いきなり完成形出すAI、建築設計に変化もたらす 「たかがツール」は危険

日経XTECH / 4/7/2026

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Key Points

  • 建築設計ではドラフター→CAD→BIMと移行が進み、次の波としてAI搭載の設計ツールが急増している。初期段階でプラン作成やパース生成を自動化し、設計プロセスや建築そのものに変化をもたらす可能性がある。
  • SMART INNOVATIONの見立てでは、工事着手前の「プレコン」業務はAIと相性が良く、国内外でAI実装設計ツールのスタートアップが100社規模で増えている。
  • オートデスクは2026年に商用提供予定の「Forma Building Design」を準備しており、建物ボリューム入力から柱割り・コア位置・外装割付などをAIが自動提示することで検討時間を短縮する方針。
  • 早期に最適案へ到達しやすくなり、実施設計終盤の大幅変更を減らして合意形成やプロジェクト成功確率を高めることが狙い。
  • 同分野では「フィジカルAI」や3D空間生成などの研究が投資・公開されており、将来的に設計ツールへ融合して自動化がさらに加速し得る。

手描きの時代に建築設計の道具であったドラフターはCADに駆逐され、現在はBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)への移行が進む。では、次に来るのは何か。AI(人工知能)を搭載した建築設計向けのツールが、国内外で爆増中だ。敷地に合わせてプランを自動で作成したり、リアルなパースを瞬時に生成したり。設計プロセスや建築自体にも変化をもたらすインパクトを秘める。

 「ざっと調べるだけでも100社は下らない。設計を含め、『プレコン』と呼ぶ工事着手前の業務は、AIとの相性が良い」。米シリコンバレーを拠点に、⼤⼿ゼネコンのオープンイノベーションなどを支援するSMART INNOVATIONのジュン・ヒバード代表取締役は、AIを実装した設計ツールを提供するスタートアップなどが急増していると語る〔図1〕。

〔図1〕AIを組み込んだ設計ツールが続々
〔図1〕AIを組み込んだ設計ツールが続々
基本計画や意匠設計、設備設計(MEP設計)などの領域に特化した新たなサービスが次々に生まれている(出所:Arent、Augmenta、Autodesk、Dimension 5、Maxon、mign、Motif、qbiq、SAMURAI ARCHITECTS、TestFit、ニュウジア)
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 例えば、米オートデスクが2026年に商用提供開始予定の「Forma Building Design」は、設計の初期段階に焦点を合わせた新たな設計ツール。建物のボリュームを入力するだけで、柱割りやコアの位置、外装の割り付けなどをAIが自動で提示する〔図2〕。

 オートデスク日本地域営業統括技術営業本部の田中宏尭Technical Sales Specialistは、「検討時間を短縮できるので、最適な設計案に素早く到達し、建て主と合意形成を図れる」と説明する。実施設計の終盤で大幅な変更が発生するのを避け、プロジェクトの成功確率を高める〔図3〕。

〔図2〕3Dモデルを生成
〔図2〕3Dモデルを生成
自然言語などを基に3Dモデルを生成する「ニューラルCAD基盤モデル」を搭載した「Forma Building Design」。設計初期をターゲットにした設計ツールだ。内外環境のシミュレーションも容易にできる。初期案が完成したら、BIMソフトのRevitで詳細をつくり込む(出所:Autodesk)
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〔図3〕早い段階で最適解にたどり着く
〔図3〕早い段階で最適解にたどり着く
「Forma Building Design」によって検討の初速を上げ、プロジェクトの成功確率を高めるイメージ(出所:Autodeskの資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 同社は26年2月、AI研究者のフェイフェイ・リー氏が率いる米World Labsに2億ドル(約300億円)を投資したと発表した。現実世界の空間や物理法則などを理解・生成できる「フィジカルAI」を開発する同社は25年11月、テキストや画像などから3D空間を生成し、編集可能な形式で出力できる「Marble」を公開。いずれはこうした技術も設計ツールと融合し、自動化に拍車をかけそうだ〔図4〕。

〔図4〕「フィジカルAI」企業に出資
〔図4〕「フィジカルAI」企業に出資
オートデスクが出資した米World Labsを率いるフェイフェイ・リー氏と、同社が2025年に公開した「Marble」のイメージ(出所:World Labs、写真:ZUMA Press/アフロ)
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 オートデスクのように初期段階から設計の詳細度を高めるトレンドはAIの進化に伴い加速する一方だ。文章やスケッチを基にリアルなパースを瞬時に出力する画像生成AIも、完成形に近いイメージをいきなり示せるという点で共通している。

 こうした潮流は、設計者が時間に追われながら、顧客の要望を踏まえていくつもの案を検討し、曖昧な合意形成に基づいてこつこつプランをつくり込む「積み上げ型」の設計プロセスを、最初に完成形に限りなく近い提案を示し、実現に向けて精度を高める「逆算型」への変化を促す。

AIとBIMが融合

 一方、AIが既存の設計ツールなどと融合していくことで、実施設計のフェーズも高速化しそうだ。

 建設業界向けにCADソフトやアプリを提供する企業をM&A(合併・買収)によって傘下に収め、それらのツールにAIを組み込む「AIブースト戦略」を推進するのがArentだ。同社の鴨林広軌社長は、「ChatGPTとやり取りしては作業に戻る、というのでは使い勝手が悪い。広く使われているプロダクトにきちんとAIを組み込むことで作業性が向上する」と語る。

 AIを設計ツールに組み込むことで、初心者でも扱いやすくなり、導入のハードルも下がる。その代表例がBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)だ。安井建築設計事務所の繁戸和幸執行役員は「BIMは操作難度が高く、習得に多大な時間がかかる。AIによってそのコストを下げていくことが不可欠だ」と語る。

 Arentは、文章による指示でBIMソフトを操作するアドインも提供している。このように、AIとBIMの融合は、今後も急速に進みそうだ。

 AIがもたらす変化を「たかがツール」と侮るのは極めて危険だ。歴史をひもとけば、設計の“道具”の進化は建築実務者に求められるスキルや仕事の進め方を変え、建築自体の可能性をも拡張してきたからだ。

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かつては「CADを使うなんて建築家の恥」

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