「AI社員」も登場 ServiceNow新戦略から探る、「自動化された企業」から逆算するAI活用

ITmedia AI+ / 4/27/2026

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Key Points

  • ServiceNow Japanが2026年4月22日の事業戦略説明会で、「AIに話しかけるだけで業務が自動化」「AIで“社員”を増強」といった構想を提示した。
  • AI活用が伸びない要因として、業務システムのサイロ化と連携不足を挙げ、デジタルワークフローがAIエージェントの“つなぎ役”になると説明した。
  • 重点施策として、AIプラットフォームを「AI時代の企業OS」と位置付け、EmployeeWorks(起点と体験)、Autonomous Workforce(自律的実行)、AI Control Tower(統制・管理)を柱に据えた。
  • 「AIエージェントは疲れないが、業務間がデジタルでつながっていないと動けない」という観点から、企業OS的な基盤整備がAI運用の成否を左右するという道筋を示した。

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 企業におけるAI活用はこれからどのように進展するのか。その中で、人はどのような役割を果たすのか。この分野で活用・管理基盤をはじめとしてさまざまなソリューションを展開するServiceNowが打ち出した新たな事業戦略から、具体的なイメージをつかめた。今回はその内容を紹介するとともに、人の役割について筆者なりの見解を示したい。

「AI社員」も現れたServiceNow日本法人の新戦略とは

 「AIに話しかけるだけで、あらゆる業務が自動的に行えるとしたら?」

 「あなたの部門で、AIによって優秀な社員を増強できるとしたら?」

 米ServiceNowの日本法人ServiceNow Japanの鈴木正敏氏(社長執行役員)は、同社が2026年4月22日に開いた事業戦略についての記者説明会で、「皆さんに問いかけたい」としてこう切り出した。そして、「こうしたことが当社のソリューションで実現できるようになった」と力を込め、その取り組みについて、同社の原智宏氏(専務執行役員 COO=最高執行責任者)と共に説明した。

左から、ServiceNow Japanの原氏、鈴木氏(筆者撮影)

 その内容が、同社の新たな事業戦略というだけでなく、企業におけるAI活用がこれからどのように進展するかという道筋を示していると筆者は感じた。そこで今回は、そうした視点も踏まえて、以下に紹介していこう。

 まず、鈴木氏は2025年のトピックとして「特に後半からほとんどの商談がAIの活用を踏まえたものとなり、企業のあらゆる業務においてAIの活用を最大化できる“デジタルワークフロー”を備えた当社のAIプラットフォームが一層注目されるようになってきた」ことを強調した。

 また、同社のAIプラットフォームが注目されるようになった背景として、「多くの企業が今、AIをテコにDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めているが、その成果が思ったように出ていないことも挙げられる。その理由は業務ごとにシステムがサイロ化して乱立し、つながっていないからだ。AIエージェントは疲れないし、不満も言わないが、業務の間がデジタルでつながっていなければ動き回ることはできない。そのつなぎ役をデジタルワークフローが担うので、AIエージェントは存分に働ける」とも説明した。

 そうしたことから、同社は2026年の重点的な取り組みとして、AIプラットフォームを「AI時代の企業OS」と位置付け、それを実現するソリューションとして、AIネイティブな業務の起点と体験を提供する「EmployeeWorks」、『AI社員』による自律的な業務の実行が可能な「Autonomous Workforce」、AI活用を全社で管理・統制する「AI Control Tower」の3つを前面に押し出す構えだ(図1)。

図1 2026年の重点的な取り組み(出典:ServiceNow Japanの会見資料)

 これら3つの新たなソリューションを前面に押し出した形で描いたServiceNowの「エンタープライズ型AI」の姿は、図2のようになる。

図2 エンタープライズ型AIの概要(出典:ServiceNow Japanの会見資料)

 図2をよく見ると、構図として興味深い。まず中央にAIプラットフォームが位置付けられており、その周りのデジタルワークフローがブルーの立体の箱で描かれている。その下段には業務アプリケーション、上段には3つの新ソリューションが記されている。見方によっては、業務アプリケーションがバックオフィス、新ソリューションがフロントオフィスのようにも受け取れ、SaaSとAIソリューションの関係性を示しているようでもある。この点は、会見で同社から特に説明がなかったので、筆者の見立てではある。

 3つの新ソリューションについて、それぞれポイントを紹介しよう。

 EmployeeWorksは、「従業員の全ての業務窓口をAIネイティブに統合し、日常業務やプロセスをエンドツーエンドで実行可能にするソリューション」だ。これにより、「EX(エンプロイエクスペリエンス=従業員体験)と生産性の飛躍的な向上を図ることができる」という。このソリューションは、AIエージェントの中でも個々人に帯同する「パーソナルエージェント」になり得る。今後、この領域は激戦区になると見られるだけに、どれだけ存在感を示せるか注目だ(図3)。

図3 EmployeeWorksの概要(出典:ServiceNow Japanの会見資料)

名実ともにエンタープライズ型AIプラットフォーマーへ

 Autonomous Workforceは、「ビジネスを理解した上で、業務の流れの中で、自律的に全社横断的な業務を進める『AI社員』」のことだ。鈴木氏は「業務の在り方を変える優秀な『AI社員』」と表現した(図4)。

図4 Autonomous Workforceの概要(出典:ServiceNow Japanの会見資料)

 このソリューションについては、原氏が「人とAIの観点から考える関係の変遷」について、「ユーザーから見たAI利用体験」と「業務プロセスの実行」の2つのケースにおける「ツールとしてのAI」「AIエージェントとしてのAI」「AIワークフォース」の3つの捉え方を説明した(図5)。

図5 人とAIの観点から考える関係の変遷(出典:ServiceNow Japanの会見資料)

 端的にいえば、ツールとしてのAIは「サイドカー的な機能の利用」、AIエージェントとしてのAIは「単体タスクの実行、事前定義プロセスの実行」、そしてAIワークフォースは「役割(ロール)を直接、代替する存在」に進展するということだ(図5の一番下)。

 さらに、同氏はServiceNowのソリューションにおける「AIの進化とこれからの業務の在り方」について、実行単位がタスクごとの「AI Agent」からプロセスごとの「Agentic Workflow」、そしてロールごとのAutonomous Workforceに自律性がレベルアップすると説明した。この3つのレベルにおける実行単位の変わりようがミソである(図6)。

図6 AIの進化とこれからの業務の在り方(出典:ServiceNow Japanの会見資料)

 AI Control Towerは「企業全体のAIを統合管理し、戦略と実行をつなぎ、パフォーマンス、コスト、リスクを一元的に可視化するソリューション」だ。これにより、「AIに関するリスクを極小化しガバナンスを強化できる」という。このソリューションが整備されたことで、同社は名実ともに「エンタープライズ型AIプラットフォーマー」になったといえるだろう(図7)。

図7 AI Control Towerの概要(出典:ServiceNow Japanの会見資料)

 このように新ソリューションについて説明してきた鈴木氏は、「AIはもはや新たな経営資本の一つとして考えるべきだ。これからは、AIネイティブな経営がデジタルネイティブな人材を引きつける決め手になる」との見方を示した(図8)。

図8 AIはもはや新たな経営資本の1つに(出典:ServiceNow Japanの会見資料)

 先にも述べたように、同社の新たな事業戦略の話は、企業におけるAI活用がこれからどのように進展するかという道筋をも示していると感じた。その道筋を示しているのが、まさしく図5および図6だ。

 では、その最終的な姿はどのようなものか。筆者がこれまでこの分野で取材してきた内容と合わせて考えると、それはすなわち「企業の業務全体の自動化」だ。ServiceNowがいうエンタープライズ型AIはこのことを指しているというのが、筆者の解釈である。

 となると、いよいよ人は不要になるのではないか。この点についてはServiceNowも「最も重要なのは、エンタープライズ型AIを使って人がもっと活躍できるようになること」(鈴木氏)との見解を明確に示している。

 ならば、企業の業務全体が自動化した段階で、人はどのような役割を果たすのか。筆者なりに経営視点での見解を示すと、まず、ServiceNowがいうエンタープライズ型AIを、企業の業務全体を自動化する「装置」と捉える。人の役割としては、その装置が経営の意図通りに動いているかどうかをチェックし、改善や強化、人による意思決定が必要ならば適時手を入れることがある。そうした装置の維持・改善・強化とともに、これから人が手掛けたいのは、既存の装置を使って新しいことができないか、もしくは新しいことをやるために必要な装置をつくれないか、といったことだ。すなわち「装置をどう生かすか」という視点が、とりわけ経営者に求められるのではないか。

 さらに、自社の装置化をイメージし、そこからバックキャスト(逆算)して「今何をすべきか」を考えることも、AI活用への効果的なアプローチになるのではないか。

 「AI社員」に仕事を奪われるのではないか、などと考えず、AIをフル活用した企業という装置を使って、どんな面白いことができるか――。そんな大きなスケールでチャレンジするのが、人の役割である。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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