AI創薬1兆円〜薬が来ない国で作っても意味がない〜

note / 4/25/2026

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Key Points

  • 記事は、AI創薬に巨額(1兆円規模)の投資が進んでも、実際に患者のもとへ薬が届かない体制では価値が生まれにくいと指摘しています。
  • 「創ること」よりも「薬が来る(承認・製造・流通・アクセスが機能する)」ことを重視すべきだという問題提起が中心です。
  • 調子が良い前提(候補化合物の創出や研究開発の成果)だけで政策・戦略を組むと、臨床・薬事・供給のボトルネックで成果が相殺され得ると論じています。
  • AI創薬の投資対効果を高めるには、研究開発から実装までの一連の導線(制度設計や運用、産業基盤)を同時に整える必要があると示唆しています。
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AI創薬1兆円〜薬が来ない国で作っても意味がない〜

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2026年4月22日、自民党が「AIホワイトペーパー2.0」の提言案をまとめた。今後5年間で1兆円規模の投資を求め、重点領域の一つに創薬AIが並ぶ。

悪い話ではない。技術がなければ始まらない。ただ、順番がある。作る前に、売れる市場を残しているかという話だ。

薬が来ない構造

少し前にこんな記事を書いた。

米国のMFN(最恵国待遇)政策で、日本が薬価の参照国に明記された。日本の薬価が米国市場の収益を削る構造になった結果、製薬企業は「日本をスキップ」する判断を早め始めている。

新薬が入らなければ、ジェネリックも生まれない。米国で標準治療になっている薬が、日本では先発も後発も「存在しない」まま積み上がっていく。

厚労省資料でも、国内未承認薬が欧米承認薬の3〜4割に達するという水準が指摘されている。「存在しない」は比喩ではない。標準治療の3割が、日本の患者の選択肢から外れている。

1兆円の着地点

AI創薬で新薬ができたとして、どこで売るのか。

製薬企業は開発候補品が出た段階で、国別の薬価水準と上市順序を逆算する。どこで最初に出し、どこを後回しにするか。日本の薬価が米国収益を削る参照点になった以上、"日本外し"は経営判断として合理的に成立する。倫理の話ではなく、計算の話だ。

日本の薬価は米国の3〜5分の1程度。公金で開発した薬が、最初から海外市場向けに設計される可能性が高い。

リスクは国民負担、利益は海外で回収。

削り続ける前提

薬価改定は2年に一度から毎年改定へと運用が変わった。「毎年削る前提」は、製薬企業にとって日本市場の期待収益を毎年割り引くシグナルになる。

それでも2026年度改定で薬価は0.87%引き下げられた。

その上で、AI創薬に1兆円を投じるという。

繋がっていない政策

医療費削減と創薬投資は、別々のニュースとして報じられる。

だが同じ政府がやっていることだ。薬価を抑えて現場を細らせながら、AI創薬に1兆円を投じる。できた薬が日本の薬価制度の下で採算が取れなければ、結局は海外展開になる。

今回の提言案に、成果物の国内供給義務や国内薬価での優遇といった「出口設計」が含まれているのか。入口に1兆円を積む話ばかりが前に出て、出口の議論が見えない。欧州が域内製造・域内供給の方向に舵を切りつつあるなか、日本だけが出口設計なしで入口に公金を入れる構図になりかねない。

患者は「なぜかその薬が日本にない」という現実に直面し続ける。外来で「先生、この薬、日本では使えないんですか」と聞かれる場面が、これから増えていく。答えようがない質問が増える。

作ることと、使えることは別の話だ。

その両輪を同時に回す発想が、この提言には見えない。


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