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OpenAIは2026年3月5日(米国時間)、「Microsoft Excel」(以下、Excel)のアドイン(拡張機能)「ChatGPT for Excel」β版の提供を開始した。Excelワークブック内で「ChatGPT」を直接利用でき、財務モデルの構築や更新、シナリオ分析(複数の仮定条件に基づく予測比較)、セル・数式に基づく分析結果の生成が可能になる。
投資銀行レベルの「財務モデル」を生成 エンタープライズ向けの管理機能も
ChatGPT for Excelは、OpenAIの最新モデル「GPT-5.4」(GPT-5.4 Thinking)を搭載しており、ChatGPT、AIコーディングツール「Codex」、APIから利用可能だ。
ChatGPT for Excelは、財務モデリング(企業価値や収益予測などを数式で表現する手法)、シナリオ分析、データ抽出、長文リサーチなど、金融アナリストが数時間から数日掛けて実施する実務ワークフローの支援を目的としたものだ。
OpenAIが投資銀行の業務を想定して作成したベンチマークでは、財務三表(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)を連動させた財務モデルの構築などのタスクで評価した結果、GPT-5での43.7%からGPT-5.4 Thinkingでは87.3%にパフォーマンスが向上したとしている。
ChatGPT for Excelの機能
アナリスト、ストラテジスト、リサーチャー、会計士などがスプレッドシート内で直接モデルを構築・分析・更新できる。主な機能は以下の通り。
- スプレッドシートモデルの高速構築・更新
- 自然言語で必要な内容を記述すると、ChatGPTがワークブック内で直接財務モデルを作成・更新する
- 大規模スプレッドシートからのインサイト取得
- 複数のワークブックをまたいで推論し、シートと数式の接続を理解する
- 出力結果がなぜ変化したのかを説明し、エラーを追跡して修正し、前提条件がモデル内でどのように影響を及ぼしているかを示す
- ロジックの追跡と出力の信頼性確保
- ChatGPTは作業内容を説明し、参照・更新するセルにリンクする。計算はExcel内で直接実行されるため、仮定の追跡、数式の監査、結果の検証が可能になる
金融データ連携
ChatGPT for Excelでは、FactSet、Dow Jones Factiva、LSEG、Daloopa、S&P Globalなどの金融データ連携がChatGPT内で直接利用可能になった。Moody's、MSCI、Third Bridge、MT Newswiresとの連携もリリースされた。
ChatGPTと連携する金融データプロバイダー一覧。S&P Global、LSEG、FactSet、Moody's、MSCIなど主要18社のデータをChatGPT内で直接利用できる(提供:OpenAI)また、MCP(Model Context Protocol)を利用して独自アプリケーションを構築することにより、プロプライエタリ(独自仕様)データのサポートも可能だ。
セキュリティとガバナンス
「ChatGPT Enterprise」プランでは、規制環境やデータ機密性の高い環境向けのセキュリティ、ガバナンス(管理体制)、アクセス制御機能を提供する。
- RBAC(Role-Based Access Control)、SAML(Security Assertion Markup Language)SSO、SCIM(System for Cross-domain Identity Management)、監査ログによるアクセス管理・監視
- TLS 1.2以上による転送中の暗号化、AES-256による保存時の暗号化
- データレジデンシー(データの保存場所)および地域処理コントロール
- デフォルト(既定)で、ChatGPT Enterpriseに共有されたデータはモデルのトレーニングや改善に使用されない
ChatGPT for Excelのβ版は、ChatGPTの「Business」「Enterprise」「Edu」「Teachers」「K-12」プランのユーザーにグローバルで順次提供される。「Pro」および「Plus」プランのユーザーについてはEU(欧州連合)圏外で提供される。
EnterpriseとEdu、Teachersプランでは、アクセスはデフォルトで無効になっており、管理者がカスタムロールとグループ権限で特定ユーザー向けに有効化できる。
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