ザハ事務所出身の建築家、AI前提の設計法を実践 設計者はキュレーターに

日経XTECH / 4/8/2026

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Key Points

  • ザハ・ハディド・アーキテクツ出身のティム・フー氏が、AIを前提にした建築設計のプロセスを実践し、その設計者の役割を「キュレーター」に例えた。
  • STF(スタジオ・ティム・フー)は、スロベニアの伝統様式の画像をAIで分析し、アイデアパース生成から「伝統的/現代的」の指標で整理して施主と協議する手法を採用した。
  • Lake Bled Estateでは、伝統の「リザリット」を再解釈したファサード・ボリュームの設計や、内装の手描きスケッチ起点でのAIパース生成、指標(採光・効率・動線・眺望)に基づくAIシミュレーションで最適化を進めた。
  • AI活用により短時間で大量の案出しが可能になり、STFは従来比で設計期間を50%短縮できるとしている。
  • 伝統的な「図面化→詳細化」の流れに対し、AIで完成形に近いイメージを初期段階から並べ、設計者が協議・選別・精度向上を担う“逆転した”進め方が鍵だと示した。

AI(人工知能)は建築設計のプロセスをも変えつつある。ザハ・ハディド・アーキテクツ出身のティム・フー氏は、AIを積極的に取り入れる建築家の1人だ。フー氏はAI時代の建築設計者の役割を、「キュレーター」に例える。その真意とは。

 「新しい技術を受け入れるには、その技術を深く掘り下げ、可能性と欠点を検証する必要がある」。英ロンドンを拠点とする建築家のティム・フー氏はこう強調する。フー氏はザハ・ハディド・アーキテクツから独立し、2024年にスタジオ・ティム・フー(STF)を設立。設計プロセスにAIを積極導入しているとアピールし、世界中で大規模プロジェクトを受注している。

 その1つが、スロベニア北西部に位置するブレッド湖でのプロジェクト「Lake Bled Estate」だ。アルプス山脈に囲まれた約2万2000m2の敷地に、数棟のヴィラを建てる〔図1〕。

〔図1〕AIをフル活用したプロジェクト
〔図1〕AIをフル活用したプロジェクト
「Lake Bled Estate」のイメージ。ブレッド湖畔に数棟のヴィラを建てる。AIをフル活用し、スロベニア建築の伝統様式を再解釈した建物を計画した。右は設計者のティム・フー氏(写真・出所:スタジオ・ティム・フー)
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 建て主は、ハイクラスなホスピタリティーを有し、地元の伝統を引き継ぐ建物を望んでいた。STFはまず、スロベニアの伝統を建物に落とし込む手法を探るため、AIをフル活用した。

 スロベニア建築の伝統様式を示す写真をAIに学習させ、スケールやスタイル、素材などの特徴を分析した。分析結果を基に、アイデアパースをAIで生成。それらを、「伝統的」と「現代的」の指標を基に振り分けて整理し、建て主と協議を重ねた。

 こうして、ファサードから垂直方向に長いボリュームが突き出す様式を生み出した。「リザリット」と呼ばれるスロベニア建築の伝統様式を再解釈したものだ。内装は、手描きのイメージスケッチを基にしてAIでパースを生成し、検討を深めた〔図2〕。

〔図2〕スロベニア建築の伝統様式を再解釈
〔図2〕スロベニア建築の伝統様式を再解釈
垂直方向に長く突き出たボリュームが建物を特徴付ける。これはスロベニア建築の伝統様式「リザリット」を再解釈して生み出したもの(出所:スタジオ・ティム・フー)
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その内観(出所:スタジオ・ティム・フー)
その内観(出所:スタジオ・ティム・フー)
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 プラン検討においても、日当たりや空間効率、動線効率、眺望を指標に設定し、AIによるシミュレーションで建物ごとに最適化した。プランの決定後は、人の手で3Dモデルとパースを作成。パースをAIでブラッシュアップし、外装のディテールを検討した。

 AIを用いれば、短時間で膨大なアイデアが得られ、パース製作を外注する手間もかからない。STFによると、この手法では従来と比べて設計期間を50%短縮できるという。

 従来の設計プロセスでは、スケッチや模型で建物のボリュームなどを検討して図面化し、仕上げなどの詳細をつくり込んでいくのが常道だ。しかし、AIを用いたプロセスでは、それが逆転する。初期段階で完成形のイメージをずらっと並べ、設計者が建て主と協議しながら取捨選択し、精度を高めていくやり方だ。フー氏は、このプロセスにおいて設計者が果たす役割を、情報を収集・選別して価値を与えた上で提示する「キュレーター」に例えている〔図3〕。

〔図3〕AIで逆転する設計プロセス
〔図3〕AIで逆転する設計プロセス
Lake Bled Estateの設計プロセス。初期段階でAIが生成したアイデアを基に設計をブラッシュアップしていく。模型やスケッチからつくり込んでいく従来のプロセスが逆転した(出所:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 STFが拠点とする英国の建築界では、AIの導入が急速に進んでいる。王立英国建築家協会(RIBA)が会員に実施した25年の調査では、AIを導入した回答者が24年の41%から25年の59%に急増した。

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英国でもAIに期待と懸念

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