溶接工が「6時間」でアプリを開発 静岡の町工場が「500万円」かけて生成AI教育をした、驚きの効果

ITmedia AI+ / 4/1/2026

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Key Points

  • 静岡県掛川市の町工場コプレックが、社員約70人のうち13人を対象に生成AIで社内システム開発できるように450万〜500万円を投じて教育を実施した。
  • 目的は単なる業務効率化ではなく、現場社員主導で改善を生み出す文化を会社全体に定着させることにある。
  • 社長は「既製品を使う側」にとどまることへの危機感から、フィジカルAIが進み利用料前提の仕組みになった際に自社でシステムを作れる競争力が必要だと主張する。
  • 労働構造の変化として、ホワイトカラーがAIに代替される一方で、技能職がテクノロジーを使いこなして進化する「ハイスペックブルーカラー」が重要になるとの見立てを語った。
  • 教育の受講者の半数以上を工場勤務者にしたのは「一次情報に触れる人間がテクノロジーを使う」ことが価値になるためだとしている。

 生成AIは、製造業の現場をどう変えるのか。板金加工事業を展開する町工場、コプレック(静岡県掛川市)は3月、社員数約70人のうち13人を対象に、業務に必要なシステムを生成AIで開発するための教育投資に踏み切った。投資額は450万~500万円に上った。

 対象となったのは、工場の現場で働く社員たちだ。同社が見据えるのは、単なる業務効率化ではない。現場を主役に据え、社員自らが改善を生み出す新しい製造業の姿だ。

 なぜ、地域の町工場がここまで生成AIに注目するのか。代表取締役の小林永典社長に戦略を聞いた。

photo01 コプレック代表取締役の小林永典社長。自身でも生成AIを使って、人事情報や財務状況を管理するシステムを開発した(編集部撮影、以下同)

町工場が社員の生成AI教育に投資したワケ

 小林社長は、10年ほど前から機械学習に関心を持ち、社員と共に講習などに参加してきたが、当時は実務への落とし込みには至らなかったという。しかし、生成AIが登場し、さまざまな業務で活用が進むようになった。小林社長自らが試した上で「中小企業でも仕事のやり方が一気に変わる」と判断し、社員への教育に踏み切った。

 小林社長が目指したのは、一部の社員だけが生成AIを使うのではなく「会社全体にインストールする」(文化として定着させる)ことだ。そのために、あえて高額な外部研修を選び、13人の社員を参加させた。

 「YouTubeや安価な教材で学ぶこともできます。しかし、それでは社員間で習熟度にばらつきが出やすい。皆が体系的に学び、同じ知識や課題を共有することで、社内にAIブームを起こすことが大切だと考えました」

中小企業は「既製品を使う側」のままでいいのか

 小林社長が生成AIを重視する理由の一つが、労働構造の変化だ。現在、ホワイトカラーの仕事はAIによって急速に代替されつつある。ホワイトカラーの仕事が減少する一方で、世界では配管、電気、建設、製造といった「物理的な価値」を提供する技能職が見直される「ブルーカラービリオネア」と呼ばれる現象が生じている。

 ホワイトカラーの仕事がAIに奪われる中で、今後、生成AIやテクノロジーを使いこなしながら“ものづくり”を手掛け、イノベーションを起こすような人々が増えていくと小林社長はみている。同氏はその層を「ハイスペックブルーカラー」と呼ぶ。

 ハイスペックブルーカラーが登場した際、昔からものづくりに取り組んできたブルーカラーは、従来と変わらず「コストダウン重視」「効率重視」だけで勝負できるのか──。「おそらく難しいだろう」と小林社長。だからこそ、ブルーカラーも生成AIやテクノロジーを学び、ハイスペックブルーカラーへと進化する必要があるという。

 また、小林社長は、生成AIの進化には明確な段階があると考えている。Web上の情報を扱う段階から、デスクトップのファイルを操作する段階へ。そして次にやってくるのが、工場の現場で使用しているセンサーやロボットとつながる「物理世界への浸透」だ。

 「ロボットや機械を自律制御するフィジカルAIが一般的になると、私たち中小企業は大企業が作ったシステムを、利用料を払って使うことが想定されます。それでは競争力を持てない。自分たちで作れるようにならなければ、生き残っていけないと判断しました」

 これは、SaaS企業が開発したサービスを利用していた企業が、ローコードツールなどで自社アプリを開発するようになった流れと同様の構造だ。自社で開発することで、より使いやすいシステムになる。既製品に現場を合わせるのではなく、現場にシステムを合わせることで、大手や競合他社との決定的な差別化を生み出す考えだ。

 だからこそ、生成AIの教育プログラムを学んだ受講者の半数以上は工場で働く社員だ。小林氏は「一次情報に触れる人間がテクノロジーを使うことに意味がある」と強調する。

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