ホンダEV3車種の開発中止、損失はなぜこれほど膨らんだのか

日経XTECH / 3/24/2026

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Key Points

  • ホンダは「四輪電動化戦略の見直し」に関する会見で、次世代EVの主要3モデル(0シリーズのSaloon/SUV、アキュラRSX)の開発・発売中止を決定し、最大2.5兆円規模の損失が懸念されると述べた。
  • CES 2026への出展取りやめが予兆だったとされる一方、発売直前での急ブレーキが損失を一気に膨らませた構図を示している。
  • これまでホンダはバリューチェーン構築の先送り(カナダ)など踏めるブレーキは踏んでいたが、2026年発売予定の0シリーズは開発が進み「後戻りしにくい時期」に入っていた。
  • 0シリーズはギガキャストによる大型アルミ一体成形、シームレス運転支援のADAS、ルネサスとの協業で2000TOPS級のAI性能を狙うSoC、SDVのASIMO OSなど「乾坤一擲」の技術集約モデルとして計画されており、中止の痛手が大きくなったと論じる。
  • 次回では、なぜ損失がここまで増えたのか(投資・回収・撤退コスト等のメカニズム)と、その決断が自動車業界に与える影響を掘り下げる構成になっている。

 何となく悪い予感はあった。きっかけは、2025年の11月ごろ、知り合いの編集者から、2026年1月に開催予定の「CES 2026」にホンダが出展しないと聞かされたことだ。CES 2026のホームページを確認してみると、確かに、それまで出展を予定していたホンダの名前が、出展企業リストから消えうせていた。

 ホンダは2026年に電動化戦略の中核となる次世代電気自動車(EV)「Honda 0(ゼロ)シリーズ」を発売するのを前に、2024~2026年の3年間、CESに出展すると公言していた。その出展を、最も大事なはずの発売初年である2026年に取りやめてしまうというのは、よほどの事情があるのかもしれないとそのときは思った。しかし、まさかその4カ月後の2026年3月12日に、これほど衝撃的な発表が行われるとは予想もしなかった。ホンダがオンラインで開催した「四輪電動化戦略の見直し」に関する記者会見のことである。

 この記者会見で、ホンダの三部敏宏社長は、0シリーズなど次世代EVの主要3モデルの開発および発売を中止すると発表した。筆者が衝撃を受けたのは、ホンダが総力を結集して開発してきた基幹EVの発売中止を決めたことだけではない。その損失が、最大で2.5兆円に上る可能性があるというその規模の大きさにも言葉を失った。このコラムでは今回と次回の2回にわたって、ホンダの損失がなぜこれほど膨らんだのか、そしてこの決断が自動車業界全体にどのような影響を与えるかについて考えていきたい。

会見に臨むホンダの三部敏宏社長(中央)、藤村英司常務(左)、貝原典也副社長(右)(写真:ホンダの配信動画からキャプチャー)
会見に臨むホンダの三部敏宏社長(中央)、藤村英司常務(左)、貝原典也副社長(右)(写真:ホンダの配信動画からキャプチャー)
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最大2.5兆円の損失

 今回、ホンダが開発・発売の中止を決めたのは、0シリーズの「Saloon(サルーン)」「SUV」、それに「アキュラ」ブランドの「RSX」の3車種である。いずれも2026年中の発売を予定していた。後で説明するように、「発売直前での急ブレーキ」が、損失額を大きく膨らませることとなった。

ホンダが今回、開発・発売の中止を発表した3モデル。左上が0シリーズの「Saloon(サルーン)」、右上が同「SUV」、下がアキュラ「RSX」(写真:ホンダ)
ホンダが今回、開発・発売の中止を発表した3モデル。左上が0シリーズの「Saloon(サルーン)」、右上が同「SUV」、下がアキュラ「RSX」(写真:ホンダ)
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 この結果を見て「経営判断の遅れ」を指摘するのはたやすい。しかしホンダは決して、ここまで手をこまぬいていたわけではない。既にホンダは、2025年5月のビジネスアップデートの段階で、カナダでの包括的バリューチェーン(バッテリー部材の生産から、バッテリー生産、EV生産までの一貫生産体制)の構築を2年程度先送りにする計画を明らかにしていた。さらに、これはホンダが公式に発表したわけではないが、2025年7月には北米市場向けに開発を進めていた3列シート多目的スポーツ車(SUV)の新型EV(これも0シリーズの1車種と思われる)の開発を中止したと一部報道では伝えられている。つまりこれまでも、その時々で、踏めるブレーキは踏んできたのだ。

0シリーズは「乾坤一擲」のモデル

 この3列シートSUVは2027年の発売が予定されていたモデルだ。だからブレーキが間に合ったといえる。しかし、2026年発売予定だった0シリーズのサルーン、SUV、アキュラRSXの3モデルは開発が継続された。それは、発売直前で、もはや後戻りしにくい時期に差し掛かっていたということもあるが、それ以上に、0シリーズがホンダの歴史上でも稀(まれ)に見る「乾坤一擲(けんこんいってき)」のモデルだったことが大きいと筆者は見ている。

 0シリーズ(およびアキュラRSX)ではバッテリーケースに大型のアルミ合金を一体成形するギガキャストがホンダ車として初めて導入され、また一般道から高速道路までシームレスに運転を支援する先進運転支援システム(ADAS)が採用される予定だった。それを支える頭脳には、ルネサスエレクトロニクスとの協業による業界トップクラスのAI(人工知能)性能(2000TOPS、毎秒2000兆回)を誇る高性能半導体(SoC:システム・オン・チップ)を搭載する計画だった。さらに、ホンダとして初めてのソフトウエア定義車両(SDV)として、基盤ソフトウエア「ASIMO(アシモ)OS」を搭載するなど、ホンダの持てる技術を、まさにこれでもかというくらい詰め込んだモデルになるはずだったのだ。ホンダの経営陣が、最後の最後まで、これらのモデルを発売する可能性を検討し続けたのは当然だろう。

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0シリーズの損失を分解する

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