口当たりの博士号取得者が最も多く、日本の約3倍だ(文科省の資料を基に日経クロステックが作成)
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 こうした状況を打破するため、博士号取得者が産業界で活躍できるように支援する産学連携の取り組みが本格化し始めた。北海道大学と富士通は2025年度から、大学院の共通科目としてキャリア教育科目を開講した。博士課程の学生が産業界でのキャリアを切り開く力をつけるのを助ける。

 旧帝国大学を含む全国8大学の工学部をとりまとめる八大学工学系連合会は、博士号取得者の活用や処遇改善に向けた政策提言などを担う。2026年3月27日には博士人材の活用に関する第8回の公開シンポジウムを東京大学で開催する。同連合会会長の山本元司氏(九州大学教授兼工学研究院長)に、博士人材の重要性や日本における博士活用の課題を聞いた。

企業が博士取得者を採用する価値はどこにあるでしょうか。

 ひとつはビジネスにおける信頼度が違うことだ。例えば、海外でビジネスを展開する企業は役員が博士号を持っているかが対外的な信頼に関わる。実際、ある企業では役員に急きょ博士号が必要となり社会人博士として入学するケースがあった。技術者がスタートアップを立ち上げる際なども、博士号を持っているかがビジネスの信頼度に直結する。

 もうひとつは博士が訓練された優れた人材だということ。博士課程で鍛えられた課題発見や仮説検証に優れた研究力は研究以外でも役に立つ。人の数を増やしても対処できない難しい問題にこそ生きる。企業はそういう真にイノベーションを起こす人材の重要性を認識している。

山本氏は博士人材活用の重要性を説く(写真:日経クロステック)
山本氏は博士人材活用の重要性を説く(写真:日経クロステック)
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