【つくるを、ひらく】AIと小説を書く全工程を公開する——「魔王の採点が100点だった件」ができるまで

note / 4/15/2026

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Key Points

  • 連載小説(「魔王の採点が100点だった件」)を題材に、AIを使いながら執筆する全工程を公開した内容である。
  • アイデア出しから文章生成、推敲や最終化まで、生成AIを創作フローへ組み込む実践例が中心となっている。
  • 小説家がAIをどのように活用し、創作の品質や制作スピードにどう影響させるかを、工程として見せることを狙っている。
  • 「作るを開く」というテーマに沿って、属人化しがちな創作プロセスを再現可能な形で共有する試みとして位置づけられる。
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【つくるを、ひらく】AIと小説を書く全工程を公開する——「魔王の採点が100点だった件」ができるまで

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音影【音楽小説家】

「つくるを、ひらく」 — 音影の制作プロセス公開シリーズ

先日公開した短編「魔王の採点が100点だった件」を読んでくださった方、スキやコメントをくださった方、ありがとうございます。

この記事では、あの短編がどうやって生まれたのかを、AIとの実際のやり取りを交えながら振り返ります。

「AIと小説を書く」と聞くと、ボタンひとつで完成品が出てくるように思うかもしれません。実際には、ボツ案の山を越え、文字数カウントの失敗に頭を抱え、比喩ひとつで30分悩む——そういう泥臭い工程があります。

その裏側を、見せます。

1. きっかけ

ちょうどAIの執筆環境を引っ越したタイミングでした。AIとの執筆環境を丸ごと引っ越して、ルールもワークフローも一から作り直した直後。新しい環境がどう動くのか、一本試しに書いてみたかった。普段ならプロットも自分でもっと指定しますが、今回はあえてAIに多めに委ねて、全体の執筆フローを確認するテスト版に近い一本です。だからこそ、最初の投げ方もざっくりでした。

僕がAIに最初に投げた言葉はこうでした。

短編を新しい環境のclaudeで書いてみたいので、案出しから始めよう!音楽×ファンタジーで何か面白そうなプロット作れそう?読了感はスカッとする感じで。

「音楽×ファンタジー」「スカッとする読了感」。この2つだけを手がかりに、AIとのブレストが始まりました。

2. ブレスト——6案出して、5案捨てた

AIはまず僕の過去作品6本を読み込んで、傾向を把握しました。たまたま参照した作品が現代日本を舞台にした日常もの、しっとりした余韻で終わるタイプに寄っていたこともあり、AIはそれを僕の「型」だと分析。そのうえで3案(A〜C)を提示してきました。

全部却下しました。

「スカッとする」という注文に対して、AIが出してきたのは「半開放エンド」や「しっとり系の着地」。過去作の延長線上にある、安全な提案でした。過去作の傾向を読み取ったこと自体は正しい。でもそこから「だから今回も同じ方向で」と推論してしまうのが、AIの癖です。

「刺さらない」と伝えたら、AIは第2ラウンドで方向を切り替えました。

  • 案D 万年最下位と不正チャンピオン

  • 案E 幽霊楽器と悪徳商人

  • 案F 魔王 vs 評論家

ここで僕が「既存作品と最も異質なものを出して」と方向を指定しました。AIのthinking(内部推論)を見ると、この指示を受けて6作品との差異を軸に整理し直しています。過去作の傾向に合わせるのではなく、過去作と最も違うものを出す——この方向転換がなければ、この作品は生まれていません。

案Fを選びました。「楽器を弾けない評論家が魔王に挑む」という構造が、コメディと逆転を同時に成立させられると感じたからです。

3. プラン設計——書く前に、書かないことを決める

案が決まると、AIは作品の設計図を作ります。「plan.md」と呼んでいるファイルです。ここに入っているのはこんな情報です。

  • 4シーン構成と各シーンの目標文字数(800字→1,400字→900字→1,400字=合計4,500字)

  • 伏線表——どこに何を仕込み、どこで回収するかの一覧

  • キャラ設計——名前・口調・動機・制約を表にまとめる

  • 世界観ルール——「音楽の力は演奏者の本気度に比例する(技術ではない)」

特に大事なのがNGリストです。

NG:感動系の長い引っ張り、泣かせにいく展開、重い内省、説明過多、主人公が音楽を語りすぎる

「やること」ではなく「やらないこと」を先に決める。これがAIとの共作では効きます。AIは放っておくと「感動させよう」と寄せてくる。その出口を先に塞いでおく。plan.mdのNGリストは、AIへの制約であると同時に、僕自身への制約でもあります。

ここまで設計してから、ようやくフォルダを作って執筆に入ります。

4. 執筆の実際——使ったもの、直したもの、捨てたもの

そのまま使った:グロムの「残業顔」

グロムが後ろで目を伏せた。今日の残業が確定した、という顔だった。

これはAIの初稿そのまま。部下の魔族グロムは、plan.mdでは「コメディ緩衝材」と定義されています。緊張する対話のあいだに挟まって、読者に息継ぎをさせる——その役割を、AIはよく理解していました。「残業が確定した顔」という表現は、ファンタジーに現代のサラリーマン感覚を混ぜた絶妙な温度感で、直す必要がありませんでした。

大きく直した:感情の平坦さ

初稿の最大の問題は、魔王の感情が最初から最後まで平坦だったことです。AIは「静かな威厳」で書きがちで、冒頭の魔王もどこか穏やかでした。

でも「スカッとする」ためには、最初に圧がないとダメです。冒頭で魔王が怖くなければ、ラストで崩れたときの気持ちよさが生まれない。

修正では、感情アークを明示的に設計し直しました。怒り→興味→共鳴→崩壊。この4段階を、セリフではなく動作で描く——「前のめりになる」「肘掛けを叩くのをやめる」「身を乗り出していた」。魔王の内面を一度も説明しなかったのは、意図的な設計です。

AIが葛藤していたもの:「AIに演奏させたような」

主人公が過去の挑戦者を批評するシーンに、こんな一文があります。

まるでAIに演奏させたような音楽だった

AIの初稿では「壁になっていた」という表現でした。揃いすぎたオーケストラの没個性を伝えたいのに、比喩が抽象的すぎる。僕が「まるでAIに演奏させたような音楽だった」に差し替えました。

するとAIのthinkingに、「ファンタジー世界でAIという言葉を使うのは時代錯誤ではないか」という葛藤が残っていました。結論として「コメディ文脈での意図的アナクロ」として許容する判断をしていますが——人間が入れた比喩をAIが内部で自問している。こういうやり取りがログに残っているのは、なかなか面白いです。

人間が追加した:冒頭と末尾の対句

初稿にはなかった冒頭の一文——

魔王の機嫌が崩れると、城から不協和音が漏れ出して、麓の街では誰も歌えなくなる。千年、ずっとそうだった。

と、ラストの張り紙——

「挑戦者の募集は終了しました」——魔王直筆だった。

この2つは僕の提案で追加しました。冒頭で「世界が音楽に支配されている」ことを一発で見せ、ラストで「もう支配は終わった」ことを説明なしに示す。この対句構造はplan.mdにはなかったもので、書きながら見つけたものです。

5. 役割分担

AIは「書く」ことは得意ですが、「何を書かないか」を決めるのは苦手です。NGリストを作る、案を却下する、感情の温度が足りないと指摘する——こうした「引き算」の判断は、今のところ人間の仕事です。

逆にAIが強いのは、「plan.mdを守りながら4,000字を一貫した文体で書き切る」こと。設計図がしっかりしていれば、AIは驚くほど正確に走ります。設計図がないと、穏やかで平坦な、誰も傷つけない文章が出てきます。

6. 気づき

文字数カウントで事件がありました。AIが `wc -m`(Unix標準の文字数カウント)で計測して「約9,890文字」と報告してきたのですが、実際にnote.comに貼ると3,438文字。改行やマークダウン記号まで含めて数えていたのが原因です。

「AIの出力をそのまま信じてはいけない」という教訓ではあります。面白かったのはその後で、AIはこの失敗を受けてnote.comの表示基準に合わせた文字数カウントツールを自作しました。失敗を仕組みで防ぐ——このサイクルが回るのが、AIとの共作の面白いところです。

今回気づいたのは、世界観の統一と感情の動かし方がまだ甘かったこと。「音楽でしか倒せない世界」なのに初稿では武器の描写が出てきたり、魔王の感情アークが平坦だったり——最初の提出では噛み合っていない部分がありました。長編の方がこの辺は設定を積み上げる時間がある分、作りやすかったりします。それと、同じClaudeでも、動かす環境が変わると結構違いがあると感じました。モデルが変わると文章の温度感が変わる。環境を引っ越すたびに、AIとの呼吸を合わせ直す必要があるんだなと。

おわりに

「魔王の採点が100点だった件」、まだ読んでいない方はぜひ。

「つくるを、ひらく」では、こうした制作の裏側を公開していきます。AIと書くことの面白さも、限界も、正直に伝えていければと思います。

次の作品も準備中です。気になった方は、フォローしてお待ちください。


この記事ができるまで

この記事自体も、4つのAIエージェントが分担して下書きを作成しました。この仕組み自体に興味がある方がいれば、執筆環境の裏側についてもいずれ書くかもしれません。

  1. ログマイナー — セッションログからAIの思考過程を抽出

  2. ストーリーリーダー — 完成作品を分析し、記事のフックポイントを特定

  3. ドラフター — 上記を統合して記事を執筆

  4. エディター — 磨き上げとこのセクションの追加

最終的な仕上げ(体験の差し込み、トーン調整、公開判断)は音影が行っています。



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音影【音楽小説家】 人とAIの境界で物語を紡ぐ旅にお付き合いいただきありがとう。私の言葉があなたの心に響いたなら、チップが創作の新たな種となります。共に想像の先へ。
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