日清食品ホールディングスは2030年に向けたIT施策の1つとして「データドリブン経営に寄与する基盤の整備」を掲げ、その一環としてAI(人工知能)エージェントの導入を推進している。2025年3月にAIエージェントの導入を始め、2026年3月までに複数のユースケースで適用した。
現在、日清食品ホールディングスがAIエージェントの導入を進める領域は営業、マーケティング、R&D(研究開発)、SCM(サプライチェーンマネジメント)、経営管理――の5つ。「完全メシ」シリーズなどを担当するフューチャーフード研究開発部の取り組みを例に挙げると、商品の味わいなどを決める官能情報の探索でAIエージェントを利用する。例えば「冷凍食品で○○のような味わいを強くした商品を開発したい」という質問に対して、該当商品の配合を抽出して回答できるようにした。
完全メシなどの研究開発は「栄養とおいしさのバランスを取るため、今までの商品開発よりも複雑な研究開発を必要とする」(日清食品ホールディングスデータサイエンス室の小郷和希室長)。だが、商品の材料配合に関する情報は非構造化データとして散在していて、必要な情報の横断的な探索に時間がかかっていた。商品の配合情報は、行列形式ではないデータとして管理されていて、横断的に参照できる環境ではなかったのだ。
そこでデータを米Snowflake(スノーフレーク)が提供するクラウド型データウエアハウス(DWH)「Snowflake」に集約。AIエージェントが集約されたデータから問い合わせや情報を抽出できるようにした。データとしては配合情報以外に、「辛みがある」や「粘度をつけたい時に使用」といった情報を付与した原料・資材の「規格情報」を蓄積。AIエージェントは配合情報と規格情報を組み合わせることで、質問に答える。
特に工夫した点は、辛みやとろみなどの官能表現をAIに理解させることである。人間が記した「味わい」に関する情報は人によって表現が揺れ、AIの理解にムラが生まれる。そこで材料の特徴であったり、どんな商品に配合されていたりしたのかなどを示すデータを収集して規格情報として利用した。それらの情報から開発者に有用な助言が可能になった。
AIエージェントに官能表現と非構造化データの理解を深めてもらうことで、商品の材料配合で社内情報を収集・分析していけるような環境を整備した。今後の開発方針としては、試作段階の配合情報の蓄積を挙げる。「トライ&エラーの過程こそ判断理由の宝庫」(小郷室長)だからだ。開発者の試行錯誤の過程や判断理由を蓄積していくことで、AIエージェントの背景理解や判断能力が高まるようにする。
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