AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、サービスロボットなどの要素技術が実用段階に入り、これまで実験的な意味合いが強かったスマートビルが、当たり前の時代がやって来る〔図1〕。新市場の主導権を握ろうと、設計事務所や建設会社、IT・通信各社がしのぎを削る。
「2030年ごろには、100台規模でサービスロボットを導入するビルが出てくるだろう」。日建設計エンジニアリング部門の光田祐介アソシエイトはこう予測する。同社は26年から、清掃や警備、配送などを担うサービスロボットを導入しやすい「ロボットフレンドリー」な施設環境の構築を担うコンサルティング業務を本格的に開始した。
光田アソシエイトは、「ロボットが活躍するスマートビルの実現には、床の段差や傾斜の解消、通路幅の確保といった工夫に加え、複数のロボットを統合的に管理するシステムの導入なども不可欠だ」と指摘する。
三菱総合研究所によると、20年に3000億円弱だったサービスロボットの国内市場は、50年には4兆円弱にまで成長する。人手不足に伴う自動化や省人化の需要増に加え、AIの進化が市場拡大を後押ししている。
日建設計は、建物の計画段階からハード・ソフトの両面でロボット導入を支援する調整役として、存在感を高める考えだ〔写真1〕。
AIやIoT技術の成熟、脱炭素の潮流、ビル管理領域の人手不足などを背景に、空調や照明を自動で制御したり、入退場ゲートを“顔パス”で通過したりできるスマートビルは、普及期に突入しつつある。実装段階に入ったサービスロボットの他、宅配ドローンや空飛ぶクルマなどの登場をにらみ、情報の流れやロボットの動線なども考慮した設計がますます重要になる。
空調設備やロボットなどが連係することで、建築の可能性はさらに広がる。「清掃ロボットのように、人の生活動線に近い場所を巡回する機器が温度情報などを取得できれば、実際の居住・執務環境により即したデータを得られる」。大手計装メーカー、アズビルの海老原克司グループマネジャーは、こうした未来を見据える。
新たな職能「MSI」が台頭
多様なデータの収集や機器の連係を前提とするスマートビルでは、各設備を統合管理するプラットフォーム、いわゆるビルOSの存在が欠かせない。清水建設の「DX-Core」や、竹中工務店の「ビルコミ」など、大手建設会社が開発に乗り出し、実装を進めている。
大手の建設会社や設計事務所が目指すのは、スマートビルの計画から運用までを一貫して支援するポジションだ。野村総合研究所コンサルティング事業本部の榊原渉パートナーは「建物のデジタル面を総合的に計画する新たな職能として、『MSI(Master System Integrator)』が台頭するだろう」と話す。
建築系企業が通信会社やIT企業と手を組み、MSIとしての立ち位置を確保しようとする動きが目立つ〔図2〕。日建設計とソフトバンクによる合弁会社「SynapSpark(シナプスパーク)」(東京・港)は、スマートビルの設計支援やビルOSの開発・販売などを手掛ける。
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