この記事の3つのポイント
- AIで現場の業務が変わりつつある。システム開発では上流工程の能力をより重視
- AIツールの進化に応じ研修も見直す。サイボウズは2025年実施のDify研修を26年にやめた
- ソフトバンク営業は「初心者用」AIツール使用。富士通IT部門はOJT軸に21歳の新人伸ばす
AI(人工知能)時代の新人に求められるビジネス基礎力とAI活用力。配属後も育てたいスキルだ。この2つと、各業務で求められる能力や業務遂行のステップを、職場内訓練(OJT)を通じてリンクさせていく。個別業務技術の変化が激しいIT系分野の現場で新人を育成する企業を紹介する。具体的にはサイバーエージェント、サイボウズ、日立製作所、ソフトバンク、富士通の5社のエンジニア職、営業職、AI関連部門だ。
AIによってコーディングが容易になると、人間には目標設計や開発要件の定義といった上流工程の能力が求められるようになる。変化に合わせ、従来の新人研修をアップデートしているのがサイバーエージェントだ。エンジニアの新人研修で、責任者からのフィードバックや丁寧にロードマップを作成するといった項目を追加して2026年版にアップデートした。責任者の目線を学ぶのは「ビジネス視点やプロダクト視点を知ってほしい」(サイバーエージェントの上野貴史技術人事室新卒エンジニア採用担当2026年卒エンジニアコース新卒研修責任者)からだ。
エンジニアの新人研修は1カ月程度。思考力や判断力、期日を守る、などエンジニアとして求められるソフトスキルを磨く講義や、セキュリティー・AI利用に関する注意事項、AIを利用している自社のプロダクトなどを学ぶエンジニア基礎研修に加え、チーム開発を実践する。
チーム開発の研修はこのうち約3週間だ。研修前半には、チームで設計した内容を現場の責任者に見せてフィードバックを受ける。それを基に改善してからチームの担当メンターと顔合わせし、新人がスケジュール感やロードマップを説明して開発を進める。開発にはAIも用いてAI活用力も養う。
サイボウズ、Dify研修は取りやめ
サイボウズも、AIの進化に合わせて研修を更新し続けている1社だ。
同社はエンジニアの新人研修として、講義実習と実践演習を約1カ月かけて実施する。内容は幅広く、GitHub Copilotの活用法やソフトウエアライセンス、セキュリティー、自動テストなど様々だ。2025年にはAIツール開発ワークショップとして、生成AIアプリ開発ツール「Dify(ディフィ)」を取り扱った。
2026年は、AI活用面では「AIコーディング入門」として米Anthropic(アンソロピック)の提供する「Claude Code」を中心に扱うよう変更する予定だ。サイボウズ社内のAI推進チームである開発本部技術支援部AIやっていき副部の加瀬健太氏は「今の段階では(AIツールの中で)Claudeが優秀だ。『Claude Desktop』だけでワークフローの自動化がほぼできる。Difyは時代遅れになるかもしれない」と話す。同社は2026年のDify研修を取りやめた。
現場で扱うAIツールは進化し続ける。それに伴って、業務の進め方も変わる。この変化に応じた最先端の能力を新人に身に付けさせることが重要だ。企業は研修を常に見直し続けなければならない。
一方で、現場の新人研修には、AI時代でも変わらない要素もある。各社の新人研修を総括すると、「王道」と言える2つの要素が見えてきた。研修で一通り経験を積ませる、働きながらツールを使いこなすという方法論だ。各社ともこの王道を変えずに、AIによる業務の変化に応じたアップデートを重ねている。
次のページ
日立、エンジニア研修で一通りの開発実践この記事は有料会員限定です





