AGIはどうすれば実現するのか? 知性を成す「10の認知能力」をGoogleが特定

ITmedia AI+ / 4/30/2026

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Key Points

  • Google DeepMindが、AGIの進捗を客観的に測るためのレームワークを論文として公開し、「汎用知能をどう評価するか」という尺度不足を解消しようとしている。
  • 心理学・神経科学・認知科学の知見を統合し、AGIの「10の認知能力」(知覚、生成、注意、学習、記憶、推論、メタ認知、実行機能、問題解決、社会的認知)をタクソノミーとして定義した。
  • 10能力を定量化するために、AIの性能を人間のパフォーマンス分布と比較する「3段階の評価プロトコル」を提案し、ホールドアウトのテストセット等でデータ汚染を防ぐ設計を示している。
  • AGIが科学的発見の加速や社会課題の解決に寄与し得る一方で、その到達度を実証的に追う手段が不足している点を問題提起している。

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 「AGI」(汎用<はんよう>人工知能)の開発に関しては、科学的発見の加速や人類の難題解決を担う切り札として期待されている一面があるが、その「知能」を客観的に測る尺度の欠如が、実現への距離を不透明にしている。

 GoogleのAI研究部門であるGoogle DeepMindはその状況を打破すべく、AGI実現に向けた進捗(しんちょく)状況を測定するためのレームワークを提示した論文「Measuring Progress Toward AGI: A Cognitive Framework」を2026年3月17日(米国時間、以下同)に公開した。

認知科学に基づく10の能力指標(タクソノミー)を定義

 Google DeepMindの研究者ライアン・バーネル氏とプロダクトマネジャーのオラン・ケリー氏による論文は、AGIが科学的発見を加速させ、社会課題の解決に寄与する可能性に触れつつ、その進捗を把握するための実証的ツールが不足していることを指摘。

 心理学や神経科学、認知科学の知見を統合し、一般的知性の根幹を成す以下の「10の認知能力」を定義している。

AGIを評価する「10の認知能力」

  1. 知覚(Perception)
    • 環境から感覚情報を抽出・処理する能力
  2. 生成(Generation)
    • テキストや音声、行動などの出力を生成する能力
  3. 注意(Attention)
    • 特定の対象に認知リソースを集中させる能力
  4. 学習(Learning)
    • 経験や指示を通じて新たな知識を習得する能力
  5. 記憶(Memory)
    • 経時的に情報を蓄積し、必要に応じて呼び出す能力
  6. 推論(Reasoning)
    • 論理的推論を通じて妥当な結論を導く能力
  7. メタ認知(Metacognition)
    • 自身の認知プロセスを把握・監視する能力
  8. 実行機能(Executive functions)
    • 計画立案、抑制、認知的柔軟性に関わる能力
  9. 問題解決(Problem solving)
    • 特定領域において効果的な解決策を見つける能力
  10. 社会的認知(Social cognition)
    • 社会的情報を処理・解釈し、社会的状況に適切に対応する能力
Google DeepMindが提唱する「認知タクソノミー」。10の認知能力を軸にAIの汎用知能を多角的に評価する(提供:Google) Google DeepMindが提唱する「認知タクソノミー」。10の認知能力を軸にAIの汎用知能を多角的に評価する(提供:Google)

人間を基準とした3段階の評価プロトコル

 定義した10種の認知能力を定量化するために、論文ではAIシステムの性能を人間のパフォーマンス分布と比較するベンチマーク手法として、「3段階の評価プロトコル」を提案している。

  1. 包括的評価
    • データ汚染(学習データへの混入)を防ぐホールドアウトテストセットを用いて、各能力を網羅した幅広い認知タスクでAIシステムを評価する
  2. 人間による基準値の策定
    • 人口統計学的に代表性のある成人サンプルから、同一タスクにおけるベースラインデータを収集する
  3. マッピング
    • 各能力における人間のパフォーマンス分布を基準に、各AIシステムの相対的な性能をマッピングする

Kaggleハッカソンで評価手法の整備を推進

 論文の公開と同時に、Google DeepMindは機械学習プラットフォーム「Kaggle」と連携したハッカソン「Measuring progress toward AGI: Cognitive abilities」の開催も発表している。評価手法の確立が遅れている「学習」「メタ認知」「注意」「実行機能」「社会的認知」の5分野に焦点を当て、研究コミュニティーから評価設計案を募集することが目的。応募受付は2026年3月17日~4月16日までで終了している。結果発表は同年6月1日を予定している。

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