この記事の3つのポイント
- AI活用力の重要性が増す中、ビジネス基礎力を養う全体研修を見直す動き
- ソフトバンクは基本の型+AI活用学ぶ、「生成AI活用研修」も新設
- ドリーム・アーツはあえて「AI分離」、新聞や本を読む昔ながらの研修
新卒の全体研修は、社会人として必要な共通の能力を身に付けさせる重要な機会だ。「通過儀礼」としての役割もあり、AI(人工知能)時代であっても「不要」と考える企業は少ない。AI活用の最前線であるIT企業では、何を重視して研修に取り組んでいるのか。ソフトバンクやNTTデータグループ、ディー・エヌ・エー(DeNA)、LINEヤフーコミュニケーションズ、ドリーム・アーツのIT分野5社の事例を紹介する。
「4月の新入社員研修にAIの要素を入れたい」。人材開発のコンサルティングなどを手掛けるリクルートマネジメントソリューションズの武石美有紀サービス統括部HRDサービス開発部トレーニングプログラム開発グループ研究員の元には、顧客からこんな要望が舞い込んでいる。
企業にとって、新入社員へのAIリテラシー教育は必須だ。生成AIとは何か、どう活用できるのか、情報セキュリティーなどのリスクや倫理面の課題は何かといった内容を早期に学ばせなければならない。
AIは新人の仕事内容にも変化をもたらす。例えば議事録作成という「下積み」を通じて、従来、新人は仕事を体得していった。「下積み経験となる作業がAIに代替され、その機会自体が希少になる。企業は一段上の意思決定や指示出しのスキルをどう新人に身に付けさせるか設計しなければならない」(ボストン・コンサルティング・グループの中川正洋マネージング・ディレクター&パートナー)。
入社前から新人には一定程度のAI活用や、チームワークなどビジネス基礎力につながる素養が備わっているだろう。バラバラのレベルで入社してきた新人のこれらの能力を、企業として求める一定水準へと全体研修で積み増し、現場で活躍するための土台とする。
ビジネス基礎力とAI活用力を絡める
「土台固め」のため、ビジネス基礎力をテーマにした全体研修を再設計する2種類の動きがある。1つは、ビジネス基礎力とAI活用力を両方伸ばす方向だ。入社後の全体研修期間で、双方を絡めた研修を展開する。
前者の一例がソフトバンクだ。新人を「部門に着任してから早くに活躍できる人材にする」(人事総務本部人材開発部人材開発1課の平林佑菜氏)のを目標とし、2026年4月、AI時代向けに研修をアップデートした。研修全体を通じて「基本の型+AI活用」を学ぶ設計にしており、議事録の取り方を学ぶ文章研修などでもAI活用力を習得させる他、新たなプログラムとして「生成AI活用研修」を盛り込んだ。
研修で実践型のプログラムも提供し、新人の能力を総合的に磨く。顧客訪問を体験する研修や、新規事業提案のワークショップが実践型に当たる。前者ではAIですぐに代替できない顧客訪問で、自分が培っていくべき能力を体感できるようにした。後者では、ブレーンストーミングや画像生成などAI利用シーンを増やす工夫を施した。
国内事業会社のNTTデータなどを含むNTTデータグループも同様に、ビジネス基礎力とAI活用力の両方を伸ばす。入社後5月末ごろまで約2カ月、全体研修を実施する。「AIを使わないでできるようになる、そしてAIを使って業務効率化できる。この2軸を重視している」(NTTデータグループの宇佐美欣秀人事本部HR Management統括部長)。研修では議事録を取る理由や残すべき情報、注意事項などを教えた上で、自分で議事録や企画書を書けるようにすることから始める。その後AIリテラシーや使い方を学び実践する構成だ。2026年からこの構成にした。
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