政府は2026年4月7日、個人情報保護法の改正案を閣議決定し、国会に提出した。法改正案は「連絡可能個人関連情報」といった複数の新たな情報の類型が増えており、事業者の実務担当者らにとって分かりづらく実務上の混乱を招く恐れがある。
個人情報保護法には3年ごとに海外の動向やITの進展、新たなビジネスの状況を勘案して見直す「3年ごと見直し」と呼ばれる規定がある。個人情報保護委員会(個情委)は今回の見直しの検討を2023年11月に始めて以来、ようやく法案の提出にこぎ着けた格好だ。
法案の大きな柱の1つは、特定の個人に影響しないデータ活用をしやすくする「同意規制の見直し」である。AI(人工知能)の開発などで特定の個人との対応関係がない統計分析の結果のみを利用する「統計特例」の場合、複数の事業者が個人データを第三者提供してもデータの対象者となる本人の同意を不要にする。
従来の個人情報保護法は個人データを第三者提供する場合、一律に「同意を得れば問題ない」といった制度設計だった。データの対象になる本人への影響やリスクなどに応じた規律に転換する。事業者はAI開発にデータを利用しやすくなる。
法案のもう1つの柱は、課徴金制度の導入などによるデータ利用の「入り口規制」から「出口規制」への転換だ。新たな課徴金制度は、事業者が必要な注意を怠って個人のプライバシーの侵害や侵害される具体的な恐れが生じた大規模事案が対象だ。
個人情報ではないのに個人に直接影響を与える類型
一方で、今回の法案では個人に関する情報の類型が増えた。「統計作成等用要配慮個人情報」「特定生体個人情報」などが新たに加わったほか、「連絡可能個⼈関連情報」という類型も新設して規律を定める。
統計特例ではインターネット上に公表されている要配慮個人情報をWebスクレイピングによって取得する場合も、AI開発といった統計情報などの作成にしか使わない場合は同意不要になる。このため統計作成等用要配慮個人情報として、統計の作成といった個人の権利利益を害する恐れが少ないものを個情委規則で定める。
また特定生体個人情報は、顔識別といった本人が取得されていると容易に認識できない身体の一部の特徴の個人識別符号のうち、政令で定めるものなどとしている。本人が撮られていると知らずに識別して永久に追跡(トラッキング)する道具にも使えてしまうため、顔認証のために本人が了解して取得する場合を除き、本人がオプトアウト(利用停止)を請求できるようにする。オプトアウトの手段を提供するだけで顔特徴データなどを第三者に提供することは禁止する。
こうした今回の法案で、複数の専門家が分かりにくさを特に指摘するのが連絡可能個⼈関連情報である。
「個人関連情報」とは、個人情報や匿名加工情報、仮名加工情報のいずれにも該当しない個人に関連する情報だ。電話番号のみや、氏名が入っていないメールアドレス、Cookie(クッキー)などが該当する。
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