赤ちゃんの泣き声アプリの危険性
なんかねー・・・これ、ズレてる気がするんよ。あるいは、ズレていく気がするんよ。確かに赤ちゃんの泣き声、つらい。けどね、子育ては「赤ちゃんを元気に育てる」のが目的で、「いかに赤ちゃんを早く黙らせるか」と違うんよ。
このアプリ、AIに判断を預ける親が出るリスクがある。でもアプリが判断する材料は泣き声しかない。
子どもが寝ぐずりで泣いていると判断するには、
①お腹が減っているのではないか(ミルクをあげた時からどれだけ経っているか)
②ゲップは出たか、まだゲップしきれてないのか(もう一度アゴを肩に乗せて背中をトントンしてみる)
③オムツは濡れていないか
④どこか痛そうなところはないか(抱いてみて、触る所によって泣き声が強まるか)
⑤元気か(泣き声がか細くなっていかないか)
⑥鼻づまりしてないか(鼻が詰まったときの泣き声か)
⑦手先足先が温いか(①〜⑥をチェックした上で手先が温ければ寝ぐずりの可能性が高い)
などのチェック項目を、実際に触って抱いてあやして確かめることでようやく「寝ぐずりの可能性が高い」と判断できる。しかしこれでも「可能性が高い」までしか言えず、常に別の可能性が残されていることを意識に残しておく必要がある。急変にすぐさま対応するためにも。
アプリはオムツの様子をみることもできなければ抱くこともあやすこともできない。音声しか判断材料がない。そもそも、言葉がある程度話せるようになった幼児でさえ、自分の症状をうまく伝えられず、小児科は苦労するというのに、言葉を話せない赤ちゃんの泣き声ですべてがわかるかのように捉える人が出るのは、危険すぎやしないか。
言葉が話せるようになった幼児でさえ、自分の尿意や便意を把握することが十分でない。「出る」と思った時にはもう我慢できないほどになっていたりする。尿意便意のわずかな兆候を感じとることができるようになるには、ある程度の年齢をかさねる必要がある。オネショが起きるのは、尿意を先んじて察する能力が低いという点にも原因があるように思う。
幼児でさえそうなら、赤ちゃんはもっとそう。自分の不快感がどこから来ているのか、言語化はもちろん、その感覚の正体さえもわからない。そもそも赤ちゃんは、自分の手がどこにあり、どう動くのかも最初は把握できていない。手が勝手に動くようにプログラムされていて、そのために自分の顔をツメでひっかき傷だらけにしてしまう。やがて「手からの感覚がこういう時に顔が引っかかれて痛い」というのを学習し、次第に顔を引っかかなくなる。このように赤ちゃんは、自分の感覚を把握することすら難しい、あいまいな感覚世界の中で生きている。そんな赤ちゃんの声からすべてを診断できる、というアプリの思想に危うさを感じる。
何より、親が子どもの異常を察する能力を育てられなくなることが危険。赤ちゃんが泣いた時に、そのつど必要なチェック項目を確かめ、試行錯誤することで赤ちゃんの状態を把握できるようになっていくもの。AIに頼ったら試行錯誤が行われなくなり、赤ちゃんの危機を察することがかえって難しくなる恐れがある。
赤ちゃんの泣き声問題は、「人数」で改善を図ることが非常に大事。ところがこのアプリは「できれば母親単独のワンオペで赤ちゃんの面倒を見られるように」という発想がへばりついているように思う。しかし赤ちゃんの子育てを1人に押しつける発想そのものに問題がある。赤ちゃんを無事に元気に育てつつ、親御さんたちの負担を軽くするには、「人数」が必要。「アプリがあるから1人で頑張れ」ではない。
武田信子さんが、こうしたアプリの登場に懸念を示している。子育て環境の改善につながるどころか、ワンオペを進める方向へと押しやるのではないかと心配しているご様子。
こうした技術を研究として進めるのはアリだが、「使えるアプリ」のつもりで提供するなら、方向性が間違っている。繰り返すが、赤ちゃんは自分の身に起きていることを把握することができるほど、経験知識を持ち合わせていない。自分の感覚さえもよく分からない不分明な状態からスタートしている。そんな赤ちゃんの泣き声からすべてを察することができるかのように誤認させるアプリの紹介は、危険な側面を持つ。
武田さんと同じ懸念を持つものとして、私なりに心配な点を言語化してみた。行政の方はこの点、重々注意して頂きたい。
https://news.livedoor.com/article/detail/30850711/?fbclid=IwdGRjcAQ17W5jbGNrBDXswWV4dG4DYWVtAjExAHNydGMGYXBwX2lkDDM1MDY4NTUzMTcyOAABHpk2wznnSQnWLRSo0Mhl6DB3TuG2HVYsoQ3Xijqp8s9m4_3YXDTE7kBms9O6_aem_rMGxIrgzeSmiQ36eUqCJNA

