著者プロフィール・村上悠太(むらかみゆうた)
株式会社ディープコア KERNEL事業部 部長 Director, Community & Venture Growth
ソフトバンクで採用・人事企画を経て、2018年よりDEEPCOREに参画。同社の人事全般を統括しつつ、投資先AIスタートアップの採用・組織開発等のHR支援を推進。2023年にスタートアップキャリアコミュニティ「LINKS by KERNEL」を設立し、約500名の会員にキャリア支援を提供。起業家やスタートアップ参画希望者に対し、コーチングなどの支援を行う。スタートアップを主な対象に、組織開発・チームビルディングの講演・研修・ワークショップなどを実施。現在はAI特化型インキュベーション拠点「KERNEL」の事業部長として、起業支援および投資先スタートアップ支援を推進。
BCS認定ビジネスコーチ、米国Gallup社認定ストレングスコーチ。
「それ、ググった?」──筆者が新人時代を過ごした2010年代初期は、まさに検索全盛の時代だった。分からないことがあれば、まずGoogleに聞くことがよしとされていた。ちなみに2008年版の「現代用語の基礎知識」には「ググれカス」というネットスラングが収録されている。乱暴な言葉だが、それほど「自分で検索する」ことが求められていた時代である。
筆者自身、新入社員の頃は分からないことを先輩にすぐ聞くべきか、自分で調べて解を探してから聞くべきか悩んだ記憶がある。「それ、ググった?」は単に「検索しろ」という意味だけではない。その本質は、仕事へのスタンスとして「自分で考える姿勢」が問われているものだった。検索という行為の中に、思考のプロセスが埋め込まれていたのである。
翻って現在、職場で飛び交うのは別の言葉だ。「それ、AIに聞いた?」。あれほどググっていた筆者自身も、気付けば検索より先にAIを開くようになっている。
生成AIの登場により、ビジネスパーソンの行動プロセスは大きく変化した。検索という行為そのものが不要になってきている今、自分で考える姿勢を持てないビジネスパーソンが増えている。一見AIを使いこなせているように見えても、1往復で終わるやり取りを繰り返しているだけでは、自分で考える姿勢は培われないのだ。
“ググる”時代に培った思考の型はAI時代にも通用するのか、それとも全く別のスキルが求められるのか。
本稿ではベンチャーキャピタルにおいて、AIスタートアップ経営者向けのコーチングなどに携わる筆者が、現在の、そしてこれからのAI検索時代に自分で考える姿勢を培うため必要な「3つのR」を提案する。
「ググれカス」の本質
「ググった?」に代表される検索時代には「不便さ」が思考力を育てる構造があった。キーワードを入力し、結果を眺め、思ったような情報が出てこなければキーワードを変える。何度キーワードを変えても「出てこない」という壁に当れば、そこから先は自分の頭で考えるしかない。検索という行為の中に、思考の訓練が自然と組み込まれていた。
Searchの語源はラテン語のCircareで、「円を描いて歩き回る」という意味だと言われる。検索とは、直線的に答えにたどり着く行為ではなく、回遊しながら発見する行為。検索結果から複数のページを参照し、さらにキーワードを変えたり、時には寄り道したりしながら、最終的に当初調べたかったこととは別のものにたどり着くことも多い。
ちなみに、Research(リサーチ)という言葉の語源は、Re(再び)+Search(歩き回る)。まさにSearchを繰り返すことで自分なりの答えに辿り着く。この「Re」の力、すなわち反復の力が、検索結果をただ鵜呑みにする人とそうではない人の差を生んだ。
しかし、生成AIの登場により、検索という行為そのものが不要になってきている。「ググれカス」はすっかり死語になったが、それが示唆していた自分で考える姿勢はどう変容しているのだろうか。
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