「2040年に売上40兆円」の勝ち筋は? 経産省が描く「AI・半導体・ロボット」三位一体の産業戦略

ITmedia AI+ / 3/23/2026

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Key Points

  • 政府はAI・半導体・ロボットを三位一体の産業戦略の柱とし、2040年にAI経済圏の成長を最大化する公的目標を明示している。
  • 生成AIの普及とともに、低消費電力チップ、データセンター、電力供給などAIインフラの整備が勝ち筋の中核として認識されている。
  • 日本企業がグローバル市場で優位を確保するには、エッジAIやセンサー、製造装置などを含むエコシステム全体の強化が不可欠と分析されている。
  • 本特集は経済産業省の担当者への取材を軸に、政策の全体像と民間企業の役割・役割分担を検証する構成となっている。

特集「AI革命、日本企業の勝ち筋」

生成AIの活用が広がる一方、その裏側では半導体素材、空調・冷却、電力、通信インフラといった領域で、日本企業が着実に存在感を高めている。生成AIサービスを提供する企業だけが主役ではない。昨今、AIインフラを担う企業群にも、注目が集まっている。

生成AI関連市場が盛り上がりを見せる中、どうやって儲かる分野を見極めていくか──。各分野のキープレイヤーへの取材から、自社の戦略や投資判断にも生かせる「勝ち筋」を探る。

第1回:経済産業省(本記事)

第2回(予定):レゾナック・ホールディングス

第3回(予定):ダイキン工業

第4回(予定): マクニカ

第5回(予定):フジクラ

 国内で生産する半導体の売上高を、2040年に40兆円まで引き上げる――。高市政権の野心的な目標に向け、日本の産業戦略が大きな転換点を迎えている。

 3月10日の「日本成長戦略会議」では、官民投資を優先支援する61の重点技術を提示。2040年に約60兆円まで拡大すると見込まれるAIロボット市場を見据え「AI・半導体」「AIロボット」「次世代センサー」の3分野をイノベーションの柱に据えた。

 半導体産業の起爆剤となるのが生成AIの普及だ。ただ、この生成AIビジネスの「質の変化」を見落としてはならない。AIビジネスの主戦場は、いまやソフトウェアの活用段階から、膨大な計算資源と物理インフラをいかに確保するかという「ハードウェアの陣取り合戦」へと移行している。AIを社会実装するには、最先端チップはもちろん、データセンターや電力供給など、関連技術のエコシステムの整備が欠かせないからだ。

 素材や製造装置で世界屈指のシェアを維持する日本企業は、この新たな「AI経済圏」でいかなる勝ち筋を描くべきなのか。

 特集「AI革命、日本企業の勝ち筋」では、AIインフラを担う国内トップ企業や識者にインタビューし、AI経済圏における日本企業の展望を探っていく。1回目は概論として、生成AIも含めた半導体・デジタル産業戦略の政策立案を担う経済産業省商務情報政策局の担当者に、戦略の全体像と民間企業に期待される役割について聞いた。

経済産業省商務情報政策局の担当者に取材した(左:情報産業課の齋藤尚史課長補佐、右:AI産業戦略室の秋元裕太総括補佐。アイティメディア撮影)

AI・半導体ともにグローバルのニーズをいかに掴むか

 世界の半導体市場はこれまで、PCや液晶テレビ、スマートフォンの普及が成長を牽引(けんいん)してきた。しかし、2022年のChatGPT登場を機に、その主役は「AI」へと移る。かつての汎用的な演算処理から、AIの学習・推論を支える高度な計算資源へと、市場のニーズが塗り替えられたのだ。

 経済産業省の「半導体・デジタル産業戦略の今後の方向性」によれば、2025年現在は「AI主導による市場拡大フェーズの序章段階」だという。これまではクラウド上での活用が中心だったものの、今後はあらゆるデバイスにAIが搭載される「エッジAI」やフィジカルAIの普及により、市場はさらなる成長期を迎える。

 この構造変化は、日本企業にとって過去30年の停滞を覆す絶好の機会となる。従来のスマホ向けチップのシェア争いではなく、AIに必要となる「低消費電力」や、センサーと連動する「高度なパッケージング技術」といった日本が強みを持つ高付加価値領域が勝負の主戦場になるからだ。

世界の半導体市場はPCや液晶テレビ、スマートフォンの普及が成長を牽引(けんいん)してきた。2022年のChatGPT登場を機に主役は「AI」へと移った(経済産業省「半導体・デジタル産業戦略の今後の方向性」)

 いまや勝敗を決めるのは、電力やデータセンターといった物理基盤を含む「AIエコシステム」の構築力だ。この市場のうねりの中で、日本の勝ち筋はどこにあるのか。商務情報政策局情報産業課の齋藤尚史課長補佐はこう話す。

 「AIはソフトウェアサービスですが、半導体をはじめとするハードウェアがなければ成り立たない産業です。データセンターやインフラなど、周辺の技術も一体となって進化することが求められています。日本国内には関連産業を担う企業も多く、技術を高度化することで発展できると考えています」

 日本は現在、半導体製造の素材では世界シェアで約5割を誇るほか、製造装置でも約3割のシェアを占める。AIと半導体の市場が今後成長することは間違いなく、関連産業にも巨大な市場が広がる。

 日本企業にとっては、AIと半導体を包括した「エコシステム」を構築できるかどうかが今後の鍵を握る。その際に必要なのは、国内市場だけでなく、グローバル市場でも拡大を目指すことだと齋藤課長補佐は指摘する。

 「グローバルのマーケットのニーズを取り込まなければ、ビジネスとしては広がりません。その観点では、AIについても半導体についても、国際的に連携して進めていくことが重要です。私たちも政策を立案する上で、GAFAM(Google・Alphabet、Facebook・現Meta、Amazon、Microsoft)などの米国のIT企業や、米国のNVIDIAやAMD(Advanced Micro Devices)、Intel、台湾のTSMC、韓国のSamsungやSK Hynixなどの大手半導体メーカーと会話をしています。周辺産業を担う日本の各企業が、グローバル市場を戦略的に必要だと考えれば、これらの企業と交渉を進めることは可能です」

日本企業にとっては、AIと半導体を包括したエコシステムを構築できるかどうかが今後の鍵を握る(経済産業省「半導体・デジタル産業戦略の今後の方向性」)

 経産省ではAIと半導体関連企業への支援体制を構築している。このうち、データセンターの集積と、電力などのインフラ整備を一体的に進めていく政策が「ワット・ビット連携」だ。生成AIの急速な進化により、AIの計算処理やデータ解析に特化したデータセンターが急増している。処理能力が高いAIデータセンターには、大量の電力が必要になるため、迅速かつ確実に電力を供給できる体制を整えることが目的だ。

商務情報政策局情報産業課の齋藤尚史課長補佐
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