散々言われていることではあるが、AI(人工知能)の進化は本当にすさまじい。対話型AIサービスに質問を投げかけるだけで、サービス内部で大量のインターネットサイトにアクセスし、その内容を整理して回答としてまとめてくれる。以前は数日かかっていたような調査でも、ものの数分で答えが出てしまうこともある。
AIによる動画生成もあっという間に当たり前になった。AIがつくった実写クオリティーのネタ動画がバズり、実写だと信じ込んでいる人に別の人がAI生成だと指摘するといった場面に最近よく出くわす。このままAI生成動画の品質が上がっていけば、誰も実写と区別できなくなるだろう。
では、こうしたすごいAIを開発している企業は、かけたコストに見合った見返りを得ているのか。答えはノーだ。現在は採算度外視で巨額の資金を溶かしながら開発を続けていると言われている。
現在のAI開発はよくゴールドラッシュに例えられる。ゴールドラッシュでは「一番もうけたのは金を採掘する人ではなく、つるはしを売った人だ」という話が有名だ。現在、AI分野で最も利益を上げているのは、AI開発企業につるはし、すなわちAIの演算に必要なGPU(画像処理半導体)を提供している米NVIDIA(エヌビディア)をはじめとする半導体企業だ。
なぜ現在のAIはもうからないのか。それは、巨大な利益を生む「出口」がなかなかないからだ。これまで生成AIは、自然言語、プログラムコード、画像、動画、音楽など、様々な生成物を生み出してきた。しかし、これらの生成に関しては様々なAIベンダーが激しい競争を繰り広げており、差異化が難しい。
そこで近年、AIの収益化という観点で大きく注目されているのが医薬品分野だ。世界で200兆円超とも言われる巨大市場が存在するうえに、新規開発の医薬品は特許によって権利が一定期間保護されるので、収益化を見通しやすい。
医薬品開発では既にAIの活用が進んでおり、それらは一般に「創薬AI」と呼ばれる。創薬AIの中で今、最もホットな分野の1つが、AIによるタンパク質(プロテイン)の生成だ。生成AIが医薬品の候補となるタンパク質の配列や骨格を出力し、それらを医薬品として実用化する。現在、タンパク質医薬品の市場は大きく伸びており、その開発に生成AIを活用するのだ。
次のページ
LLMや拡散モデルをプロテインAIに応用この記事は会員登録で続きをご覧いただけます



