フィジカルAIの風
vol.1671
今年のCES(世界最大級のテクノロジー見本市)を受けて、改めて日本のフィジカルAIへの期待が高ましたが
経済産業省が、これまで以上に本気の姿勢を見せております。
今週、この分野を重点分野と位置づけ、関連する最先端半導体やデータセンター、通信・電源などを連携した政策方針をまとめると発表。
2021年に策定した「半導体・デジタル産業戦略」は23年に改訂したばかりですが、AIの技術革新が当初の想定より早く進んでいることもあり、再度の改定を決めています。
〈日本経済新聞 / 2026年3月18日〉
政府は「危機管理・成長投資」を進める戦略分野としてAIや半導体を指定し、官民投資の工程表を作成。
素案では、フィジカルAIについては40年に世界シェア3割超で20兆円の市場獲得という目標を盛り込みましたが、こうした計画と足並みを揃えようとしているわけです。
ますます高まる日本のフィジカルAI熱。
そこで今回は、最近この分野で気になったトピックスをお届けしたいと思います😊
フィジカルAIが日本の希望に
ちなみにフィジカルAIとは、デジタル空間でのデータ処理にとどまらず、ロボットや自動車などの「物理的な身体」を介して現実世界で自律的に行動するAIのことです。
この分野で日本が優位と考えられているのは、AIが現実世界で機能するために不可欠な
●現場
●ハードウェア
●暗黙知
という3つの要素を高いレベルで保有していることが挙げられます。
日本は製造業や建設、物流といったリアルな現場が強く、長年にわたり蓄積されてきた高品質な作業データや運用ノウハウが豊富に存在。
これはAIにとって最も重要な学習資源となります。
ロボットやFA(工場自動化)機器といったハードウェア技術において世界トップクラスの企業群を持ち、AIが判断した内容を正確に実行する「身体」としての精密な制御技術や耐久性を備えている点も大きな強みでしょう。
さらに、日本の現場には熟練者の経験や勘といった言語化されていない「暗黙知」が多く蓄積されており、これをデータ化してAIに組み込むことで他国には真似しにくい競争優位を築くことができる。
何より、少子高齢化による人手不足という社会課題が深刻であるため、フィジカルAIの導入ニーズが非常に高く、実装と進化が現実的に進みやすい環境にあることもあるでしょう。
日本における最大の誤解
ポイントはフィジカルAIといえど、フィジカル偏重で考えてはいけないということです。
エッジAIプラットフォーム「Actcast」を展開するIdein代表取締役CEOで、東北大学共創戦略センター特任教授も務める中村晃一さんも、日本企業が陥りがちな「高品質なロボットを作れば勝てる」という考えは誤解であると仰っています。
〈ZDNET / 2026年3月19日〉
なぜなら、競争の本質がハードウェアからソフトウェアへと移行しているからです。
フィジカルAIとは、ロボット単体の性能ではなく、現実世界でAIが継続的に学習・判断し、運用される仕組み全体を指す概念であり、重要なのはロボットをつくることではなく、それを現場で使い続け、データを蓄積しながら改善していく「運用力」にあります。
日本企業はこれまで製造品質の高さで競争優位を築いてきましたが、今後はソフトウェア開発力や計算資源への投資、さらにはクラウドやエッジを含めたシステム全体の設計力が不可欠に。
また、労働力不足という日本特有の社会課題に対し、フィジカルAIは大きな解決手段となり得ますが、その実装には単独企業ではなく、システムインテグレーターやコンサルタントを含めたエコシステムの構築が重要になります。
つまり日本の勝ち筋は「高性能なモノづくり」から脱却し、ソフトウェアと運用を軸にした価値創出へ転換できるかにかかっているというわけです。
こうした中、工場自動化で強みを持つファナックは、長年の技術蓄積と現場データを武器にフィジカルAI時代の中核企業として注目されています。
単なる機械メーカーからプラットフォーマーへの進化を目指しているのです。
さらにエヌビディアなどとの連携も進め、従来の秘密主義を転換して外部との協業を強化。
AIとロボットを融合した新たな産業基盤の構築を狙っており、こうした戦略が投資家の期待を集める背景となっています。
〈Newsweek / 2026年2月28日〉
大企業とスタートアップとの企業
また、最近のホットトピックといえば、三菱電機とAIスタートアップの燈の協業でしょう。
両社は、製造や建設などの現場で蓄積されてきた熟練者のノウハウや勘といった「暗黙知」をAIで再現・活用することを目指しています。
〈BUILT / 2026年3月19日〉
従来はデータ化されていなかった現場の情報を収集・整理し、デジタルツイン上で学習・シミュレーションしたうえで、実際の設備やロボットに反映させる仕組みを構築。
これにより、人手不足が深刻化する現場でも効率的かつ安全に運用できる自律型システムの実現を狙います。
三菱電機は長年の設備運用で得た膨大な現場データや制御技術を持ち、燈はAIエージェントやデジタルツインなどの先端技術と高速な実装力を強みとするため、両者の融合によって実用化までのスピードを大幅に高めることができる。
また、フィジカルAIの実現には
●データの整備
●自動化
●安全性
という壁が存在しますが、これらを乗り越えるために、現場近くでリアルタイム処理を行う分散型AIや継続的に学習する仕組みが重要になります。
両社はこうした技術を組み合わせ、まずは半年以内にPoC(概念実証)を完了し、早期の事業化を目指しており、単なるロボット開発にとどまらず、現場全体を最適化する新たな産業基盤の構築に踏み出しているのです。
この連携が成功すると、フィジカルAI時代の新たな産業基盤構築につながる。
そんな期待が膨らみます😊
〜ということで、本日は日本のフィジカルAIの現状と未来についてお話しさせていただきました。
今、日本は第二次高度成長期の入口に立っているという声もある中、フィジカルAIはその起爆剤の1つになる。
そうした期待大の分野ですので、引き続き注目していきたいと思います🫡
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!
