富士通はAI(人工知能)市場の開拓に向けた次期CPU(中央演算処理装置)の開発に乗り出した。理化学研究所と開発するスーパーコンピューター「富岳NEXT」に搭載するが、AIサーバー分野の世界の顧客にも売り込む。1.4nm(ナノメートル)世代技術や3次元実装技術を盛り込み、Rapidus(ラピダス、東京・千代田)への生産委託を優先的に検討する。
「先代の富岳に取り組んだ意義は大きい。富岳の技術をベースに開発したHPC(高性能コンピューティング)製品は、日本だけでなく海外でも売れている」。富士通副社長CTO(最高技術責任者)のVivek Mahajan(ヴィヴェック・マハジャン)氏は、同社がスパコン開発に携わる意義を強調する。
独自CPU「FUJITSU-MONAKA(モナカ)」シリーズを強みに、ソブリン(主権)AIなどの市場を開拓する。機密性を重視する防衛や製造、ヘルスケア、金融などの分野に向けて、セキュリティーにも配慮したAIインフラを提供する。MONAKAシリーズではAI機能の強化と省電力性を両立し、AIサーバー分野の世界の顧客に高速・低消費電力のCPUを提供する。
富岳NEXTに搭載するCPU「FUJITSU-MONAKA-X(モナカエックス)」では、1.4nm(ナノメートル)世代のプロセス技術や、複数の半導体チップ(チップレット)の3次元実装などの最先端技術をふんだんに盛り込む。トランジスタを非常に低い電圧で安定に動作させる技術も独自の強みだ。
英Arm(アーム)のアーキテクチャーを基に、世界でも米Intel(インテル)などごく限られた企業にしか開発できないAIサーバー向け高性能CPUを実現する。まずは富岳NEXTに供給するが、富士通はそれにとどめるつもりは毛頭ない。
試作チップでOS起動
MONAKA-X開発の試金石となるのが、1世代前に当たる初代「FUJITSU-MONAKA」だ。2nm世代技術を適用し2027年に製品化する。製造を委託する台湾積体電路製造(TSMC)が試作したウエハーが、手元に届いた段階にある。
富士通でMONAKAシリーズの開発を主導する富士通研究所先端コンピューティング開発本部本部長の吉田利雄氏は、「狙い通りのパフォーマンスが得られている」と手応えを語る。OS(基本ソフト)を試作チップで起動しながら検証を進めている。
マハジャン氏はその次世代となるMONAKA-Xについて、「なるべく国内で生産したい」と話す。2027年に2nm世代半導体の受託生産を始める計画のRapidus(ラピダス、東京・千代田)への委託を優先的に検討する。
ラピダスは2029年ごろには1.4nm世代の半導体を量産する狙いで、MONAKA-Xの投入時期と合致する。「2026年内には生産委託先を決めたい」(マハジャン氏)とし、ラピダスへの委託可能性の見極めを急ぐ。
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