日本三大秘境の一つである宮崎県椎葉村の現場で、県内の建設会社が土砂の遠隔掘削や自律搬送、AI(人工知能)監視など、最先端の技術を活用している。直線距離で50km以上離れた場所から、山奥の現場にある建設機械を通信の途絶や遅延なく動かす。
宮崎空港から車を走らせること約3時間。森林の面積が94%を占める宮崎県椎葉村のなかでも奥深い場所に位置する不土野天包(ふどのあまつつみ)地区で、バックホーの遠隔操作やクローラーダンプの自律搬送を“普段使い”している建設現場がある。宮崎県が発注し、旭建設(同県日向市)が施工する復旧治山事業の現場だ。
2020年7月豪雨をはじめ、近年の記録的な大雨により山腹斜面が不安定化して、渓流への土砂供給が止まらないため、治山ダムを構築して斜面の安定化を図ろうとしている。無人の建設機械が稼働する場所は上流から流れ出た土砂の堆積でできた地形だ。元の河床は10m程度下にあるという。
無人のバックホーは、直線距離で50km以上離れた旭建設の本社から遠隔操作している。クローラーダンプの自律搬送を開始するスイッチも、本社から押している。現場で頭を悩ませたのは、無人化を実現するための安定した通信環境の構築だ。椎葉村の山奥のため、建機の位置情報の取得が課題になっていた。
当初、2周波方式のGNSS(全球測位衛星システム)として、GPSとGLONASSを用いて建機の位置情報を取得していた。しかし、山間部では木や山が遮蔽物となり、平地に比べ上空の衛星を捉えにくく、通信障害が生じて作業中の安定した位置情報の取得が困難だった。
現場代理人を務める同社インフラDX推進室の原田健司室長は「時間帯によって通信の途絶や遅延が発生し、1日当たり3時間程度しか建機を操作できなかった」と振り返る。
そこで、建機のレンタルなどを手掛けるショージ(福岡県大野城市)と協力し、北斗衛星導航系統を追加してGNSSの衛星数を増強。さらに、GNSS内の電波を2周波方式から3周波方式へ切り替えた。これにより、山間部でも常に上空の衛星を捉えられるようになった。通信環境が安定したのは、遠隔操作システムの導入から約3週間がたってからのことだ。
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