AIエージェント時代に台頭する「FDE」、SHIFTと富士通が挑む脱人月

日経XTECH / 4/3/2026

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Key Points

  • AIエージェントの普及で、業務とAIを接続するためのシステム構築の常識が変わり、「仕様固め→実装→納品」型の人海戦術モデルが通用しにくくなっている。
  • AIで企業業務を変革するなら、SIer側も変わり、顧客の懐で業務を分析しAI適用・改善まで伴走する「FDE(Forward Deployed Engineer)」型が求められる。
  • SHIFTは生成AIの“導入”ではなく“定着”に焦点を当て、戦略設計から現場への定着まで一気通貫で支援するAI前提のSI事業を強化している。
  • SHIFTは「顧客企業のAI推進部」を名乗り、上流の課題把握〜ユースケース抽出、ツール選定、運用・評価ルール設計まで行うことで、組織の作り方自体を提供している。
  • SHIFTの「アドバンスドFDE」はベンダーフリーで、特定プロダクトに縛られず最適なAI技術選定から導入・定着を担い、「AIが組織の中で機能する設計」に踏み込む。

この記事の3つのポイント

  1. 業務とAIをどう接続するか。システム構築の常識が変わりつつある。
  2. AIが企業の業務を変革するなら、それをシステム化するSIerも変わる。
  3. SIerには顧客の懐で課題解決を進める「新たな常駐」、FDE型が求められる。

 AI(人工知能)エージェントがSIerのビジネスモデルをも変えようとしている。ユーザー企業の業務にAIエージェントを適用して生産性を上げていくには、業務の流れや組織を深く知り、ときに業務のやり方や体制にメスを入れることも求められる。「ご用聞き」で要望を聞き取り、仕様を固め、設計し、人海戦術で実装して納品するといったビジネスモデルが通用しないシステム構築の現場が、AI導入を契機に増えているのだ。顧客の懐で共に業務を分析し、AIを適用しながら課題を解決、改善する「FDE(Forward Deployed Engineer)」型のビジネスモデルがSIerに求められている。

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 ソフトウエア品質保証大手のSHIFTがAI前提のSI事業を強化している。特徴はAIの導入そのものではなく、その後の「定着」にフォーカスしている点だ。現在、多くの企業は、生成AIツールを導入しても活用するのは一部の従業員に限られ、組織全体の生産性向上にはつなげられていない。SHIFTはこの構造問題に対し、戦略設計から現場への定着までを一気通貫で支援するモデルを確立している。

 同社は人月依存のビジネスモデルからの転換を目指して事業戦略を策定し、AIを活用することで人手に依存しないビジネスモデルの構築を進めている。AI前提のSI事業もその一環だ。同社は自らを「顧客企業のAI推進部」と位置付ける。業務課題の把握やあるべき姿の定義といった上流から入り、業務を分解し、AI適用可能なユースケースを抽出、ツールを選定し、さらに運用や評価のルールまで設計する。単なる導入支援ではなく、「AIを前提とした組織のつくり方」そのものを提供しているのだ。

ベンダーフリーでFDE提供

 中核にあるのが、SHIFTが展開する「アドバンスドFDE」である。FDEとは、顧客の現場に入り込み課題解決を担うエンジニアを指すが、SHIFTはその役割を大きく拡張している。「ターゲットはAI活用をこれから本格化させていくメインストリーム層」(SHIFTの幸加木哲治AI本部AI統括部AIサービス部AIサービスグループグループ長)。

SIerのビジネスモデルはFDE型へ
SIerのビジネスモデルはFDE型へ
(出所:日経クロステック)
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 従来のFDEは、自社プロダクトの導入や活用を現場で支援する役割が中心だった。それに対し、SHIFTのアドバンスドFDEは特定のプロダクトに縛られず、顧客の業務や組織構造を踏まえた上で、最適なAI技術を選定し、導入から定着までを一貫して担う。単なる技術導入ではなく、「どうすればAIが組織の中で機能するか」を設計する役割を持つ。

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AI導入の基準づくりまで踏み込み

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