
この「極言暴論」を毎週書き続けて既に13年が過ぎた。その間、日本企業のIT/デジタル活用のでたらめさやDX(デジタルトランスフォーメーション)の駄目さ加減、そんな企業を客とするSIerの人月商売の大問題などを、手を替え品を替えて「暴論」してきた。もちろん、その意図は日本企業のIT/デジタル活用やシステム開発が少しでもまともなものとなり、客の企業やSIerを問わずビジネスの変革を実現してほしいからだ。だけど、これまで一貫して無視してきた企業群がある。
それは、人月商売の多重下請け構造に連なる人売りベンダーだ。人売りベンダーについての説明は、極言暴論の読者なら不要と思うが、今回は話の都合上、下請けベンダーをなぜ人売りベンダーと呼ぶのかを簡単に説明しておく。こうしたITベンダーは、SIerがパートナーと呼ぶ手配師ベンダー(人売りベンダーでもある)から仕事をもらって、人月商売にいそしむ。案件によっては、他の人売りベンダーから仕事をもらって3次請けになるほか、4次請け、5次請け、6次請けなんてケースもある。まさに多重下請けである。
システム開発などの場合、SIerが客の企業と結ぶ契約は主に請負契約で、当然のことながらシステムの完成といったプロジェクトを完了する責任を負う。一方、人売りベンダーは他の人売りベンダーなどから仕事をもらうが、その際に結ぶ契約はSES(システム・エンジニアリング・サービス)契約だ。完成責任などは負わず、一定の期間、技術者を労働力として送り込むことを約束するのみだ。まさに「ザ・人月商売」であり、人売りベンダーとやゆされるゆえんである。
しかも多重下請け構造のため、いわゆる「ピンハネ」が常態化している。SIerは客の企業と契約した額よりも、低い人月単価で手配師ベンダーに仕事を出す。手配師ベンダーは人売りベンダーに対してさらに低い単価で仕事を出し、その人売りベンダーは……といった形で、多重下請け構造の底辺に行けば行くほど単価は下がっていく。最近はあまり聞かなくなったが、下請けで契約しても自社の技術者は一切出さずにピンハネだけして、そのまま他の人売りベンダーに下請けに出すといった、ひどい話もあちらこちらにあったな。
そんな訳なので、プログラムを書かないSIerの技術者と異なり、人売りベンダーの技術者は全体的に安い給与水準に留め置かれている。まさに人月商売のIT業界の多重下請け構造や人売りベンダーの商売は、古典的な「搾取」の構造にあるといってよい。だから私は、SIerにはご用聞きではなく、プロダクトやソリューションで勝負するITベンダーに変わってほしいと思っているが、人売りベンダーに対しては一刻も早く消え去るべしと言い、そこに勤める技術者には可及的速やかに逃げ出してほしいと言ってきた。
要するに記事の冒頭に書いた通り、一貫して無視した上で「早く消え去れ」と主張してきたわけだ。だけど最近、少し考えが変わった。人売りベンダーは経営者が愚かであっても技術者集団だ。そして、これからはAI(人工知能)の時代だ。人売りベンダーの経営者が本当に悔い改めて人売り稼業からの脱却を目指すならば、AI駆動開発を実践してSIerに一泡吹かせる、いや「下克上」を狙うことも可能になってきた。なんせSIerの技術者と違い、人売りベンダーの技術者は客の現場にへばりついているからな。客の企業と直で契約することも可能だぞ。
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