富岳NEXT「世界一狙わず」 理研・富士通・NVIDIA、AI時代の使われる計算機へ

日経XTECH / 4/28/2026

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Key Points

  • 富岳NEXTは2030年ごろの稼働を目指し、2026年3月に基本設計を完了するなど次世代スパコン開発が次の段階へ進んだ。
  • 「世界一」よりもAI時代に“使われる計算機”を重視し、科学計算とAI処理の両立を狙う方針が示された。
  • NVIDIAと協業し、CPU主体から富士通のCPU+NVIDIAのGPUを密に連係させる構成へ転換することでAI向け演算の汎用性を高める。
  • 理研の松岡聡氏は、今後の科学はLLMとともに歩む前提が強まるとの見解を述べ、性能ランキング偏重の反省を踏まえた設計思想を強調した。
  • 国産CPU「FUJITSU-MONAKA-X」をAIデータセンター用途にも広げ、製造はRapidusへの委託検討などを通じて国の競争力・ソブリンAIにも波及させる構想が語られた。

この記事の3つのポイント

  1. 富岳NEXTは性能競争より実用性を重視、AI時代の「使われる計算機」へ
  2. エヌビディアと協業しGPU主体設計、世界標準と差を縮める
  3. 理研の松岡聡氏「これからの科学はLLMとともに歩む運命だ」

 理化学研究所と富士通、米NVIDIA(エヌビディア)が2030年ごろの稼働を目指し開発する次世代スーパーコンピューター「富岳NEXT」が、最初のマイルストーンを迎えた。アーキテクチャーの基本設計を2026年3月に終え、詳細設計へ移った。性能世界一へのこだわりを捨て、AI(人工知能)時代に「使われる計算機」の実現に比重を置く。

理化学研究所の松岡聡氏はAIの時代において計算性能のランキングは価値が薄れつつあると話す(写真:加藤 康)
理化学研究所の松岡聡氏はAIの時代において計算性能のランキングは価値が薄れつつあると話す(写真:加藤 康)
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 富岳NEXTは、理研と富士通が共同開発し2020年に稼働させたスパコン「富岳」の後継機の開発コード名である。演算性能はエクサスケール級を見据えつつ、科学計算とAI処理を両立できる次世代の研究開発基盤を目指す。開発には国が1000億円超を投じる。

エヌビディアと目指す「脱専用」

 「スパコンは使われてこそ。商業的成功なしでは意味がない」――。富岳NEXTの開発を主導する理化学研究所計算科学研究センター長の松岡聡氏は断言する。

 富岳NEXTの狙いは明確だ。日本で開発する国産スパコンでありながら、世界の勝ち組と組み、世界標準との差を縮める。富岳で「演算性能目標への過度なチューニングが起きた」(松岡氏)という反省を踏まえ、AIを生かす汎用性の高い計算インフラを目指す。心臓部を担うCPU(中央演算処理装置)やメモリーを国産化し、日本のAI・半導体産業の競争力を底上げする狙いもある。

 開発の方向性を端的に示すのがエヌビディアとの協業だ。富岳がCPU主体のスパコンだったのに対し、富岳NEXTは富士通のCPUとエヌビディアのGPU(画像処理半導体)を搭載し、両者を密に連係させる。これによりAI向け演算に対応しやすくする。

 富士通副社長CTO(最高技術責任者)のヴィヴェック・マハジャン氏は、富岳NEXTに搭載するCPUの開発を「商売としても成功させなければいけない。そうでないとCPUの開発を続けられない」と力を込める。開発するCPU「FUJITSU-MONAKA-X(モナカエックス)」は、富岳NEXTにとどまらずAIデータセンター向けに国内外で販売する。製造はRapidus(ラピダス・東京・千代田)への委託を検討し、経済安全保障やソブリン(主権)AIに資する国産CPUとする狙いだ。

 富士通は2025年10月、AI分野でエヌビディアとの協業を強化すると発表した。並行して富岳NEXTの共同開発を進め、いち早く技術的連携を深める。AI市場を開拓する上で、この分野の最強プレーヤーであるエヌビディアとの連携は欠かせないと判断した。

富士通のマハジャン氏は富岳NEXTへ搭載するCPU「MONAKA-X」について、「トップレベルの性能を持ちながら、汎用的に使えるチップにする」と意気込む(写真:陶山 勉)
富士通のマハジャン氏は富岳NEXTへ搭載するCPU「MONAKA-X」について、「トップレベルの性能を持ちながら、汎用的に使えるチップにする」と意気込む(写真:陶山 勉)
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