「AIのせいでクビ」という話の、その先にあるもの

note / 5/2/2026

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Key Points

  • 「AIのせいでクビになった」という“個別の不安”の話を起点に、その先にある構造的な変化(仕事の再設計や雇用の受け皿の問題)を掘り下げている。
  • 単にAIに置き換わる/置き換わらないではなく、業務プロセス・スキル要件・評価基準が変わることで影響が広がる点を示している。
  • 現場では、AI活用の導入が人員整理と結びつきやすい一方で、再配置・教育・役割転換が進まないと不満や摩擦が増えるという論旨につながる。
  • 「クビ」という結果に至るまでの因果(期待値のズレ、移行計画の不在、制度設計の不足など)を、企業側の意思決定として捉え直す方向性が示されている。
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「AIのせいでクビ」という話の、その先にあるもの

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福原たまねぎ

日刊SPA!さんで「AIとクビ、そして本当に必要な仕事」というテーマで記事を書かせていただきました。ありがとうございます!!!

本当にAIが理由⋯?

ここ最近、シアトルのオフィスの景色がじわじわと変わってきた。

知り合いの会社では優秀な人たちが次々と「効率化のため」という説明とともに消えていった。表向きの理由は毎回ほとんど同じで「AIへの投資を優先するため」という言葉が添えられる。そのたびにぼくは、なんとなく引っかかるものを感じていた。

説明が、シンプルすぎる気がしていたのだ。

今回、日刊SPA!にこのテーマで記事を書きながら、ずっとそのもやもやを言語化しようとしていた。アメリカで「AIを理由に挙げた解雇」が2025年に5万5000件にのぼり、2年前から12倍以上に増えているという数字がある。見た瞬間に「やはり」と思う人も多いだろう。でもぼくはもうちょっと立ち止まって考えたい。

「AIウォッシング」という言葉が浮かび上がらせるもの

採用調査会社の調査によれば、採用担当者の約60%が「AIや自動化を理由に挙げる方が、財務的な制約を正直に言うよりも受け入れられやすい」と考えているという。

でも実際にAIが役割を完全に置き換えたと答えた企業は、わずか9%だった。

⋯え、9%?
⋯めちゃくちゃギャップあるじゃん。

これを説明するのが最近アメリカでよく聞く「AIウォッシング」という言葉だ。AI活用を実態以上に見せながら、本来は別の理由による人員整理に正当性を持たせる経営手法のことだ。

批判の文脈で語られることが多い言葉だけど、ぼくはこれを「企業が嘘をついている」という話だけで終わらせるのは、少しもったいないと思っている。

ここにはもっと「目を背けたくなる」ものがある。

「なくても回る仕事」という、不都合すぎる真実

Microsoftは業績好調なまま8750人規模の人員削減を進めた。赤字で困っているわけではない。それでも「切る」という選択をした。テクノロジーメディアはこれを「必要性ではなく選択だ」と評した。

なぜ利益を出している会社が、切らなくてもいい人員をあえて切るのか。ここにぼくは、AIウォッシングより一段深い問題があると思っている。

イギリスの文化人類学者デヴィッド・グレーバーは『ブルシット・ジョブ』という本の中で、現代社会の多くの仕事は「客観的に見て存在する必要がない」と論じた。過激な主張に聞こえるかもしれないが、大企業の日常を少し観察すれば、肌感覚で頷ける部分がある。

確認のための確認、会議の結果を共有するための会議、誰も読まないレポートの作成。これらは「必要だから」というより、「慣習があるから」「万が一のバッファとして」存在していることが少なくない。

シアトルでも、あるチームが解散したとき、残ったメンバーが「実はあのチームが何をしていたのか、よくわかっていなかった」と話していた。笑えない話だが、珍しい光景ではなかった。

つまりこういうことじゃないだろうか。経営者は前からわかっていた。でも「人を切る」ことには政治的コストも感情的コストも伴う。AIという「時代の必然」は、ずっと先送りにしてきた決断を正当化する、格好の言い訳になった。

AIウォッシングは企業が嘘をついているという話ではなく「経営者が前からわかっていた不都合な真実を、やっと実行に移し始めた」という話かもしれない。

この問いを自分に向けるとしたら⋯?

ここからが少し不穏な話になってしまうのだけど (というかもう既に不穏かもだけど⋯笑) 大事な話をしたい。

日本の職場は、ある意味でこの「なくてもいい仕事」を最も大規模に生産してきた文化かもしれない。稟議、形式的な報告、惰性で続く定例会議。これらは日本の職場に特有の密度で積み上がっている。

「AIに仕事を奪われるかどうか」という問いは、少しピントがズレていると思う。

本当の問いはもっと根本的なところにある。それは「あなたの仕事は、AIがなかったとしても、本当に存在する必要があったのか」というものだ。

これは脅しでも自己啓発でもなく、純粋に問い返してみる価値のある問いだと思う。答えが「イエス」であるかどうかは、いまの自分の仕事にどれだけ実質的な意味を見出せているか、ということとほぼイコールだろう。

そしてそれは、給与や役職や評価よりも、もっと個人的で、もっと静かな問いだ。

「本当に意味ある仕事」に向き合うときが来た

ただ、ぼくはこの問いを恐ろしいものだとは思っていない。むしろ逆で、いまほどその問いを正直に考えられる時代は、なかったんじゃないかという気もしている。

「自分のポジションがなくなっても会社は回るか」という問いに、今すぐ答えられる人は、少なくとも自分の仕事の本質を見えている人だ。答えが「回る」だとしても、それを知っていること自体が、次の一手を考え始めるための出発点になる。

見て見ぬふりをしているよりは、ずっとマシだとぼくは思う。



⋯そんな話でした。

Microsoftの早期退職プログラム、Twitterのあの大量解雇の後日談、「AIウォッシング」が日本に波及するシナリオまで、データと現地の空気感を交えて書いています。

ご興味ある方はぜひチェックしてみてください!!!

▼日刊SPA!の記事はこちら

▼Yahooニュースの記事はこちら (内容は同じです)


家の近くをお散歩中

今日はそんなところですね。ここまで読んでくださりありがとうございました。

とても暖かくなってきたシアトルで。

それではどうも。お疲れたまねぎでした!

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