AI時代に求められるコーチとは?──「共に探求する」という価値
みなさんは、AIがコーチングをする時代について、どのように感じていますか?
最近はAIの進化がめざましく、
「AIコーチング」という言葉を耳にする機会も増えてきました。
もしかすると、
「人が行うコーチングは、これからどうなっていくのだろう?」
そんな疑問を感じながら、コーチを目指されている方もいるかもしれません。
私自身、このテーマについて深く考える機会がありました。
2026年3月12日に開催された
ICF Japan と ICF Philippines の共同イベントに参加したときのことです。

ゲストは、コーチングの世界で長く活躍されている
マーシャ・レイノルズ氏。
私が以前、コーチングを始めた頃に、どのような質問をクライアントにするのがいいか悩んでいたときに、出会って、大きな気づきを与えてくれた書籍「変革的コーチング」の著者です。
1時間という限られた時間でしたが、とても濃い対話の時間でした。
その中で特に印象に残ったのが、
「AI時代のコーチの在り方」についての話でした。
今日は、この話の中から、
私自身が大きな気づきを得たポイントを共有したいと思います。
同じようにコーチングに関わる方に、少しでも参考になればうれしいです。
AIはすでに基礎的なコーチングを再現できる
マーシャはまず、とても率直なことを語っていました。
それは、
AIはすでに基礎的なコーチングスキルを再現できている
ということでした。
例えば、
• 相手の言葉を要約する
• 言葉を反映する
• 確認の質問をする
こうしたプロセスは、AIでもかなり自然に行うことができるようになってきたと語っていました。
つまり、クライアントが
「理解されている」と感じるような対話も、
AIは見事に再現できるのです。
この話を聞いたとき、
これまでみなさんにお伝えしたことがあるように、このコーチングの学びの中で試験勉強にNotebook LMを活用してきたことや、
最近、私もちょっとしたことをAIに話して済ませることも多くなってきたのを考えると、
「確かにそうかもしれない」と感じました。
AIにはできないこと
一方で、マーシャはもうひとつ重要な違いを語っていました。
それは、
AIは「すべてを知る者(Know-it-all)」として機能する
ということです。
AIは常にデータや答えを持つ存在です。
そのため、
「私は答えを持っていない」
という未知の状態にとどまり、
相手と共に探求することはできない。
この話を聞いたとき、
私はコーチングの本質について改めて考えました。
コーチングとは、
コーチが答えを持つことではなく、
クライアントと共に探求するプロセス
だからです。
普段使っているAIは、こちらの質問にあう答えを、大量に保存されているデータから最適そうなものを見つけ出して、目の前に見せてくれる、そんな関わりだなと思いました。
クライアントと一緒に探求するということは、
クライアントと同じ目線で、同じ光景を見ながら、その光景の先にみえる答えを探す、こんな感じではないでしょうか。
クライアントはコーチの問いによって、探求するからこそ、そこで見つけた答えは、誰かに教えられただけのことではなく、自分自身で掴み取ったモノになるのです。
AI時代のコーチに求められること
では、これからのコーチには何が求められるのでしょうか。
イベントの中で語られていたことを、
私なりに4つのポイントに整理してみました。
1. 学び続けること
基本的なスキルを身につけたからといって、
そこで立ち止まるわけにはいきません。
AIには再現できないレベルのコーチングへ。
そのために、私たちコーチ自身が成長し続けることが必要なのです。
2. プレゼンス(在り方)を深めること
これからの時代、コーチングの価値を支えるのは
コーチの「在り方」です。
人と人が向き合うときに生まれる
感情やエネルギーのつながり。
これはAIには作れないものです。
マスタリーとは、スキルを完璧にすることではない。
プレゼンスを深め続けることである。
マーシャが英語で語っていたプレゼンス(Presence)という言葉が、
単に日本語の存在という言葉ではなくて、
コーチがクライアントの前にいるときの魂の在り方のような言葉にも感じて、
ウェビナーが終わって数日経った今でも、とても印象に残っています。
3. 「What」ではなく「Who」に向き合う
表面的な課題ではなく、
• 自分はどんな存在なのか
• 本当はどんな自分になりたいのか
こうしたアイデンティティ(Who)の部分に踏み込むこと。
ここにこそ、深い変化の可能性があるのです。
アイデンティティに踏み込むためには、
クライアントとコーチを安心安全で、
対等な立場におき、
お互いを信頼できるパートナーとなって、
耳に聞こえの良い言葉だけでなく、
耳の痛い事実や、
思考を大きく揺さぶるような問いも、
コーチからクライアントに伝えられる関係性を作る必要がある
と、「変革的コーチング」の原著の第二版である”Coach the Person, Not the Problem 2nd Edition”でもマーシャは書いていました。
クライアントとコーチの関係性が、コーチがクライアントのWhoに向き合うための重要な要素であることを忘れてはいけません。
4. 答えを持たずに向き合うこと
最後に語られていたのが、
脆弱性(vulnerability)でした。
コーチは「自分の方が知っている」という立場を手放し、
クライアントから学ぶLearn-it-all(すべてを学ぶ者)であること。
答えがわからない状態にとどまり、
会話がどこへ向かうか分からないプロセスに心を開くこと。
これは、すべてを知っていなければならないAIには
決して真似できないことです。
そして、人間であるコーチには、全ての答えを持たない脆弱性という、不完全さをクライアントに見せることのできる勇気が試されるのです。
AI時代だからこそ、コーチとして目指すこととは?
今回の対話を通して感じたのは、
AI時代だからこそ、人間のコーチの価値が問われる
ということでした。
スキルを磨くことはもちろん大切です。
でも、それ以上に、
コーチである自分がどんな存在としてクライアントの前に立つのか。
その「在り方」を問い続けること。
このことは、私がコーチとしてこれから真剣に取り組んでいこう、そう心深くに刻み込みました。
それは、AIが身近な時代だからこそ、コーチとしての私がどうありたいかを問われたように感じたからです。
これからのコーチにとって、このことはますます大切になっていくと感じました。
みなさん、
もしよければ、少し立ち止まって考えてみてください。
あなたがこれからクライアントと向き合うとき、
どんな存在でありたいですか?


