日本企業の経営者はAIオタク、「我が社に変革人材がいない」とは噴飯ものだ

日経XTECH / 4/6/2026

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Key Points

  • 日本の経営者は生成AIに熱中し、自ら活用を進めつつ「AX(AIトランスフォーメーション)が必要」と語るなど、AI・デジタル変革への関心が急速に高まっている。
  • しかし背景には、以前は「ITオンチ」扱いされるほどITを他部門に丸投げしていた姿勢があり、DX推進後も事業変革(X)まで外注化してうまく進まない問題が残っている。
  • 経済産業省の2018年DXレポート(「2025年の崖」)がDXの重要性を広め、多くの企業がデジタル推進組織を作る流れを加速させた。
  • そこへ生成AI・AIエージェントブームが到来し、技術への関心が先行して「AIオタク」化した経営者が増えている点に筆者は懸念を示している。
  • 経営者が担うべきは技術の理解よりも、事業・業務プロセスの変革に対するリーダーシップであるという主張が記事の軸になっている。

 日本企業の経営者が突然、IT/デジタルに目覚めた。というか、夢中になっていると言ったほうがよいな。何の話かというと、生成AI(人工知能)の活用に関してだ。経営者自らが生成AIを積極的に活用するし、AIを活用してDX(デジタルトランスフォーメーション)、つまりAX(AIトランスフォーメーション)が必要だなどと言い出す。さらには、経営者同士が集まると「我々もAIネーティブな企業にしていかなければならない」と語り合っているらしい。私はそれを聞いて喜んだんだけどな……やはりトホホだったよ。

 日本企業の経営者といえば、2000年代半ばまでは「ITオンチ」などディスられることが多かった。なんせ「私はITが分からん」などと公言する経営者が数多くいたし、「経営にとってITは重要」と語る経営者でも基幹システムの整備などの優先度は他の経営課題に比べ恐ろしく低かったからね。当然、ITはIT部門やSIerに任せておけばよいという丸投げスタンスだった。2000年代半ばといえば、インターネットの普及などでIT/デジタル革命が既に始まっていたから、やはり日本企業の経営者は「愚か者」だったわけだ。

 そんな愚かな経営者がIT/デジタルに関心を持つようになった大きなきっかけは、2018年9月に経済産業省が発表した「DXレポート」だろうね。副題には「ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開」とあり、DXに取り組まないと2025年までに多くの企業で破滅が訪れるなどと、お役所の文書とは思えないほど、あおりにあおった。実際、読んだ人から「てっきり報告書を作成するワーキンググループのメンバーに木村さんがいるのかと思ったよ」と連絡が来たぐらいだ。

 それはともかく、「2025年の崖」というキャッチワードがバズるのに歩調を合わせて、多くの日本企業の経営者が「我が社のDX」を語り始めた。IT/デジタル戦略がようやく日本企業でも主要な経営戦略の1つになった感があったな。その後、既存のIT部門とは別にデジタル推進組織を設けて、IT/デジタルを活用した新たなビジネスの創出、つまり攻めのDXに乗り出す企業が増えてきた。でもねぇ、経営者自身はIT/デジタルに強い関心があったわけではないんだよね。

 もちろん、経営者が「IT/デジタルオタク」では困る。IT/デジタルの技術面などについてはIT部門やデジタル推進組織に任せて、自身はDXの「X」、つまり事業の変革、業務プロセスの変革などにリーダーシップを発揮すればよい。ところが、このトランスフォーメーションまでIT部門やデジタル推進組織に丸投げしてしまう経営者がごろごろいたんだよね。その結果、基幹システム刷新による業務プロセス改革は事業部門の抵抗で頓挫し、新たなデジタルサービスの創出もこれまではしょぼい成果しか上げられなかった。

 そこに降って湧いたのが、生成AIやAIエージェントの一大ブームだ。これに多くの日本企業の経営者がすっかり魅せられてしまったようで、「AIオタク」の経営者が続々と登場する始末だ。ちなみに生成AIもIT/デジタル分野の最先端技術だからな。それに対して経営者が夢中になっているのだ。もちろん、今までの技術とは抜本的に異なるのだが、この記事の冒頭で記した通り、「我々もAIネーティブな企業にしていかなければならない」なんて言葉が経営者の集まりで飛び出すなんて、ちょっとシュールな話だとは思わないかい。

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DXは駄目だが、AXなら可能かも

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