日立グループ企業、「貿易の安全保障リスク」をAIエージェントで管理 審査時間60%短縮 仕組みは?

ITmedia AI+ / 4/15/2026

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Key Points

  • 日立ソリューションズは、貿易の安全保障リスクを確認・管理する「安全保障貿易管理」にAIエージェントを適用し、審査時間を導入前から約60%短縮したと発表した。
  • 安全保障貿易管理は、軍事転用可能な製品・技術が規制により渡せない相手に渡らないようにする取り組みで、国際情勢の変化によりルールが短期間で複雑化するのが課題だ。
  • 同社は課題として、多言語・多様な情報ソースの収集整理に時間がかかること、審査やリスク判断が担当者で差が出ること、判断根拠が残らずナレッジ蓄積できないことを挙げ、AIエージェントで補完すると説明している。
  • AIエージェントは「顧客審査業務」では公開情報や独自DBを参照してレポート作成を支援し最終判断は人が行う形にし、「該非判定業務」では法令や規制リストの照合と不足情報の洗い出しで判定漏れ防止を狙う。

 日立ソリューションズ(東京都品川区)は4月15日、貿易相手の安全保障リスクを確認・管理する業務にAIエージェントを適用して、審査時間を導入前から約60%短縮したと発表した。

 この業務は「安全保障貿易管理」と呼ばれる取り組みの一環だ。軍事転用可能な製品や技術が安全保障リスクのある相手に渡らないように、国が設定した輸出制限や規制に対応する。

 国際情勢の変化に伴って貿易ルールが複雑化し、規制内容が短期間で変わることも多い。より高度な輸出管理が求められる中、現場の負担が増大している。同社はこの課題を、AIエージェントでどのように解決したのか。

photo AIエージェントの取り組みについて説明する日立ソリューションズの庄谷圭多主任技師(写真提供:日立ソリューションズ)

「貿易の安保リスク」をAIエージェントで管理 審査時間60%減 仕組みは?

 安全保障貿易管理の一例を挙げると、米国によるAI半導体の対中輸出規制や、中国が日本に対して行っている軍民両用品の輸出制限などが該当する。取引先がこうした制限に合致するかどうか確認する必要がある。

 安全保障貿易管理には3つの課題がある。1つ目は、取引先情報や技術情報、関連法令、過去事例などが多言語かつ多様な情報ソースで存在するため、収集・整理に時間がかかる点。2つ目は、取引先の審査やリスク判断を標準化できず、担当者によって差異が出る点。3つ目は、判断の根拠や参考にした情報が残されず、ナレッジが蓄積されない点だ。

 「従来はツールで対応できていましたが、輸出管理の幅が広がり、内容が深くなることで、現場では人の負担に依存する部分が増えています。そこをAIエージェントで補うことで、3つの課題を解決できます」――日立ソリューションズの庄谷圭多氏(産業イノベーション事業部 ビジネストランスフォーメーション本部 主任技師)はこう説明する。

 同社は、2つの業務にAIエージェントを適用した。取引先の安全性を確認する「顧客審査業務」では、AIエージェントが公開情報や独自データベースを参照してレポートを作成する。人が最終判断に集中できるようにして、審査スピードの向上を支援する。

photo 顧客審査AIエージェント導入前後の業務フロー(図版提供:日立ソリューションズ、以下同)
photo 顧客審査AIエージェントが出力するレポートの例

 製品や技術が輸出規制の対象かどうか判断する「該非判定業務」では、関連する法令や規制リストをAIエージェントが照合する。不足している情報を洗い出してくれるため、判定漏れを防げると庄谷は説明する。

photo 該非判定AIエージェント導入前後の業務フロー
photo 該非判定AIエージェントが出力するレポートの例

 これらのAIエージェントは、米国のグループ企業が手掛けている年2000件以上のスクリーニングから得た知見を取り入れている。米Hitachi Solutions Americaによる試験利用では、審査工程の半分以上をAIエージェントが担い、審査時間を導入前から約60%短縮できたという。

 今回のAIエージェントは、京セラや日本ガイシなど350社以上が使う同社の「安全保障貿易管理ソリューション」の追加機能として販売する。対応業務の拡大、ドキュメントや画像を読み込んで理解するマルチモーダル化も視野に入れている。複雑化する貿易業務において、AIエージェントの活用は課題解決策の一つになれるのか。

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