【北京=三塚聖平】中国で、PC上などでさまざまな作業を自律的にこなすAIを活用したソフトウェア「AIエージェント」の利用が今年に入り急拡大している。人間が関わらずに電子メールの自動返信といった作業を行うことができ、「24時間無休の個人秘書」などともてはやされている。中国IT大手のみならず地方政府も活用を後押しするが、個人情報漏洩(ろうえい)などの問題も浮かぶ。
「ロブスター育てる」流行語に
中国でAIエージェントの起爆剤となったのは「OpenClaw」(オープンクロー)。オーストリア人のソフトエンジニアが昨年公開したものだ。
指示を与えておけば、インターネット上の情報を収集し整理するほか、受信した電子メールの重要度を判断して仕分け、「緊急」と書かれた文章のみを関係者に転送するといった作業を自律的に行うことができる。
中国メディアは、オープンクローを活用して不動産物件を短期間で購入することにつながったケースを紹介している。信頼できる仲介業者の選定、不動産関連政策や購入時期による価格変動の調査、税金や費用の計算といった作業を細かい指示を出さずにオープンクローが行ったという。
オープンクローは、ユーザーの好みを理解することで利便性が増す。ロゴマークから中国では「龍蝦」(ロブスター)と親しまれ、自分に合った調整を行って活用することを「ロブスターを育てる」と呼ぶことが流行語となった。
地方政府も普及支援を推進
AIエージェントは人が行う事務作業を完全に代行できる可能性があるだけに、英BBCは「誰もが替えがきく可能性がある恐ろしい時代」が到来すると指摘したが、ブームは熱を帯びる。
オープンクローの設定などには一定のITスキルが必要なため、通信アプリ「微信」(ウィーチャット)を手がけるIT大手騰訊控股(テンセント)は導入支援サービスを展開する。
地元メディアによると、河南省鄭州市で10日に開かれたオープンクローの理解促進イベントには、1000人以上がPCを持ち集まった。
地方政府でも、広東省深圳(しんせん)市や江蘇省無錫市などで普及支援政策が打ち出されたと伝えられた。
中国政府は活用・警戒両にらみ
中国はAI開発・普及を国家戦略の重要事項と位置づけ、関連産業を2030年末までに10兆元(約232兆円)規模にまで拡大させる方針だ。米CNNテレビはAIエージェントの利用拡大は「AI分野で世界をリードしたい」中国政府の弾みになると指摘した。
一方、ロイター通信は先月中旬、中国の政府機関と国有企業が職員に対し、オープンクローを業務で使う端末にインストールしないよう警告したと報じた。セキュリティ面の問題が理由だという。中国の情報機関、国家安全省もデータ窃取のほか、乗っ取りによる虚偽情報の拡散といった悪用の可能性があるとの見方を示した。
中国当局は当面、AIエージェントに関して活用と警戒の両にらみとみられる。
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